今回は2015年3月14日放送「東京ポッド許可局」
「エンディング」を起こしたいと思います。
サンキュータツオ(以下、タツオ)
相談が来ております。
メール
いつも楽しく拝聴しております。
ご相談というかお3人にご意見を伺いたいことがございます。
私に趣味は読書と音楽でとりわけ音楽評論や音楽理論の本を好んで読みます。
日本の歌謡史、戦前の大衆音楽について様々なジャンルの音楽の起源
そしてマキタスポーツさんがご専門である
大衆音楽の理論など専門書を読んで勉強しています。
そして自分なりにノートにまとめたりしています。
マキタスポーツ(以下、マキタ)
へえ、真面目!
メール
しかし時折これは何のためにしているのか?分からなくなります。
私は地方の農業高校卒の工場労働従事者です。
周りには音楽を聴く人はいても、音楽を語る人はいません。
本を習慣的に読む人もほとんどいません。
インターネットは嫌いなのでブログなどで発信することも考えていません。
では何故こんなことをやっているのか?
確かに楽しくもありますが、膨大な時間をこんなに永遠に
日の目を見ることがない情報詰め込むことに使うというのは無為ではないか?
という疑念が起こります。
マキタ
ちょっと疲れているのかな?
メール
マキタさんはJ-POP分析、プチさんはうそ社説や時事ネタ、
タツオさんは国語辞典や面白論文。
今でこそエンタメ化され多くの人を楽しませている3人ですが、
これらが長く日の目を見ていなかった時代
「俺、何やってんだろう?」という気持ちにはならなかったでしょうか?
もしそうなったときがあったとすれば、どう対応していましたか?
是非ご意見伺いたく思います。
プチ鹿島(以下、鹿島)
ああ、いい話だ。
メール
これからも放送を楽しみにしております。
タツオ
ありがとうございます。
鹿島
素晴らしい、素晴らしい!
今、小松政夫みたいになりましたけど(笑)
マキタ
ちょっとホコリを吹いてから登場させましょうよ。
いきなり小松政夫出されても(笑)
タツオ
もう蔵から出してきてる情報だから、鹿島さん。
鹿島
いやー、いい・・
でもこれみんな共感する人多いんじゃないですか?
タツオ
こういう人いるよねえ。
マキタ
何のためにやってんだろう?っていうことの常に葛藤でしょうね。
こういう孤独な作業をなんか止むにやまれずやっちゃったわけじゃないですか?
鹿島
でもこの作業って嘘じゃないもんね。
だって誰のためにさ、今なんかその逆が多すぎるじゃないですか。
ちょっとかじってすぐ発信するみたいなさ。
これ一番嘘じゃない、正しいお話ですよ。
だから自分のために書き留めちゃうんだから。
タツオ
だからずっとボケてたんだけど、ツッコミ目線が生まれたってことだよね?(笑)
マキタ
たまにあるんですよ、そういうのは。
鹿島
いや僕なんて・・まあそういうことの解決というか
僕の本を読んでもらえば分かります。「教養としてのプロレス」という。
というのは、僕は本当に10代のころから、今じゃないよ!
俺このぐらいの熱量でプロレス好きだけど、これが例えば映画とかクラシックとか
タツオ
だったらね、楽しく生きていけたのに。
鹿島
どんなに俺、文化的に大きくなれるんだろう?って
ずーっと思いながら、10代のころからですよ。思ってたんです。
それがまあ30年続けてきたら、僕は例えば書籍とかいいですよ。
他に語れる人とかを見つけたから、何かね必ず報われます。
あの僕は「大いなる無駄」は実は無駄じゃないと思ってますから。
無駄なものこそ無駄じゃないと思ってますから。
マキタ
これでも後、あなたの死後「シュヴァルの理想宮」みたいな感じでね。
見つけられちゃうものになるかもしれないしね。
タツオ
まあ本当になんか僕、本当純粋だと思うんですよ。
で、目的と手段を逆転させて欲しいんですよね。
結局「好き」でやってたことが「これ何のために?」っていう
考え方が入ってくるって新たな目的を探しているだけなんですけど。
いやいやそうじゃない、最初からこれが目的だから手段じゃねえからっていう。
鹿島
いいですよね、もうブログで発信するあれも感じていないと
もうそこまでちゃんと分かってて、でもやるってことは
やっぱり好きなんですよね。
タツオ
「郷土史家」ってこういう感じですよね。
僕あの奈良の方の祖父がですね、こういうことをずっとやってまして。
専門でいうと、母子家庭だったこともあり研究の道には行けなかったんですが、
まあ仏像の研究をしていて論文とかも書いてたんですね。
もうそういう学会の人とは仲が良かったんで研究して。
マキタ
在野の研究家
タツオ
在野の研究家で郷土史もやってました。
で本当に九十何歳まで生きたんですけど、歴史関係の新聞の切り抜きを
死ぬまでやってましたね(笑)
マキタ
業が止まらなかったね。
鹿島
でも昔の人そうだよね、うちのおじいちゃんもそうでしたよ。
タツオ
そう、何のためとかじゃないんだよ。
鹿島
もう本当に好きでね、うちのおじいちゃんの2階なんかお宝しかないんですよ。
だけどそれは他の人から見ると何の価値があるかよく分からないけど、
それなりの博物館的な知識ある人から見てもらうと、
「ええっ!」って引くぐらいの。溜め込んでるんですよね。
マキタ
でもこういうやっぱ在野の評価されない名もなき困った天才たちっていうのが
何かしら役に立ってると思うんですよ。
タツオ
僕らが出来ることは、「そのままでいいぞ!」「分かるよ!」と
そのままでいいよJAPAN。
マキタ
そのままでいいと思いますよ。
杏里が歌ってるじゃないですか知ってると思いますけど。
「I Can Stop The Loneliness」と、
「悲しみがとまらない」んですよ。
こういうことをしていると。
タツオ
戦前の大衆音楽ねえ・・。今僕「ボーイズバラエティ協会」っていうところにいて
歌ネタやってる人がけっこういられるんですけど、
矢野利裕さん、分かりますよね?
あのまあコメディと音楽っていうのは昔は1つのものだったんじゃないか?みたいな
まあザックリしすぎですけど、そういうことをやってる人がいて。
まあそれを「ボーイズバラエティ協会」ってまさに音楽と笑いの共存なんですけど
そこに「書生節」(しょせいぶし)っていうのをやっている若い人がいて
「書生節」って知ってます?
マキタ
分かんないですよ。
タツオ
大道楽レコードっていうレーベルからそういう昔の音源が出てるんですよ。
僕はあのワカナ・一郎っていうね、アコーディオンを使うネタをやってる
男女コンビがいて、すっごい好きなんですけど。
その人たちの音源を探していたときに「大道楽レコード」っていうのに
行き着いたんですけど。「書生節」っていう音源が
「大道楽レコード」から出てますとかって言ってて、
なんか節回しに乗せて世相を斬るみたいなネタを今現代でやってるんですよ。
岡(大介)くんっていう。「あっ、そういうのあるんだ」と思って思わず探して・・。
鹿島
いるよね、町の研究家みたいなの。
俺、この間さなんかイベントをやって畠山(理仁)さんっていうさ、
すごいいわゆるインディーズ候補を密着してやる追いかける人が大好きな人がいるのね。
大好きな人というかそれはもうプロですよ。
その人と僕イベントやったんですけど、終わって1人のもうそれより詳しいくらいの
泡沫候補に対する分厚いコピーしてきたの「是非読んで下さい」って
もうヨダレ垂らさんばかりの。
で、良い資料なんですよ。
だからそれ別にそこの差ってないじゃないですか?変な話。
好きで・・だってその人はジャーナリストでもないわけだから。
本当に好きで自分の休みとかを使って追っかけているわけ。
あれビックリしたな、すげーなと思ったね。
タツオ
アカデミズムの世界まあ行かなくても良いかもしれないけど。
そういうなんかこういうことをやってるイベントとかね、
まあなんか自分の情報がどこまで正しいのか?とか
情報共有できる場所に足を運んでみるのも1つかな?とも思うんですけど。
そういうこともあまりしたくない方なんですかね?
マキタ
いや分かんない、溜めに溜めてなんかいろいろ
バンッと来るかもしれないですよ、これから。
鹿島
そうですよ、だって僕ら10代のころネットとかなかったですから
溜めるしかなかったですもん、だって。
タツオ
だからちょっと話せる人が近くに来るとブワーッて出しちゃいがちなんですけど、
そこは落ち着いて。マキタさんどうでした?
でも好きでやってたってことですよね?音楽分析は?
っていうか自然にやっちゃってましたよね?
マキタ
自然にやってたことなんで。
タツオ
まあ俺もそうだもんな。
自然にやってたし「人に言うことでもねえ」と思ってたな。
鹿島
それが好きだったんだもんね。
タツオ
好きというかいたたまれなくなって、気付いたら考えてた。
マキタ
あと俺1回さ、忘れもしねえんだけど。
友達に自分のそういう音楽に聴き方みたいなことを言うとすごい引かれたんだよね。
たぶんそれ以来、俺はやっぱりあんまり言わないようにした。だから恥ずかしいというか
タツオ
「そんなに理屈っぽく考えてないよ」って
やっぱり常にその殴られる感じなんだよね。「そんなに考えてないよ」みたいな。
なんかそれがあるからあんまり言わないようにしてるっていうか(笑)
マキタ
なんかみっともないとか、恥ずかしいとかさ。
鹿島
そういう人は多いんじゃないですか?
タツオ
まあでもこういうね、いいんじゃないか?
ずっと楽しんでやってるわけだから。ありがとうございます。
鹿島
でもこれを送ってきてくれたってことは、何かもしかしたら
1ミリ2ミリでも心の変化があったわけで。
実際これを読ませてもらったじゃないですか?
これを聞きながら、何か変わったものがあればそれはそれでいいし。
タツオ
まあ研究者・学者ってこういう人ですけどね。
なんか論文書けばいいんですよ、作法を教わるだけでいいんですよ。
(了)
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