今回は2016年1月24日放送「SUNDAY FRICKERS」
「一之輔のそこがしりたい」を起こしたいと思います。
一之輔
今日はですね、ご本の紹介でございまして。早朝から番組とも親交の深いだいたい毎年電話でもってですね、「M-1」であるとか「THE MANZAI」の予想とかをしていただいてるですねお笑い芸人・米粒写経のツッコミの方
そして一橋大学・非常勤講師のサンキュータツオさんがスタジオに来ていただきました。
タツオ
はい、どうも。ごきげんよう。サンキュータツオでございます、よろしくおねがいいたします。
石田紗英子
よろしくお願いします。
一之輔
初めてですね、スタジオにおいでいただくのは。
タツオ
もう晴れ晴れとした気持ちで今日はやってまりました。ありがとうございます。
一之輔
眠そうですね。目が開いてないですね。
タツオ
全然大丈夫です。
一之輔
いや新しい本をこの度、出版されまして。さえちゃんちょっとご紹介。
石田
はい、タイトルがですね『俺たちのBL論』というもので河出書房新社より出ています。「BL」とは皆さんご存じかと思いますけれども同人誌などでも人気の「ボーイズ・ラブ」のことですね。
タツオ
皆さんご存じ前提で大丈夫なんですかね?(笑)
石田
もう今はもうね、「BL」「BL」って大人気ですから。
タツオ
もうすいません、石田さんにそんなことを言わせちゃって申し訳ないです。
石田
そしてですね、前回ゲストにもいらっしゃいましたけれどもサンフリおなじみの時代劇研究家・春日太一さんとの共著なんですよね。
近年「ボーイズ・ラブ」にハマったタツオさんが初心者の春日さんに「BL」の基本をレクチャーする対談形式となっています。
一之輔
そうですよ、7時17分に「BL」の話。
タツオ
ハハハハハ、これ日本で初だと思いますよ。革命ですよ。
一之輔
「ボーイズ・ラブ」っていうのは今流行っているんですか?
タツオ
そうですね、やっぱり数年前に比べるとものすごく大きいマーケットになっていると思いますね。
一之輔
けっこう本屋さんに行くとそのコーナーがドーンとあったりなんかしますもんね。
タツオ
ものすごくありますし、実際「ボーイズ・ラブ」書いていた方が一般誌で連載してすごいヒット作を生むとかっていうことも、もう頻繁に起きてますね。
一之輔
そもそも「BL」っていうのに定義っていうのはあるんですか?
タツオ
はい、一応定義はですね男性同士、男性2人の間に恋愛的関係を妄想する習慣がつくこと。2つのキャラクターの間に恋愛的関係を妄想する習慣がつくこと。
だから実際にはそういう関係でなくても、そういう関係を読み込むこととか、あるいは実際にそういう関係のキャラクター同士の恋愛を読むっていうことですかね?
一之輔
基本的にはこれ『俺たちの・・』って書いてありますから、男目線の「BL」論なんですけれども。一般的には女性が多いようですよね?
タツオ
そうですね、もうほぼ9割5分女性だと思いますね。
石田
そのそういう妄想する人たちを「腐女子」って言うんですよね。で私いままで「腐女子」って漢字良くないじゃないですか?「腐る」って書くからあまり良いイメージじゃなかったんですけど。
タツオ
これは基本的には本人たちが自分たちを卑下して「腐女子」って言ってる。「私、腐女子だから・・」というような。だから外部の人が言うと怒られる言葉。「オタク」もそうじゃないですか?
自分で「俺、オタクだからさ」とか言うけど。「お前オタクの癖に」とか言うと良くない言葉でしょ?そういうのと同じだと思うんです。石田さんの周りにいらっしゃいます、「腐女子」の方?
石田
あの、金田淳子さん。
タツオ
ああ、金田さん!僕、お姉さんですよ。そう言ったらBLお姉さん。
石田
そうですよね?本の中でも出て来ますよね?番組で何度かご一緒させていただいて。やおい文化と言えば・・。
タツオ
ああ、そうですか!あの人は「貴腐神」と呼ばれておりまして。レベル99の「腐女子」の方はそういうふうにね、呼び習わす習慣があるんです。
石田
ええ!「神」ですか!
一之輔
これだから、妄想するわけですか?
タツオ
そうですね、あとは商業BLって言って本当にマンガとか小説自体の中でも既に男性同士が恋愛関係にハマっているものを「ボーイズ・ラブ」と言います。
一之輔
あと急に本の中で、モノを・・無機物なモノをBLに例えるっていきなり春日さんに対してタツオさんが問いを投げかける、そういうところが出てくるんですけど?
タツオ
まあ、あの「BL」は僕メガネによく例えているんですけど。そういうふうに見えてしまう生き方のクセみたいなものなんですよね。
なので、例えば鉛筆と消しゴムを見ただけでも鉛筆と消しゴムがどういう恋愛をしているのか?男性キャラに置き換えて妄想するっていうクセがついているんですよ。でもこれは例えばアナウンサーだったら人の話し方とか喋り方が気になるとか。
落語家だったら世界を見て人を見たときに「こいつは与太郎タイプだな」とか「この人、八五郎タイプだな」とか、「あの落語に出てきたあのことって今ここで起こっているな」とか、やっぱちょっと現実に見え方が他の人と違うじゃないですか?
それと同じなんですよね、「クセ」。なので「BLメガネ」を掛けているとほとんど全てモノものが美少年に擬人化されて恋愛をしているというふうに見えるっていうことですよね。そういうクセがつくっていう。
一之輔
なんで男に置き換えるんですかね?その綺麗な男たちに置き換えるじゃないですか、女性たちが。
タツオ
まあこれ諸説ありますけど僕が思うのは、自分と同じ性の人が対象じゃないってことが大事なんだと思います。
一之輔
女性から見ると、女性がそこに登場しないってことですか?
タツオ
はい、例えば少女マンガだとどんなに自分と違っても、同じ性の登場人物に感情移入せざるを得ないうか、どんなに格好良い男の子がいても、そっちに感情移入することってあんまりないわけですよね?
同じ性に目線付けされてしまう。ただ自分と同じ性の人が出てこない自分とは関係ない世界。あるいは自分とは近いけど自分と同じ性の人間じゃないから消費されている。
恋愛として口説かれているとかね、弱者の側に回らされているみたいな作品を読んだときにけっこう「ウッ!」って思う人がいるんですよ。
そこが男同士だと自分と同じ性の人じゃないから、割と気楽に読めるっていう人がけっこういましたね。
一之輔
まるで自分が入り込まないファンタジーの世界っていうことですか?
タツオ
はい、はい!そういう方がけっこう多いんじゃないかな?と思いますね。
一之輔
例えばこの本で出てくる「鉛筆と消しゴム」の関係みたいなのを想像する。この鉛筆と消しゴムの2人が恋愛しているっていうふうに想像するわけですか?
タツオ
これはけっこう「腐女子」の中でもメジャータイトルですね。まあ落語でいうと「子ほめ」に近いやつです。これができなきゃまず。
一之輔
「BL」語れねえよっていう。
タツオ
まず二つ目には昇進できないよ、みたいな感じのやつですね。なのでまず消しゴムと鉛筆がそれぞれどういうキャラなのか?っていうのを妄想するわけです。
一之輔
じゃあ、石田さん。
タツオ
はい、テストです。
石田
鉛筆はうーん・・まあそうですね、イメージですけど鉛筆がやった間違えたこととかも消しゴムが後から消してくれるってことで、世話焼き女房のようなイメージ、消しゴムが。
タツオ
消しゴムが世話焼き女房的な感じね。なるほど、なるほど。鉛筆くんはどういう性格だと思います?
石田
性格ですか?うーん・・そうですね、消しゴムよりも自己主張が強くて何でもやってしまうか・・
タツオ
それは何でだと思います?
石田
えー!?書くものなので表現できる。
タツオ
あ、なるほど!そこは素晴らしいですね。つまり鉛筆である理由はどうしても必要なわけですよ。で、「書くものだから自己主張が強い」っていうちゃんとキャラクターが何故そういう性格なのかってちゃんとモノの根拠があるじゃないですか?
それと一緒で、消しゴムはいつもその自己主張の強い人の尻ぬぐいをするような世話焼き。つまりそれぞれのモノが擬人化されたときにちゃんとそのモノを象徴するような性格付けがされているわけですよね。
で、2つのモノの関係がしっかり今「世話焼き女房」とかありましたけど。例えばピッチャーとキャッチャーの関係にしてもそうですよね?何でもその2人の関係を恋愛的に解釈するっていうことなんですよね。
一之輔
これは恋愛に結び付くのが「BL」なんですね。
タツオ
「これ鉛筆と消しゴムできてんじゃねえか?」みたいな。なんか例えば男同士部活帰りに2人でしゃべりながら帰ったりとか普通にありますよね?男だったら。
一之輔
します、します。
タツオ
でも「BLメガネ」を掛けると「男なのに2人だけで帰って、あの2人ちょっとできてるんじゃないの?」みたいな。そう考えるとなんかとっても幸せな気持ちになるというかね。
一之輔
はあ、じゃあ例えば噺家もそうですね。僕、弟子いますけど師匠と弟子がこう居てなんかちょっと歳取ったオジさんが座ってて前で直立不動の電車の中で若者がカバンを持っている。
「師匠こちら空いてます」「おお、そうか」みたいなこの腐女子の人が電車の中で見たら「あの2人できているんじゃないの?」
タツオ
そんな年の差カップルですよね、なんだったら。血のつながりのない親子関係なんてもうこんな萌えることないですよね。だから弟子が師匠に羽織を着せるところとかも、腐女子の方が見たらグッと来ちゃうんじゃないでしょうか?
なんかそういういろんなモノ、仲良さそうな例えばカップルだとイチャイチャしかないですけど。男同士の関係っていろいろあるじゃないですか?
ライバル関係であったりとか、なんかこういつも毎日一緒にご飯を食べている関係じゃなくても意識しあってる関係とかあるじゃないですか?「何あの2人、実はコソコソ付き合ってるんじゃないの?」みたいなふうに思うというね。
一之輔
その思うのがなんかこのいろんなものを埋めていくというか、隙間を埋めていくなんか頭の体操みたいな。
タツオ
そうです、頭のスポーツですね。脳のスポーツです。
一之輔
「BL」はスポーツなんだ。
石田
いやでも本当に想像力が膨らみますものね。
タツオ
はい、生きていて倍楽しいですよ。目の前で起こっていることと自分が妄想することで倍楽しいです。
僕、「BL」を読むようになってから今まで見てた世界ってモノクロだったんだなってちょっと気づいたんですね。「カラフルだったんだ、もっと!」っていう・・人間になりました。
一之輔
でも男なんで、ちょっと抵抗あるじゃないですか?やっぱり。男同士の恋愛感情っつうのは。
タツオ
はい、これは誤解しないでいただきたいのは2次元の男性同士だと思ってもらいたいんですよね。
で、まずかわいいキャラクターとか割と自分でも好きになれるような男のキャラが出てくるものだとおすすめかなと思いますけれどもね。まあ2次元は男か女かっていうのはあまり大事な情報ではないので。
一之輔
もうじゃあ男っていうただ括りでそれが存在していると思えば良いんだ。
タツオ
そうです、男キャラです。もう同じ絵でも「男」って言われれば男に見えるし、「女」って言われれば女に見えちゃうんで。もうキャラクターとして考えてもらえればなと思います。
一之輔
この中でおすすめのBL本っていうんですか?紹介されていますよね?中村春菊先生の。
タツオ
あっ、そうです。もう一之輔師匠憶えているじゃないですか!
一之輔
「純情ロマンチカ」私は昨日岩手の本屋で。岩手だったら誰も見てないかな?と思って駅の本屋でBLコーナーをずーっと佇んで探したんですけど手に取る勇気がなかったんで。実は無料動画でアニメを拝見しました。
「純情ロマンチカ」第1話|バンダイチャンネル
タツオ
1話を?衝撃の1話でしたよ。
一之輔
衝撃です、ビックリしました!
タツオ
どうでした?
一之輔
あの先生の机の上にBL本が積んであって、ちょっとでもね綺麗なもの同士が・・どっちかに感情移入したりなんかする。で、男なんだけどもうその辺どうでもよくなってきますね。
タツオ
ああ、そうですか!早いですね。
一之輔
なかなか良いなと思いました。
タツオ
さすが!
一之輔
ちょっと紹介して下さい、改めてこの本を。
石田
ということで、サンキュータツオさんと春日太一さんの著書「俺たちのBL論』は河出書房新社より税別1,600円で絶賛発売中。
一之輔
これ深い本ですから、ぜひお買い求め下さい。
タツオ
ありがとうございます!
(了)
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