今回は2015年7月21日放送「木村草太 Session-22」
「セッション袋とじ」川端裕人さんの回を起こしたいと思います。
南部広美(以下、南部)
今夜のゲストは作家の川端裕人さんです、よろしくお願いします。
川端裕人(以下、川端)
よろしくお願いします。
木村草太(以下、木村)
よろしくお願いします。
南部
では川端さん初登場ということでプロフィールからご紹介したいと思います。川端裕人さんは1964年兵庫県のご出身です。大学卒業後、日本テレビに入社し当時の科学技術庁や気象庁の担当記者として宇宙開発・海洋科学・自然災害などの報道に関わります。
1995年に「クジラを捕って、考えた」でノンフィクション作家としてデビュー、97年には日本テレビを退社し98年には「夏のロケット」で作家としても活動を開始なさいます。
以降、数々の小説・ノンフィクションを執筆なさってノンフィクションではPTAが直面する問題や課題をまとめた新書「PTA再活用論-悩ましき現実を超えて」など幅広いテーマを取材なさってます。そして今月2012年の出版された小説「雲の王」が文庫化されました。
木村
本当にいろんな作品を残していらっしゃいまして、今日私も「川の名前」という作品を読みながら出張に行ったんですけど、これは夏休みの子どもたちが川にいるある現象をめぐっていろいろ冒険をするというお話で本当にあのこの時期に是非読んでほしい作品ですね。
あともう1つ実は娘が「12月の夏休み」を読みまして、ニュージーランドが舞台でそれをまさに12月が夏休みなんですよね。
川端
そうですね、季節が反対なんで。
木村
娘はちょっと変な感じなのは、「巨大昆布のところがとても楽しかった」って言っていましたけどね(笑)巨大昆布が「見つけてもらってよかったね」とかって言ってましたし。あと「アザラシが豚骨ラーメンの臭いがする」っていうところも印象に残ったって言ってましたね。
川端
あれね、娘と一緒に旅をしたときに娘が・・
南部
実際のエピソード?
川端
うん、それちょっと使わせてもらいました。
木村
もう夏休みネタ満載で「12月の夏休み」「川の名前」その他たくさん作品があるので是非読んでほしいなと思いますね。で、えーと私と川端さんはPTA問題をきっかけにお話をさせてもらいいただいたんですけどね。
南部
そうなんですよね、その対談がきっかけでお2人は出会われたんですか?
川端
うーん、いやたぶんその前に木村さんが・・あれ朝日新聞ですか?
木村
そうですね、朝日新聞の「PTA強制加入は違法だ」という記事を書いたんですけれども。そのときに私が参考にしたのがこの「PTA再活用論」だったんですね。
南部
ああ、川端さんのご著書だったと。
川端
僕にしてみても初めて法律家の人がはっきり言い切った。それまで弁護士さんにいろいろ話を聞いても逆に「それ知らないんで、PTAについて教えてください」って逆レクチャーしなきゃいけないような状況だったので。
はじめて法律の専門家が「これ違法ちゃうの?」ってはっきり言ったっていうのが木村さんだったんじゃないかな?と思うんですよね。
木村
どうもそうだったみたいで、そこから「違法PTA」という言葉もできましたし、強制加入にはいろんな問題があるということが分かりまして、まあ「シノドス」という媒体で対談をさせていただいたんですよね。
そこでいろいろお話をさせていただいて、今日はこれからいろいろ出てくると思うんですけれども。PTAを強制加入していくってことが本当に根本的な問題であるということで
私はそれについて「結社の自由の侵害」であるとか「そもそも個人情報の流通を第三者提供で違法である」とかいろいろお話ししているのでそのあたりも含めて今日はお話ができたらなと思いますね。
南部
強制加入なんだっていうこと自体を私は存じあげなかったので。
木村
知らない人も多いですよね。いやあの子育ての経験とか学校にあんまり関わらずに子育ての時期を過ぎちゃうと知らない問題なんですよね。
南部
そうなんですよ、身近にただそういえば友人がボヤいていたなとかっていうことは川端さん本を読んで「ああ!このことを言っていたのね!」っていうことで納得したんですけど。
川端
でもまあ、いざ当事者になってみるともう自分の意識の中が例えば4月の役決めのころなんて頭の中がPTA1色になっちゃうくらい重たい問題になりうるんですよね。
木村
これは是非、このあと聞いていくとして川端さんの人物紹介をうかがって行きたいんですけど、科学技術庁や気象庁など担当記者ということだったんですね?これはやっぱり作品の中で非常に自然科学の知識を活かした描写が多いなというふうに思うんですけど。これはどういうわけでこちらの部署に?
川端
当時まだテレビ局の報道も余裕があったというのか野心があったっていうか、科学部みたいな・・新聞だと科学部あるじゃないですか?テレビ局にはないんですよ、NHK以外は。
民放でもせめて科学担当みたいなものを作ろうよっていうふうなことを、気運があったギリギリの時期だったんですよね。その要員みたいに思われていて、割とそっち方面の取材をやらせてもらってましたね。
木村
そして自然と人間を背景にした小説・ノンフィクションをその後数多く執筆と言うことですが、作家はいつごろ志したんですか?
川端
それがですね、大学生時代から書いていましていずれ少なくとも文章を書いて飯を食おうとは思ってたんです。
南部
それがなんでテレビ局に?
川端
それってなんかちょっと当時としては生意気な言い草ですけど、新聞とか雑誌社に入ったら自分の好きじゃないものも書かなきゃいけなくなる。類似分野、似ている分野で経験を積めるところはどこか?と思ったらテレビ局だったっていう・・。
南部
ああ、書きたかったがゆえにの選択だったという?
川端
そうですね。まあ好きなものを書きたいっていうんですかね。テレビ局ってもちろん原稿を書きますけど、新聞とか雑誌みたいに長い文章を書かないので。
木村
作家を志すのはそのころに時期だったっていうことなんですが、そのころから今書かれているようなテーマでっていうふうに考えていらっしゃったんですか?
川端
ああ、そうですね。割と僕SF読みだったのでサイエンス系が好きだったんですよ。ただまあ今から言いますと大学時代なんて村上春樹風の青春小説を書いていた恥ずかしい自分がいますけどね。
南部
ええっ!その作品っていうのはいまだに残ってるんですか?
川端
たぶんどっかにあるんじゃないですかね?
南部
読んでみたい!(笑)
木村
それも楽しみ・・ええーそうなんですか?今月には「雲の王」という小説が文庫化されたということですがこの小説はどういう作品になっているのか教え願えますか?
川端
えーと、気象ネタですね。今やっぱり温暖化だとかなんだとかで極端な気象が増えてるって言われるじゃないですか?出てくるのはプチ超能力を持っているような一族がいて、例えば空気中の水蒸気が見えちゃったらどうしよう?とかね。
空見ると温度分布が分かってどのへんに雲ができそうになっているか?とか見えちゃったらその人たちは昔はすっごく重宝されただろうと。「これから戦だ!」というときにそういう人にこれから雨になるかどうか知ってるかどうかで戦法変わって来るじゃないですか?
南部
確かにそうですね。
川端
で、土木工事なんかでも天気ってすごく大事なので昔はすっごく重宝されて利用されただろうけど今は役立たずになってる。気象庁の普通のアメダスとかありますし。でもそういう人たちが今生きてたとしてどんなことをやっているのかな?というふうな物語ですね。だから小さな超能力ものですね。
南部
なるほど、これはやっぱりあれですか?記者時代に気象庁の担当記者になっていたこととかそういう今まで取材の経験値っていうのが作品に生きてる?
川端
あの親しみの湧くテーマだったっていうことはすごくあるんですよ。気象庁の担当記者って当時は台風が来ると夜通し気象庁に泊まり込んで黒板に自分で台風の位置をペタペタって貼って「台風がここまで来ました!」とかって実況してたんですよ。
南部
ええっ、そうなんですか!?
川端
うん、アナウンサーが来てくれるような時間帯っていうのは日中ですんで夜12時から明け方の6時ぐらいまでディレクターと2人で。まあ余談です、余談です。
南部
そういう経験も踏まえての。
木村
なるほど、あとSF読みということですがSFマガジンでも連載を持たれてますよね?
川端
あっ、SFじゃないんですけどね。「ニアSF」SF好きの人は絶対楽しんでもらえるようなロケットの話っていうかな?今「コマーシャルスペース」って言って商業的な宇宙利用っていうのがすごく盛んになりつつあるんですけど。
日本でもホリエモンの「夏のロケット団」とかいろんな企業が立ち上がりつつあるんですね。じゃあちょっとその先、10年後ぐらいを描いてみようじゃないか!というのをやってます。
まあ商業的にロケットを上げるっていうかな?民間企業が宇宙へ進出していくっていうふうなイメージ。
木村
連載の行く先も楽しみですが。
南部
今夜の袋とじでは「Why JAPANESE PTA!ここがヘンだよ日本のPTA」と題して川端さんとともにお送りします。
(中略)
南部
ここからは「セッション袋とじ」です。では、今夜のテーマはこちらです。
木村
Why!JAPANESE PTA!Why!
南部
ここがヘンだよ日本のPTA・・これ今リスナーの方、分かりましたかね?
木村
誰が叫んでいるんですかね(笑)
川端
僕じゃないですよ。
木村
私が叫んでおります、いやー先ほどのPTAの歌すごいっすね。漠然としたスローガン羅列いわゆるポエムであります。まあこのポエミー世界なんですが、しかしポエミーも行くところまでいくと暴力になる、それがPTAの世界だと思うんですけれども。はい、よろしくお願いします。
南部
今夜の袋とじは川端さんにPTAの問題点ですとか不思議なところをどんどんご紹介いただきたいと思います。やっぱりPTAが身近な方もいれば私みたいに結婚もしてなきゃ子どももいないよという人は遠かったりする。
木村
自分が通ってたころの母親がやってるとかですよね。
南部
両親がPTAだったんだなということでいろいろつらつら思い出すっていうことなんですけれども。
木村
私も川端さんとはPTA問題について対談をさせていただいたこともありますし、元々川端さんはこのPTA問題についてパイオニアとしてこの問題提起をされています。私もその議論に関心を持ち交流させていただいたんですけれども。今日はこのPTA問題について議論を深めていきたいと思います。
南部
では、川端さんにお伺いする「ここがヘンだよPTA」1つ目はこちらです。「事実上の強制入会」
木村
こちらなんですけれども、これはどういうことなんでしょうか?
川端
まあ入口問題ですけど、もしもお子さんがいる人が小学校なりに入ったとします。いきなりにぎにぎしく最初の入学式があったあとに、あるいはちょっと後に「第1回保護者会」とかがあったりするじゃないですか?
で、「どんな先生なんだろう?」ってワクワクしながら子どもと一緒に胸を弾ませながら出ていくとそこで行われるのが「皆さんPTAの会員になりました。つきましては今から役を決めます」と、知らない間に会員になっているんですよ。
南部
えっ、「なりました」なんですね。それがもう強制加入っていう・・
木村
強制加入というか自動加入というか・・
南部
それは拒めないんですか?
木村
いやもう確定事項として知らされるんですよね。「あなたは会員です」と。
川端
あまりにも当たり前になっているのでそれを拒むとか「私は入りません」っていうオプションが最初っから周りの人の頭に無い状態。
南部
想定されてない。
木村
会費なんかも給食費と一緒に落ちたりするんですよね。
川端
それは割と多いですね。僕もはじめて給食費と一緒に会費が落ちた段階で「あれ?」と思ったクチでして。まあ役決めのときまでは「後で入会届出すのかな?」とか思っていたんですけどいつの間にか多分小さい字で書いてあったと思うんですけど、何か紙にね。
給食費のために作った口座からPTA会費が一緒に落ちていることを知って「えー、いつ入会したんだ、俺?」っていうのが疑問を持った原点ですね。
木村
まあ普通、入会を申し込んでない団体から会費を取られることってないじゃないですか?当たり前なんですけれども。それがむしろ逆に当たり前に行われているというのがPTAの世界なんですね。
南部
木村さんはそのPTAの入会問題の体験としてはどうだったんですか?
木村
これあるとき言ったらですね、うちの学校はPTAとは名乗ってないんですが、PTA的な会があって配られたんですよ、その会の規約が。そこには全保護者が会員であるって書いてあったんですね。
私、入るって言った憶えもないし規約にただそう書いてあるだけなので、それで加入を義務づけられたら・・要するに「日本国民が全員木村ファンクラブの会員である」って書いたらファンクラブの会員になるのと一緒ですからね。有り得ないじゃないですか!
だから「有り得ないでしょ?違法でしょ?何やってるんですか?」っていうふうに言いに行きました。
南部
えっ、言ったんですか!?うわっ、うわーうわーっ!
木村
そしたら「えっなんで?」みたいな顔をされて議論になったんですね、PTA側で。それで向こうもいろいろ困ったんでしょうね。
南部
困るでしょう。
木村
だって法律的にも・・まあ常識で考えても「加入申請していない団体に加入させられるっておかしいでしょう?」って言ったら、「これはですね・・」って説明が始まったんです。
「『全保護者が会員である』というのはこれはPTAの気持ちを書いたものです。ですからこれは法的拘束力とか法的意味はありません」って説明されたんですね。つまり「これはポエムです」って言われたわけですね(笑)
「ああ、ポエムだったんですか!じゃあ私、会員じゃないんで」っていうふうに言って「じゃあそれで」っていう感じですね。
川端
それがポエムだっていう認識に運営している側、本部役員さんって言いますかね?・・が達したっていうのもこの5年10年くらいの達成度なのかもしれないですね。
僕が同じ疑問を既に役を引き受けていたんで引き落とされてから気付いたクチなので辞めませんでしたけど、聞いたわけですよ役員さんたちに。「なんでこれって入会とか届け出さなくてもみんな自動的に入会になっちゃうんですか?これマズいんじゃないですか?」って言ったら
みんな「はっ?」っていう感じで、「一切それを考えたこともなかった、そういうことを考えるのはあなただけだ」って言われました。
南部
疑問を持つ方が悪いみたいな。
川端
まあそんな感じ?その当時は。でもそのころも僕、世田谷区ですけど世田谷区の教育委員会の社会教育主事さんっていうPTA社会教育関係団体なんでそういうのを面倒を見ている方に電話して聞いたら、「PTAが入退会自由なのは当たり前です」とか言うんですよ。
南部
問い合わせ先ではそう言われたんですか?
川端
だから行政は知ってるんだけど、一般には知られていないような状況でしたね。2004、5年くらいかな?
木村
いや、そうなんですよ。最近になって知られてきたことなので、うちのPTAもなんて言うか「私はこれこれこういう者だ」ということを最初に、つまりPTAと戦っている者だという主旨のことをしゃべったところ、
次のその「ポエムだ」っていうその回までに、どうも調べたらしいんですよね。インターネットの川端さんの対談とか朝日新聞とかの記事とかを見て、「ああ、これはマズい」と多分向こうも思ったんだと思うんですけど。
川端さんの初体験のころはたぶんまだそういう記事が全然出ていなかったので、それなのでPTA側もすごく認識が低い状態だったと思うんですよね。
南部
低いからこそ、何て言うんですかね?強気というか。
木村
そうなんですね、PTAの強制加入に困っている方はぜひ考えて欲しいんですけども。なんで強制加入にできるのか?っていう問題があって、団体って名簿作れないじゃないですか普通申請書がないと。
だって団体の名簿って申請をした人たちの申請書をもとにそれを整理して名簿って作りますよね?なんでPTAが作れるの?っていうことなんですが、それ学校から流されているんですよ実は。
保護者というか一人一人の子どもの名簿をPTAに流すからPTAが名簿を勝手に作れるんですね。でもこれPTAと学校ってそれぞれ独立の団体なので、これもう立派な個人情報の第三者提供になるんですね。
なのでPTAの強制加入を止めさせたい手っ取り早いやり方っていうのは学校側にPTAに名簿を流さないで下さいと。それは個人情報保護条例とか個人情報保護法に違反していますよね?って言ってあげるのが一番良いんですね。
そうすると名簿が止まるのでPTAの側で何人子どもがいるのか?とかどういう子どもがいるのか?って把握できなくなるんですよ。そうすると自然に加入申請書を出させないといけなくなるというこういうことになるんですよね。
川端
でもねそれ木村さんほど説得力を持ってその論を展開できる人っていうのはまだそれほど多くなくて行ってみたけど玉砕しちゃったみたいな人は割といるんですよね。
最近、Amazonのkindle本で割と話題になっている「ただいま個人情報漏洩中」っていうKindle本を作った人がいて、まあ検索してみるといいですけど。その人は自分の自治体で戦った経験をかなり実践的に書いているという評判ですけど、
ただそれが普遍的かどうかは分からないですね。まあいろいろと個別の事情があって逆に論破されちゃったみたいな話もよくあってなかなか困難を伴っていると思います。
南部
確認したいんですけど、1回例えば入って辞めることっていうのはできるってことなんですか?
川端
理屈上では当然できます。
木村
もちろん規約で「入ってから1年は辞めないでください」とか書いてあってそれを納得した上で入ってたとかって事情があればもちろん別なんですけど、
強制的に会員にさせられていたらそれはもちろんそもそも強制加入が無効ですから退会は当然できるというのが一応紙の上・法律の上での議論ですね。で、現実問題としてこれPTAに入らない、ないし退会すると不利益というのはあるんですかね?
川端
うーん、不利益ですね。やっぱりいじめられたりすることは多分に有りうる。
南部
お子さんが?
川端
いや、親が。お子さんまで来る場合もそれもあるかもしれないけど。それはさすがに良識がない場合でたまにあるって聞きますけどね。でもまず1番ありがちなので親がハブられるですとかね。面と向かって非難されるっていうのは普通でしょうしね。陰口も普通でしょうしね。
最近何度がいろんなところで聞くのが、本質的な問題かもしれないのは登校班っていうのありました?小学校に登校するのに地区のグループになって。あれって小さい子もいるから親が一緒についていく場合がけっこうあるんですよね。あれってPTAに丸投げしてる学校がけっこう多いんですよ。
「PTAで順番を決めて」と。で、じゃあPTAを辞めたら「あなたの子どもは登校班に入れませんよ」と言われちゃう。
木村
でも本来はそれはやっちゃいけないんでしょ?PTAって会員は一部かもしれないですけど学校に通う子どもたちみんなのために活動している団体なので、非会員の子どもを排除するPTAっていうのはこれ本来あってはならないし、
会員限定サービスをやる団体なら学校の施設を利用する資格がないはずですよね?だって学校って公共施設ですから。というような問題もあるわけですね。
川端
でも学校側もその辺を誤解しているケースが非常に多くて、例えばある極端な例では登校班に入れてあげません→「じゃあ私が自分が送っていきます」ってなりますでしょ?
それを校長先生に言えば「登校班に入ってもらわなければ困ります」と。学校にNOと言われPTAにNOと言われっていう訳のわからない状況になって非常に困っている方の話を割と最近聞いたことがありますね。
木村
本当にひどい状況ですが、そこで2つ目行きましょう。
南部
では続いて2つ目の問題点です。「非人道的な役員決め」
川端
まあ非人道的なんてこれは僕が書いちゃったんですけど(笑)
木村
これはどういうことなんでしょうか?
川端
いやあのね、やっぱり人の道に外れていることがいっぱい起こるんですよね。
木村
本当に人の道ですよね(笑)
南部
これはどんな具体的にどういう?
川端
あのね、具体的にって言うとやっぱりですねPTAの役って非常に重たいものがけっこうあってもしもその役に当たってしまうと自分の1年間それを中心にしなきゃいけないくらいのことも平気であるんですよ。
南部
そんなに多忙なんですか?役員の仕事っていうのは。
川端
そうですね、場合によってですよ。例えば僕が副会長をやったときは年間400時間以上の外での会合とかでの拘束時間があったっていうのを自分の記録で付けました。
木村
地域協議会っていう地域の集まりとかPTAのもっと大きな単位の集まりとかいろいろあるんですよね。
川端
だからそういうのを避けようとすると、もうこの一瞬を避けるために全力で自分の全人格的な能力を避けるために使う人が出てくるんですよね。そのために普段はここで僕たちは和やかに会話してますけど(笑)それが途端に般若のような顔になり、「あの人はずるい」とか言い出したり・・
南部
えっ、個人攻撃ですか!?
川端
もう個人攻撃も普通に出ますし、逆に「私は病気で・・」あるいは「家で介護をやっていて・・」とか言ったら「そんなの理由にならない」とか。
木村
ものすごいセンシティブなことを喋らされて、しかもそれで叩かれる。
南部
えっ、それは理由にならないっていうのはどういうことですか?
木村
みんながやってるからって。
川端
みんな事情があるんだからって。
木村
そういうふうになっちゃうんですよね。そういう空気の環境の中では。
南部
そうか、誰かがそれをやらなければならないからですか?
木村
だからやっぱりPTAとか見ているとね、日本の人っていうのは「みんなでやらなきゃいけない」「みんなで苦労しなきゃいけない」っていう話に非常に弱いので、
だからちょっと前この番組でも話題になりましたけど軍事的合理性以外の理由で徴兵制とかそれに近い制度をやるっていったときにけっこう日本人って耐性が弱いんじゃないかと思うんですよね。PTA見ているとそう感じるので。
だから軍事的合理性がないという理由で徴兵制はないという人を見ていると、まだあなた方はPTAの話を知らないなと思うんですよね。
川端
あのちょっとズレますけどね、PTAってtwitter検索とかをごく普通に僕はやっているんですけど。すると徴兵制についてすごく面白い意見が乱れ飛ぶんですよ。
例えば今年、朝日新聞とかNHKがPTAについて取り上げて批判的な記事とか番組作ったんですけど、そのときに「朝日やNHKはPTAを突き崩すことによって、崩壊させることによって徴兵制を実現しようとしている」っていう意見が出てくるんですよね。
逆に真逆のやつの方が多いんですけど、たまに9:1、8:2ぐらいの割合で「PTAの崩壊が徴兵制につながる」っていう意見も合って、なぜだと思います?
南部
えー分かんないです、分かんないです。
木村
全然分からないですよ。
川端
「PTAとは日本最大の母親団体だから」ってそのツイートには書いてありました。
南部
でもPTAってペアレント・ティーチャー・・ですよね?
木村
そうです、だからお父さんも先生も入ってるんですけど活動の主体はなぜか実際には女性お母さんなんですよね。
南部
役職ってまずどんな役職があるんですか?
川端
2種類あります、まずね4月にいきなり決めるのが「広報委員会」とか「校外安全委員会」とか下手すると「ベルマーク係」「一輪車係」、「一輪車係」なんて謎でしょ?
南部
一輪車係って何ですか?
川端
たまたま身近にあったやつで面白いので入れたんですけど、一輪車のメンテナンスをする係です。学校の昼休みに子どもたちが使う一輪車。
南部
それをPTAの方がメンテナンス、油差したりするってこと?
川端
まあそういうことですね。「これはもう壊れかけてるから廃棄にしよう」とかね。そういう割と「○○係」というのは割とライトな役割が多いんですよね。「広報委員会」とかあるいは「広報部」とかそういう言葉で呼ばれるのは割と重めの年間を通じてやるものですね。
中にはPTA特有なのが「役員選出委員会」とか「役員選考委員会」っていうのがあったりして、年間を通じて次の年の会長とか副会長とか書記とか会計とかを不公平にならないように不平が出ないようにやり方そのものから考えて選びますっていうようなプロセスがあったりとかするんですね。
木村
ああ、人を強制的に役員にするための団体ですよね。
川端
それがもう1つの役ですよね、4月に決まるのは割とライトな役で年間をかけてじっくり次は誰だって決めるのが会長とか副会長とか書記とか会計とかのいわゆる本部役員と言われるような人たち、だいたいそういう二段構えになっていますね。
南部
うわーーーっ!!
木村
怖いんですよ、この世界は。いや本当にですからPTAというのは・・。
南部
でも「嫌だわ」って正直ね・・「それは引き受けられない」とかね具体的にあると思うんですけど、それ嫌だって言うとトラブルが起きたりとかするんですか?
川端
普通に起きてます。
木村
普通にたくさん起きてますよね。
川端
どうしても嫌な人は極端な話もう学校へ行かないとかもう顔を出さないとかそういう選択肢ももちろんあるんですよ。ただ自分の子どもの学校に行かなくなるような選択をPTAのために選ばなきゃいけない・・
木村
本末転倒もいいところですよね。最近だと大塚玲子さんっていう方が「PTAをけっこうラクにたのしくする本」っていうのを出されていて、ここでそうした問題と問題を解決するにはどうしていけばいいか?というのが書かれていますんで、興味のある方はぜひこれで理論武装をして・・
そうすればこういう負担にならないと思いますが、ではその3つ目です。これもすごいですよ。
南部
「ベルマーク活動」これPTAなんですか!?私、ベルマーク委員でしたよ。
木村
いやこれPTAのためにあるものなんですよね。
川端
それって自分が小学生のときに集めていたってことですか?
南部
集めてて、学校に持っていく。
川端
あっ、でもそれ誰が集計していたかいうのは?
南部
ベルマーク委員だったときは数えてましたよ。
川端
あっ、それは児童にやらせる学校はあるんですよ。
南部
それをPTAの人がやる?
川端
普通っていうか、僕の知る限りそっちの方が多いですね。でまあ児童が数えていたとしてもそれを最終的に出すのはやっぱりベルマーク係みたいなのがPTA側にいたわけですね。
南部
いて、その人たちがベルマークと何かを交換するんですもんね?
川端
うん、そうです。その作業どうでした、お子さんとしてやってると?
南部
数えるのはたくさんあるから大変でしたけど、後ろに模造紙で誰がどれだけベルマークを持ってきたか?っていうのをね、棒グラフで成績表みたいにノルマ表みたいに貼り出していたんですけど、私の小学校は。
川端
それってなんか「南部さん家は少ない」とか言ったら肩身の狭い?
南部
そうです、そういうやつです。それでやっぱり必死になってうちは電気屋だったので電池の上にベルマークってついてたんですよね。なので少ない子に分けてあげたりとかして、そういうのがありましたね。
川端
それが例えば大人になって小学生のお母さんだから30代ぐらいがボリュームゾーンですけど、そういう人たちが中心になってみんなでやってる姿を想像するといかがですか?
南部
いや、ちょっと・・。
木村
しかもこれ時給にするとものすごい安いんですよね。
川端
それね、PTA問題についていろいろ考えている人が試しに計算をしてみたら、100円いかなかったっていう試算をみたことがありますね。時給換算でね。もしもそれを素直に現金で買ったとしたら。
ただね、別にお金にならない価値があるんだったら別に良いんですよ。なんで僕これをあえて選んだんですけどその理由っていうのは象徴的かな?と思ったからなんですよね。
別に好きでやっている分にはいいし、やりたい人が集まってやってるのは美しい活動なんだけど。でも現実的にはすっごく細かくて息をすれば飛んじゃうような小さなベルマークシールを必死に根を詰めて集めるっていうなんかちょっと滅私奉公的な作業があって
木村
それを強制でやるんですよね。
川端
で、実際僕が役員をやっていたときにも「非常にこんなの無駄だ」と。「この前何を買ったかとかっていうのってみんな覚えてないでしょ?」実際に何年も買ってなかったりとか、そんなの廃止しちゃえ!って声があって
そのときに何度も何度も聞いたのは「PTAは係としてこれぐらいの軽作業じゃないとできない人もいるんだから係は残さなきゃいけない」と。
南部
いやー、軽作業じゃないですよー。
川端
でもまあ時間を選ばず自宅に持って帰ってもできるっちゃ、できる。
南部
数えるやつですか?うわーーーっ。
川端
それが参加機会の少ない働いているお母さんへの参加の道を開くために必要なんだっていうなんか本末転倒な・・。
木村
もう本末転倒の嵐なんですけど、ここで4つ目行きましょうか。
南部
「学級運営への負担」これはどういうことですか?
川端
これは割と新しい論点だと思うんですけど、僕はあの、PTAの役員やったときに頭の中がもう学校、学校でいっぱいだったんで小説家として何をテーマにするかって学校をテーマにしようって決めたんです。で、学校の先生を取材しまくって新任の先生の成長物語みたいなのを書こうと思ったんですね。
自分、世田谷区なんで世田谷区以外の利害関係のない学校の先生をいろんなところから編集者の友だちとかね、伝手をたどって10人ぐらい話を聞いたんですけど。そうすると、年のはじめの4月の第1回の保護者会って学級運営の重要なカギなんですよね。
だって保護者をはじめて前にして「私はこんなクラスにしたいんです」って保護者のハートをゲット、学級運営に協力してもらわなきゃいけない。けれど、皆さんの頭の中は100%PTAオンリーなんですよ、そのときから。
木村
どうやって役を免れるかってことですよ(笑)
川端
で、選ぶ側も選ばれる側も、頭の中は一色で先生は5分10分「皆さんよろしくお願いします、じゃあ皆さん今日はPTAの役決めをやって下さい」っていうふうに譲るんですよね。そこから1時間半だとか旨くすれば30分で終わることもあるかもしれないけど、2時間とか掛かったりするわけなんですよ。
僕、最後の方PTA辞めちゃったんですけど。ついこの前その間じゃあ後で先生の話があるっていうから「待ってていいですか?」って自分で原稿を書きながら待っていたんです。2時間経ってやっと決まって。そしたらみんなもうドヨーンって疲れ切って「はぁ終わった・・」ってホッとしてるんですよね。
で、先生の言ったセリフは「皆さんお疲れのようですから、今日はこれまで」っていうので、結局年初の教員と保護者のコミュニケーションってものが4月の時点で有り得るっていうこと自体、もう発想が消えてるんですよね。
10人くらい先生と話したって言いましたけど、そのうちの半分くらいは「そうなんですよ!」って「まさにそうでそれすっごく悩ましいんです」って。
で残りの半分は僕はそれを言うと「ハッ!そんなこと考えてもなかったけどまさにそうです」って言うんですね。これ割と気づいてない人が多いので今日入れさせていただきましたけど。
木村
確かにこれは4月のはじめって言われてみると非常に大事なコミュニケーションの機会ですよね。私の知人もPTAの役員決めのために体育館に集められて先生にドア閉められたことがあるって言っていましたけど。
南部
出ないようにってことですか!?
木村
「役員が決まるまで皆さん外出しません」って監禁罪じゃないか!と思ったんですけども、そんなことされたらその先生と仲良くしようって思わないですよね。
南部
第一印象って大事ですよね、人って。先生に限らず・・なんかむせちゃいましたけど(笑)
川端
なんかね、保護者も素のままで行くと・・たぶん1年生の保護者なんてそうだと思うんですけど。「どんな先生なんだろう?ワクワク!」とか思いながら行くんですけど、それが先生の側としても「どんな保護者なんだろうか?仲良くできるかなドキドキ」とかしてるのが一切そこでは流れちゃうんですよね。
木村
本当に面白かったです。そしてまたちょっと怖くなりましたけれども。今日川端さんに最後に選曲していただいた曲がMr.Childrenの「タガタメ」これPTAが関わっているって・・
川端
まあ関わってなくもないっていうか、重たい曲なんですけど。やっぱり少年事件とか起こると必ずPTAの保護者の気持ちがきしむわけですよね。まあそれを歌った曲なんですよね。
子どもたちを被害者にも加害者にもせずにこの街で暮らすために何ができるだろう?って保護者はずーっと少年事件とか起こるたびに問うわけですよ。それごとにPTAって組織的にギュッと固まるんですよね。なくしちゃいけないっていうドライブがかかるんですよね。
特にPTA連合とか、正しいじゃないですか?圧倒的に正しい。でも、悪いけど今のPTAの仕組みじゃ子どもたちを被害者に加害者にしないために大人たちが被害者に加害者になって子どもにもときたま加害しているんじゃないか?っていうふうな気がしてならない。
木村
なるほど、深いですね。いや本当に今日は面白いお話そして今後また考えていかなきゃいけないお話を伺うことができました。ありがとうございました。
(了)
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