山田五郎が語る「創刊60周年『明星(Myojo)』」が生き延びたワケ」

2012/10/22

Myojo デイキャッチ 山田五郎 平凡 明星

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今回は2012年9月13日(木)放送・荒川強啓デイ・キャッチ!
「デイ・キャッチャーズボイス」山田五郎さんの回
起こしたいと思います。

音声はこちらから

強啓
創刊60周年って、誠に申し訳ございません!
まだ本が出ているとは知りませんでした!

五郎
「明星(Myojo)」が?ああ、そうですか!


強啓
僕、「平凡」とともに終わりを告げたとばっかり思ってました。

五郎
ああ・・・、そうでしたか。

強啓
いやー知りませんでした、申し訳ありません。
それでね、リスナーの方から、57歳の東京にお住まいの男性なんですが。
「私が明星を買っていた時代。目的は歌本でしたね。
 歌本を手に歌番組を見ながら一緒に歌い、気に入ったらレコードを買ってました!
 今の若い人はどうような利用をしてるんでしょうか?」ということなんですが・・。

五郎
まずじゃあ歌本の話からしますとね。
あれ「Young Song」っていうんですけども、明星の歌本。
実は2年前まであったんですよ、実は。それも驚きでしょ?
今もね、このモノクロページのところに歌本の名残が微かにあるんですよ!ここに。
これ懐かしいでしょ?このレイアウト自体が。

杉浦
ねぇ白黒で、最近の歌の・・ってことですよね?

五郎
はい、FUNKY MONKEY BABYSとかが載ってますからね。
この歌本が4ページくらいあるんですよ。はい、これ名残ですよ。
確かに「明星(Myojo)」の歌本の名残が感じられますでしょ?
「明星(Myojo)」あるんです。


今はローマ字で「Myojo」と書かれていて、
まぁほぼジャニーズ雑誌です。
「60周年記念号」も嵐が表紙ですからね。

先ほど、強啓さんが「平凡と一緒になくなった」というふうに
お話し有りましたけども。
元々マガジンハウス、当時の平凡出版が出した「平凡」というのがあったわけですね。
これ1945年ですから戦後すぐ出たわけですよ。
それに対して1952年に集英社が「明星(Myojo)」を出したわけですよね。

強啓
はぁ、後から出たんだ!

五郎
ここの平凡出版と集英社の歴史というのは結構あって、
週刊は集英社の方が早かったんですよ!
1958年に「週刊 明星」が出て、その翌年の59年に「週刊 平凡」が出るんです。

で今度、1964年に平凡出版が「平凡パンチ」を出すんですよ。
それに対して集英社は66年に「週刊プレイボーイ」を出すわけですよ。
ここがこうやっぱライバルでしょ?

この「週刊プレイボーイ」、アメリカの「PLAYBOY」とは全然関係無くて、
のちに集英社は日本版「PLAYBOY」を75年にオールカラーで出しますけどね。

これちょっと女性誌になっちゃいますけども。
70年に平凡出版が「an・an」出すと、71年に集英社が「non-no」を出すみたいな。
この戦後のずーっと平凡出版と集英社の競争があったわけですよね。

そんな中で、先ほど強啓さんも仰ったように1987年に
「平凡」と「週刊 平凡」は休刊しちゃう。
88年に「平凡パンチ」も休刊しちゃうわけですよね。


その88年に「平凡パンチ」が休刊した時は、
「週刊プレイボーイ」が『頑張れ!平凡パンチ』っていう特集を組んで話題に・・
ライバルにエールを送るということで話題になったりしましたけども。

まぁ「週刊 明星」は1991年に休刊になりましたけども。
「明星(Myojo)」も「週刊プレイボーイ」も未だに頑張っていると。

強啓
そうなんだ、今も「明星(Myojo)」は相当売れ行きは・・?

五郎
「明星(Myojo)」ね、雑協のデータによりますと・・
今年のデータだと21万部くらい出てるんですよ。

強啓
えっ!そんなに売れてるの?

五郎
そうなんですよ!結構な部数なんですよ、これ!
21万部売れてるんですよ!
だから、元々は1950年代ですから映画スターですよね?
映画スターということは・・創刊号の表紙は美空ひばりさんですけれども。
映画スターを紹介するということで・・。

これが70年代になってきますと、より歌謡曲のアイドルっていうものが出て来る。
今も完全に「嵐」とかですけども。
昔はお正月とか記念号は必ず男女がペアで表紙になっていて、
つまり男性も女性も読む雑誌でしたね。
強啓さんの頃はたぶんそうでしたよね?

強啓
そうです、そうです。
太田博之さんとかね、小鳩くるみさんとかって
ずーっといったりなんかしてね・・。


五郎
はぁ・・・。
そこまで行きます?三浦友和と山口百恵とかって話じゃないわけですね(笑)

強啓
すいませんねぇ・・・すっごい古かったですか!すいません・・。

五郎
友和・百恵だったら分かる?

杉浦
わかります、わかります(笑)

五郎
そんな感じですよね?まぁそんな感じできたんですけども。
常にその時のスターとかアイドルというものを扱ってきた雑誌。
それで言うと、結局アイドルというものはジャニーズしかないってことが
これはっきりわかりますね。

同じ集英社の子会社でホーム社っていうところが、
「Duet」っていうのを出してるんですけども、これもジャニーズ雑誌なんですよ!
これ両方あわせるとね、「Duet」も13万くらい出てるからね。
ジャニーズだけで35万とか売れるんですよ。
そんなアイドルってもういないですもんねぇ。

いやそれでね、強啓さんも
「まだ続いてるとは思いませんでした!」って
集英社さんに失礼な・・(笑)

強啓
大変失礼いたしました。

五郎
まぁ続いているわけですよ。
形は変わりましたよね?ロゴは。
ローマ字になりましたし、大判になりましたしね。
判型も昔と変わったんだけど続いてきたと。

一方のライバルだった「平凡」「週刊 平凡」というのが
休刊しちゃったのに、「明星(Myojo)」とか「週刊プレイボーイ」が
生き延びられてきたのはどうしてか?というと・・

これ25年も続いてきたわけですから
「平凡」がなくなってから、ライバルの死後25年
生きてきているわけですよ。

よく言われるのが、集英社さんはマンガが
「週刊少年ジャンプ」とかありますからマンガがあるんで、
体力があって続けることが出来たっていうふうに言う人もいるんですけど。
僕はそれだけじゃないと思いますね。

というのは、「平凡」と「週刊 平凡」あるいは「平凡パンチ」が
休刊した1987年と88年ってこれバブルの絶頂期ですよ!
だから、平凡出版・・当時はもうマガジンハウスと名前を変えてましたけども、
絶好調で、全然そんなの少々赤字が出ても屁でもないくらい儲かっていたはずなんですよ。

これはやっぱり経営判断として、例えば「an・an」以降の「POPEYE」だとか
「BRUTUS」だとか「Olive」だとかね、「クロワッサン」だとか。


そういう広告収入依存型のビジュアル誌っていうところにシフトするという
会社の方針の中で「平凡」とか「週刊 平凡」とかいうのは古いっていうことで・・
まぁ僕らの世界で言う「活版の雑誌」って当時言われてたんですけど。
古いっていうことで止めた判断だったわけですよね。

その後どうなったか?っていうのを見てると、
その時に広告収入に依存してビジュアルに大きく舵を切った雑誌っていうのは、
実はその後、バブル崩壊後の広告収入激減の中で大変苦戦して
あるものは無くなり、あるものは部数が激減してるわけですよね?

そうやってみてきますと、集英社っていうのは
マンガって広告収入に依存しないでマンガを売った収入で稼ぐ商売ですよね?
そういう経験もあったせいか分からないですけども。
販売収入で食っていこうという考え方って・・

もちろん女性誌なんかで広告収入依存型の女性誌も
集英社も出してますけども、そういう考えがより強かった・・。

強啓
つまりは販売収入でやっていこうという?

五郎
なんとかやっていこうという、
言ってみれば読者の方を向いた仕事っていうのに
より軸足が大きくかかってたからなんじゃないかな?っていう気はしますね。

そのおかげで25年間寿命が延びたんじゃないか?と思うんですよ。
その間、大きな変化というと80年代のビジュアル時代って言われた時の変化があった。
この時、ビジュアル化をいろんな雑誌がしたわけですよね?
その結果、原価が上がって広告収入に依存せざるを得なくなって。
バブル崩壊後、広告収入が減ったと同時にドカーッと落ちたわけですよね。

次の大きな変化って2000年代になって、インターネットだと思うんですよ。
この時に、やみくもにインターネット化しないと!ということで
タダで情報を流しちゃったところも、やっぱダメになっていった。


だから結局ね、よく「時代の変化についていけないで消えていった」みたいなって
雑誌が休刊すると言われるでしょ?
だけど僕は、時代の変化についていけないものが消えていくんじゃないと思うんですよ。
時代の変化に踊らされて自分の本質を見失ったものが
消えていくじゃないか?っていう気がするんですよね。

強啓
なるほど、変化に踊らされて!本質を見失って!
ああ・・。

五郎
はい、だって「明星(Myojo)」さんなんてこう言ったらなんですけど
「アイドル雑誌」ってまぁそりゃ古いですよ!
で、「週刊プレイボーイ」みたいな活版雑誌も古い。
でも結局生き延びているのはそれですよ!

「週刊新潮」にしろ、「週刊文春」にせよ。
メディアとしては非常に古い形態ですけども、
どうして生き延びたか?というと、
そりゃやっぱり、よりたくさんの読者に買ってもらって
その収入で食べていくという情報産業の基本を
ずっと守ってきたからなんじゃないか?っていう気がしますけどね。

強啓
なるほどね・・そうか・・本質を見失っちゃいけない。

五郎
そう、時代の変化に踊らされて本質を見失ったものが消えていくんだと。

強啓
重いねぇ・・。

(了)

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