2011年7月22日(金)・大阪市旭区・芸術創造館で行われた
300doors「舞台芸術におけるコミュニケーション/デザインを見直そう!」
講師:奥野将徳さん(precog)
というワークショップ参加して参りました。
参加者は20名くらいで、舞台芸術関連で働く人が多くを占める中
ただ観客として参加させて頂きました。
ここでの講義で書き留めたことを以下に書きたいと思います。
<講師の自己紹介>
大阪生まれで、大学の時に東京へ。そこで建築について学ぶ。
授業を受けていく中で、その体育会系的な授業が嫌になって
あまり授業に出なくなり、そこでたまたま見たダンスの公演がきっかけで
舞台芸術の制作に関わるようになる。
そこで、周囲の制止があったが、第2文学部に転籍
昼は広告代理店、夜は大学で勉強するようになる。
広告代理店の社長が、九州大学の教授になるために
「九州に来ないか?」と言われたが、東京に残ることに
その後 precog に入り制作に携わっている。
<コミュニケーション/デザインとは?>
このワークショップをするにあたり、
思いついた言葉が、「コミュニケーション/デザイン」
この言葉を何故思いついたかと言えば、
「制作」という仕事を説明することの難しいということを感じていて、
回答として「コミュニケーションをデザインしている」
とい言葉が一番合うのではないかと考えた。
コミュニケーションと言っても、通常の会話ではなく
チラシを配るとか、企画書で伝えるとか、助成金の審査員に伝えるなど
あらゆるものを伝えることが全てコミュニケーションと言えるのではないか。
デザインとは、見た目をととのえること。
人との関係性を伺って、情報を人に伝えるんだというところが、
制作の本質ではないかと思う。
制作の仕事は、一つ一つの雑務にとらわれて
総体的なものがわかりにくくなっている。
(1)イギリスで生まれた新しい潮流
「コミュニケーション/デザイン」という言葉が、
比較的新しい言葉。
2002年ごろのイギリスで広告界に新人がいっぱいでてきた
サッチャーがデザインを通じて国を変えようとしたため。
アンファンテリブルと言われた新人が広告業界を席巻した。
今や広告業界では,当たり前の言葉になった。
それを舞台芸術に当てはめてみる、今回のメインの議題
アーティストと観客の間だけではなく、
多方向でコミュニケーションは発生する。
このコミュニケーション全てをデザインできるのではないか?
デザインをすることによって、
伝わる深度の深さが深くなったり、より遠距離まで伝わるのではないか?
(2)現場におけるコミュニケーション・ロス
アーティストは作品を真剣に真摯につくる。
せっかく作った作品を出演者・制作・観客に伝わるかどうか?
またアーティストはそれを伝えることに、あまり熱心でない。
それをサポートできるのが、制作の仕事。
アーティストもそこの部分をくみ取って行動した方が良い。
(3)「情報化社会」から「情報過多社会」へ
情報化を超えて、情報過多の状態になっている。
その情報過多をうまくデザインをして、相手に届くように、伝わるように。
チラシ → 折り込む → 面白そう
↑もうこれではお客さんは来ない。
新しい社会状況下になり、コミュニケーション/デザインは必要になる。
(4)「伝える」から「関係性構築(engagement)」へ
一方的に伝えるだけでは、伝わらない。
向こうからもアクションをつかみ、何かを得るなどして
お互いに関係性の構築を作り上げる。
相手側が、ウォッチしたりリアクションする。
相手の好きなように受け取れという時代はもう終わった。
ここまでを共通認識として、知って貰いたかった。
「コミュニケーション/デザイン」は、時代の要請でもあると思う。
これを欠いてしまうと、もう時代おくれと言われてしまう。
<「コミュニケーション/デザイン」のメリットは何なのか?>
(1)作品のクオリティアップ
作品に携わる個人個人が最大限、キチンと理解して伝えることで、
作品のクオリティが上がる。
そうしないと次以降、自分で考えて行動できなくなる。
キチンと理解することで、細部から徐々にクオリティアップしてくる。
二次的効果として、作家の中でも作品の考えが整理されていく。
雑誌のインタビューなどで、作者が答えていくうちにクリアになっていく。
自分の中でウジウジ溜め込むよりも、コミュニケーションを取ったことで
クリアに見えてくることもある。
(2)作品鑑賞機会の拡大
お客さんや、企画のプロデューサー、助成金の審査員との
コミュニケーションをうまくとることにより、
作品を鑑賞してもらえる機会が増える。
(3)作品・団体に対するより深い理解
お客さんをはじめスタッフや作家も含めて、
「何でこの作品が素晴らしいのか?」「見所はどこなのか?」
こういったコンセプトを明確にしないと、
単純に見て終わりになってしまい勿体ない。
演劇は言葉を扱うものなので、作者や俳優など言葉にして伝えるという事は、
結構得意で、そのため断続的にお客さんがつきやすい状態にある。
しかしダンスの世界では、演者が普段から言葉を話す機会が少ないので、
言葉にするのが演劇よりも下手な場合が多い。
そのためお客さんに断続的につくことが
少なくなりがち。
しかし、強い個性などをもったダンスカンパニーは
その個性が伝わることにより、断続的にお客さんがつく。
(4)面としての拡がり・繋がり
上記の(3)にも関わることになるが、
断続的にお客さんに来てもらうことにより、
一つの作品から作品群としてみることになる。
その作品群を見ることにより、一貫している何らかのコンセプトを
持っているという風に面として見えてくる。
ある美術作家が、別ジャンルの作品を作ったとして、この作品群に
コンセプトが生まれたり見つかったりして、繋がりが見えてくる。
<地方圏と都市圏でのコミュニケーションについて>
自分の本拠地以外の公演でダンス(演劇)などを知らない人や、
そもそも見ない人など見て貰うためにはどうすればいいのか?
田舎ではデザインの良くないチラシでもお客さんが集まったりする。
結局チラシは見ていないのではないか?
→いわゆる「フックがない」状態。
フックがかからないとコミュニケーションも受け取りもしない。
結局、どれだけ丁寧に紹介をしたとしても、それを理解する土壌や、
コンフリクト(文脈)がないため伝わらない。
いくら最先端と言っても、今までの知識がないので、
最先端かどうかもわからない。
こういった場合、言葉や映像などを使うとか、
その地方の有名人の紹介して貰うなど
何も知らない人へ注意を引き、
興味を持たせるとっかかりを作ることが大事。
興味を持って貰えるまでの工夫が必要。
地方での公演の場合、都心でやっていたものをそのまま
持っていくのではなく その地域にあったコミュニケーションを
使って行った方がいい。
コア(マニア層)に受けるアーティストや団体は地方では、難しいと思う。
面白いこととお客さんが来るということは別問題。
そういう団体は、コア(マニア層)を如何に巻き込むかが重要。
一般層にわかりやすくする企画もいいが、
その代わり企画がぼやけてしまう
こういうものが失敗が目に見えている。
爆発的・継続的にファンを作ることはない。
熱意をもって、どう伝えるかが大事。こういうものは縮小再生産しかない。
困難なのは前者、困難だからやめてしまう。
しかしそれをどう伝えるかが大事。
過疎地域は、都市的なアプローチができない。
都会と地域は一緒に語れない。
都会と地域間のコミュニケーションの違い
地方→地方で発展
文化ホールをどう使うかという考え方は捨てる。
↓
そのやり方を踏襲した時点で負け
東京・大阪で成功しても地方は別。
ゴール設定を違うものにするべき
どこにニーズがあるのか?
そのソリューションとしての演劇をつくる。
<ブランド・デザインとは?>
コンピューターは役に立たない。
答えを出すことしかできないからだ。
ピカソ
ピカソも言っているが、「問題設定」こそが大事。
お客さんの数というのは、見える形で出てきやすい。
しかし実際の舞台では、他の部分の問題も多いはず。
なのに出てくることは少なく、見えにくい。軽視される。
「問題設定」することにより、意識的に考え始めることが大事。
それで解決できる問題はたくさんある。
今後の参考として、
広告代理店で働いていたときの専門が、ブランドストラテジー
企業のブランドを如何に構築するかを考えていた。
ブランドと言えば、いわゆる高級なもの「ヴィトン」「シャネル」もあるが、
「コカコーラ」「ユニクロ」も当てはまる。
「ユニクロ」を例に、
「ユニクロ」と聞いて浮かぶイメージ像があると思う。
「安い」「カジュアル」「赤いロゴ」とか様々出てくる。
思い浮かぶものはたくさんあると思うが、それら全て
僕たちみんなが分かる共有されたイメージだと思う。
これは、意図的にすりこまれたもので、このことをブランドという。
自分に落とし込んで、自分は他人と共有できる「ブランド名があるか?
岡本太郎は、強烈な個性でブランディングをした人。
強烈な個性をもっていたので作家として大きくなった。
今はそこまで作家の個性を強めなくてもいいだろうと思うが
ブランドイメージを作ることは必要。
<ブランド・デザインのヒント>
(1)今持っている”らしさ” → 自分の現状認識
(2)将来期待したい”らしさ” → 将来を期待したらしさ
(3)その”らしさ”(1)(2)によって、どういった利益を与えるか?
現状のらしさとは、潜在的なものも含む。
本質すぎて普段では言わないものも”らしさ”に含む。
(1)は、これからも継続してもっていたい”らしさ”
逆の意味で、捨ててしまいたい”らしさ”もあると思う。
(2)は新しく自分が得たい”らしさ”
どちらも、(自他共に)ワクワクするような”らしさ”じゃないと意味がない。
ブランドの「ベネフィット」という言葉がある。
そのブランドによって顧客がどのような快感を受け取れるか?というもの
2種類あり、
機能的ベネフィット → 左脳的
情緒的ベネフィット → 右脳的
「ブランド」としては両方あるべきである。
また、ブランド・デザインは一回決めたら
ずっと守らないといけないものではない。
常に意識しながら考えていけばいいと思う。
考えていくことによって、この流れが面として見えてくる。
これも継続的にコミュニケーションをとることで、信頼関係が築ける。
ブランド・デザインは、かつて「批評家」が担っていた部分である。
批評家はあるムーブメントに対してネーミングする役目もあった。
それで批評家が時代を作っていた面があった。
今は、批評が機能していない時代になったので、
作家がブランドを作り込んでいかなければなくなった。
<ブランドを伝えるテクニック>
(1)誰に伝えたいのか?(ターゲットの設定)
(2)ロゴ・マーク・イメージカラー(VI:Visual Identity)のなどの策定
ACのサウンドロゴも含まれる。「♪A~C~」がすり込まれる。
ブランドをより思い出して貰いやすくするため。
(3)「タッチポイント」を意識したブランドの浸透
「劇場などに来る前にどこで知ったのか?」この情報を意識すること。
チラシ・DM・Web・メーリングリスト、劇場スタッフの対応なども含まれる。
(4)AIDMAから「AISAS」へ。
どちらも、消費者行動の変遷の頭文字を取ったもの
AIDMA: Attention(意識する)→Intereset(興味)
→Desire(欲求)→Memory(思い出す)→Action(行動)
かつての流れがAIDMA。現在もペットボトルなどの飲食物や安価な物では、
この消費者行動になる。
最近は、この流れも変わってきて、
Attention(意識する)→Intereset(興味)までは、一緒
次に僕らは、Serach(検索)を行うようになった。
検索を行った結果、Action(行動)を起こし、
その結果をtwitterに呟いたり、口コミサイトに書いたりして、Share(共有)する。
舞台芸術などの敷居の高いものや、値段の高い物ではこれになる。
今回は、最後のあったAISASのshare(共有)の考えに基づき、
公開させて頂きました。
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