今回2017年10月17日放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交遊録」深澤麻紀さんの回を起こしたいと思います。
深澤麻紀(以下、深澤)
前回の参院選から18歳選挙権が始まって、よく言われるのが「若者の投票率が低いことが問題だ」。これ必ずみなさんおっしゃってると思うんですけど。
実はですね、若者の投票率の低さは今に始まったことではありません。例えば衆院選の場合だと1970年代から80年代の場合40代以上は75%から85%だったんですね、投票率。でもね、その時代から20代はだいたい20%ずっと低かった。
大竹まこと(以下、大竹)
何年から?
深澤
1970年代から80年代です。だから今の50代とか40代の人も実は決して投票率は高くなかった。
大竹
俺ら行ってなかったからね。分かるそれ。
深澤
ただ一方ですごく問題が起こるのが全世代が一気に投票率が下がる時代があるんですよ。みんな忘れているんですけど20年前の1996年の衆議院選挙、それまでは平均投票率衆議院は68%から77%っていうすごく高かったんですけど。
96年に一気の59%になるんです、60%を割るんですよ。で、20代に至ってはこのときに36%にグワーッて下がっちゃう。それまではそうは言っても20代でも50%は当然あったんですけど。
大竹
何があったの?
深澤
小選挙区制がこのときに導入されて。もともと日本は中選挙区制で1つの選挙区から3人くらい選べるので例えば自民党と社会党と無所属の人が選ばれたりしてよく分からない人が3人目に選ばれたりする・・
大竹
それも選ばれたりするし、自民党・自民党・社会党みたいなこともあったわけだよね。
深澤
だからけっこう読めなかったんですけど、イギリスとかアメリカのような二大政党制をしようと。それで2つ目の政党を作ろうと小沢一郎さんはそれがやりたくて新進党とか日本新党とかいろいろやってたんですけども。
ところが小選挙区制にあるとやっぱり既成政党だったり、あるいは労組とかとつながりが強いとか組織票が強いとか。そういう政党じゃないと当選ができなくなっちゃうっていうことで、投票活動に結びつかなくなっちゃった。
しかも、日本人って無党派層がすごく多いと思っているでしょ?ところがこれも大変な誤解で。1960年代、つまりみんなが選挙に行っていた時代の無党派層って10%しかいないんです。
でね、自民党の支持者が45%。社会党と共産党は30%いました。他のいろんな諸派も15%いて政治に非常に関心が高いのが戦後から1960年代までなんですね。
大竹
そっちの方が二大政党制に近いよね?
深澤
実はそうだったんですよ!いわゆる「55年体制」という自民党と社会党が強かった時代は二大政党に近かったんですけど。まあ保守の二大政党にしたかったんですよね、日本は。
ところが学生運動がある意味失敗をしてしまって、ロッキード事件とかリクルート事件とか今の若い人に話すと信じられないくらいの政治の腐敗なんですけど。
そうすると「党派政治」というものに対して不信感が広がっていって、70年代から90年代にかけて10%いなかった無党派層が激増していくんですね。
95年には自民党の支持者と無党派層の数が逆転して、以降無党派層っていうのはだいたい4割から5割を占める先進国では特殊な国なんです。
ところがその無党派層が増えたときの96年に小選挙区制が導入されちゃうんですよ。つまり無党派層が最も多いのに政党を支持しなければ意味のない選挙制を入れたら、投票率は下がりますよね?だって自分は支持政党がないのに、自民党かナントカ党に入れないとダメだって思う。
さっき言った学生も20代の人も1960年代までは投票率が高かったんですけど、それがどうして下がったか?というと・・まあこの番組でも何度かお話しているんですけど、日本とはとにかく学生運動のアレルギーがすごかったんですね。
1969年に当時の文部省がとにかく高校生による政治団体の組織化と政治活動を制限・禁止。あと大学とかもやはり学生運動の中心となった自治会を解体する動きというのがありまして、これが実際50年近く高校とか大学っていうのは政治活動とか政治運動をほぼ禁止してきたんですね。
同じころ、もちろん60年代70年代っていうのはヨーロッパとかアメリカも政治の季節で学生運動がすごかったんですけど。彼らはその反省から「だからこそちゃんと高校生でも中学生でも政治活動しましょう」と。70年代から18歳選挙権も認めて高校できちんと政治について教えるからこそ大学生になったら選挙権を認めましょうっていう。
この50年の差が日本と欧米を大きく分けてしまった。つまり若者が政治に興味がないのは今の20代じゃなくて、30代・40代・50代・60代、ここまで全部が高校時代にほぼまともな政治教育を受けていない。投票率もものすごい下がっているっていうことがもともと問題なので・・
大竹
高校生なんかが政治に参加することをやっぱり拒否したわけね。
深澤
拒否したんです、学生運動の恐怖感がすごかったんですね。日本はそもそも「革命」というものも市民革命もなかったですし、侵略されたこともないから独立戦争もないわけですね。ほとんどの大きな国っていうのはだいたい革命か独立をしているわけで市民の勝利体験があるわけですよね。
だけど日本は市民の勝利体験っていうのがない、学生運動も失敗してしまいましたから。で、アメリカの二大政党制というともともと黒人解放とそうでない派とか。イギリスだったら貴族派と民衆派とかっていうふうに割と分かりやす二項対立があるので二大政党制になりやすいんですけど。
日本は実はそんなに自民党と社会党も当時激しい政治対立があったかというと、アメリカやイギリスほどはやはりなかったっていうことなんですよ。
もう1つ最近よく聞くのが「若者が保守化した」っていうじゃないですか?ところがね、この20年小選挙区制になってから若者に人気があった政治家っていうのは小泉元首相と橋元・元知事なんですね。
この20年っていうのは日本の革新勢力っていうのは現状維持勢力に見えるわけですよ。「護憲」とかいうわけだから、そうすると小泉さんとか橋元さんは保守ではなくて現状打破勢力に見えてきたんですよね。
太田
改革派のイメージ。
深澤
そうですよね、だって「自民党をぶっ壊す」とか「大阪をなんとかする」って。だから今も若者は自民党支持とか安倍首相支持が確かに多いんですけど、どちらかというと現状維持勢力への不信感。だから保守派ともちょっと違っていて。
実際に2009年のときに民主党が政権を取ったときには若者の投票率も50%まで上がっているんですよ。だからやっぱり現状が変わることに対しては若者は決して否定的ではないんですけど。
ついつい私たちがですね「若者は投票しないから」とか「若者は保守的だから」とかね言ってしまうとますます若者は「そうなのかな?」「俺たちは政治に興味がないのかな?」と。
「いや、60代から下みんなそうだよ」っていうと学生はびっくりするんですよ。「みんな選挙行ってない人、たくさんいたからね」って。
大竹
さっきの話に戻りますけど、日本が高校生とかあまり政治参加を学校側がある意味、規制していったんですか?
深澤
そうです。
大竹
アメリカなんかだとオバマさんが大統領になるときはボランティアとして参加していたのがバッチとか作ったりしたのが高校生だからね。
深澤
そうなんですよ!それが国を変えるという本人たちの当事者性を作るので日本はとにかく高校までは性教育もしなきゃ政治教育もしないのに、急に大人になったら「政治に興味を持て!子どもを作れ!」とかいう極端な国なんですね。
大竹
政治のことを教えないで、いきなり「選挙行って下さい」って言ってるようなもんだね。
深澤
公民の教科書とかはありますけど、本当に「衆議院は何議席」とかそういうことしか教えてないので。いや本当に「右派」とか「左派」とか「革新」とか「リベラル」とか「保守」とかそういう言葉も全然分かんない。
大竹
俺たちだって「保守」とか「リベラル」の違いがもう今は逆転したりしてよく分からないよ。
深澤
だからそういう意味で分からないのではなくて、そもそも教えてもらってない。一方では若者に「新聞を読め」とか言うじゃないですか?これもなかなかやっぱり難易度が高くて。
というのは学生に一番驚かれるのは、学生時代貧乏だったので風呂なしに住んでいてテレビもなかったんだけど新聞取ってたんですよって言うと「風呂とテレビがないのに、なんで新聞取るんですか!?」
だって読むものがネットもなけりゃ、携帯もないから読むものないから新聞しか・・毎日家に来てくれるのが新聞だけなんだっていうと「へえ」って言うんですけど。
やっぱり新聞はサイズが大きくて読みにくいんだって。あと段落が飛ぶからやっぱり読みにくいんだって。
はるな愛(以下、はるな)
まあ電車の中では開けないもんね。
深澤
それに手が汚れるので嫌だっていうので、読むと面白いらしいんだけど・・だからねやっぱりリアリティがあるのはそうは言ったってスマホでいいんですよ。
私はそのかわりスマホで薦めるのは検索ができるニュースアプリを使いなさいよって言っていて。検索ができるニュースアプリは「yahoo!ニュース」と「googleニュース」なんですね。これを絶えず入れておきなさいっていうことと。
今だったらNHKだったら「選挙WEB」っていうサイトがすごくよくできているんですよ。あとネットニュースを読むときには3本に1本でいいから面倒くさそうなニュースを読みなさいって言っています。
NHK選挙WEB
「Yahoo!ニュース」ってついつい芸能ニュースばっかり読んじゃうので、はるな愛・大竹まことを読んだらその後「立憲民主党」のニュースを読みなさいよっていうようなことを言うと。負荷のかかるニュースは筋トレと同じだから3本に1本読むといいよっていう・・
そうすると「アプリとかでいいなら、読んでもいいかな?」とか。「あとtwitterでNHKのニュースをフォローしようとか政党のニュースをフォローするといいよ」って言うと具体的なのでやっぱり「新聞を読め」よりは聞けるのと。
NHKニュース @nhk_news
あともう1つ、これは若者だけじゃなくて投票先がまだ決まってらっしゃらない人が多いと思うので、私が毎回使っているのが毎日新聞のネットサービスで「えらぼーと」というのがあります。
毎日新聞ボートマッチ えらぼーと
これ何か?っていうと立候補者に25問のアンケートをしているんですね。その結果を自分も答えるんですよ。そうすると自分の選挙区で自分に近い人が分かるんです。すごく便利なので自分の政治的な思考は自分の選挙区だとこの人が近いんだなっていうのが・・
大竹
今日さっき頭で話したんだけど、新聞に候補者のいろんな欄が出ていてその一番下に「好きな本・好きな映画」とかね趣味のことがプロフィールで書いてあって。そこには昔の作家の名前が書いてあったりするんだけど、そこに何にも書いてない人がいたんだよ。
深澤
えーっ、それは嫌だ。そんな人。そういう人に入れないのは大事だわ。
大竹
何人かいたんだよ。「これどういうことかな?」って思ってさ。
はるな
「書き切れない」っていう思いかもしれないけれど、でも書かないとそうなると「嫌だ」って思われますよね。
太田
もったいないですもんね、せっかくのチャンスを。
大竹
横棒を引いてあって、俺ちょっとびっくりしちゃってさ。
深澤
でね、あとはよく「今の若者は昔より幼い」ってみんな言うんですけど。それは自分が年を取ったからなので、明治のころから言われてますからね。ただどんなときでも若い人は「正しい候補に入れたい」っていう欲望があるんですよ、それは私も若いときはそう思ってた。
でもそれは無理なので、とにかく若い人に私が言うのは「マシな候補、マシな政治・・」と。万が一失敗しても自分で正直私だって失敗していますけど、それに反省すればいいので・・まあ行きましょうよということです。
大竹
俺はもっと選挙はアジアの国みたいにお祭りみたいになればいいのになって思ってんだけどね。
深澤
インスタ映えとかもすればいいのに、みんなで写真を撮って。
(了)
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