宇多丸が聞く「音楽にお金を払う時代はもう終わり、なのか?~ヒップホップ最前線~」(1)

2012/02/22

FREE INSIDE OUT タマフル 宇多丸

t f B! P L
今回は、ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

2012年2月4日放送・サタデーナイトラボ
「最新USA HIPHOP特集」(前編)を起こします。


音声はこちらから



宇多丸
今夜お届けする特集はこちら
「音楽にお金を払う時代はもう終わり、なのか?
今、アメリカのヒップホップ最前線では何が起こってるのか特集!」

さあ、ということでね。
あの今までタマフルで何回かやってきた
まぁビギナー向けヒップホップ概念的な特集はやってきましたけども。

今夜はもう逆に最前線の具体的な話でありですね、
音楽業界全体を揺るがすような構造改革が起きつつあるのか?みたいな
最前線事情をお届けして行きたいと思います。

まぁ皆さんねこの番組を聴いている人だったら、分かる話だと思います。
テーマは今にヒップホップシーンを語る時に欠かせないキーワード

「ミックステープ」
そして
「フリーダウンロード」

この2つの現象を通じてアメリカのヒップホップのみならず
音楽界全体の現在そして未来を考えていきたいと思います。

レクチャーしていただけるのこの方たちです。
まずは、この番組ではね宇多田ヒカル特集とかチェッカーズ、レベッカMIXなどなどでも
もう既にお馴染みでしょうヒップホップDJのDJヤナタケです。

ヤナタケ
イェーーー!



宇多丸
ヤナタケ軍団がね・・、他にこれからご紹介しますけど。
そもそもはヤナタケ、チェッカーズMIXで前出てもらった時に飲みに行って、
で色々と熱くプレゼンして頂いて是非是非というなね、時勢に至ったということなので。

なんかものすごい気合いを入れてきて頂いてるのは良いんですけど、軍団の皆さんね。
向こうでもずーっと作戦会議みたいなのをしてるし、怖いんですよ!

ヤナタケ
怖くないじゃないですか!一生懸命やってんですよ。

宇多丸
僕も生徒として今日は教えて頂きたいと思いますけども。
はい、よろしくお願いします。

そしてこの後は皆さん全て番組初登場の方たちなのでご紹介させて下さい。
まずは、ヒップホップ系ライターであり、ブログその名も「HIP HOP UNCHIKN」で
最新USのヒップホップ情報をレポートしてくれている渡辺志保さんです。


渡辺
はい、はじめましてよろしくお願いします。
渡辺志保です。

宇多丸
おいおいね、ひとりひとり先生としてねお話を伺っていこうと思いますが。

そして続いて現在もっとも動向が気になる若手ラッパーのひとり
AKLO君です。どうも

AKLO
どうも、AKLOです。

宇多丸
AKLO君ね、ちょっとすれ違って挨拶程度はありましたけど、
がっつり話すのは始めてなんで、今日はもうちょっと私「四十の手習い」と言いますかね・・。
よろしくお願い致します。

AKLO
そんなTOO MATCHご謙遜を(笑)

宇多丸
それこそAKLO君のフリーダウンロードものを余りにも聞き込んで・・聞きすぎて
もう尊敬が高まりすぎてて・・この状態でございます。
あの本当、よろしくお願いします。

最後にtwitterでアメリカの最新ヒップホップ情報を発信し続け
1万2千人以上のフォロワーを誇るアカウント「HIP HOP HYPE」の中の人
いいですか?この紹介の仕方で。


中の人
はい、大丈夫です。
一応「中の人」ということで今は通っております、世間的には。
狭い世間ですけれども・・。

宇多丸
呼ぶ時はどうすれば・・、「中の人」?

中の人
「中の人」で大丈夫です。

宇多丸
ああ、わかりました。
はい、というこの4名でお送りしたいと思いますが、
何故この4名か?というと皆さんは今ある番組を一緒にやられてるということで、
ちょっとヤナタケから説明をお願いします。

ヤナタケ
はい、m-floの☆Taku Takahashi君と音楽配信サイト「wasabeat」が
共同で始めたインターネットラジオ局の「block.fm」っていうのがありまして、
まぁ毎日やってるんですけども。



で、Takuとは昔からの知り合いで、
「ちょっとヒップホップの番組やらない?」なんて言われて
大体結構普通にMIXのショーやってるんですけども、
ちょっとそういうのはUSTREAMとかそういうとこのメディアでやってるんで、
ちょっと違う感じ、逆に言うと昔っぽい感じ?

宇多丸
ちゃんと紹介して曲掛ける?

ヤナタケ
ちゃんと紹介して、はい。
で、ちょっと歌詞の紹介とか番組っぽくしたら面白いんじゃないかな?と思って。

宇多丸
良いんじゃない!そういうの欲しいよね?
今ほらそういう専門誌もないし、ヒップホップメディアは一番欠けてる所だと思いますんで。

ヤナタケ
そうなんです。
で、たまたま良いメンバーに出会ったんで、
本当のラジオ番組っぽいヒップホップ番組をやってみようかな?と。

宇多丸
べしゃりの方はねもう!すっかりもう腕上げて(笑)

ヤナタケ
何言ってんですか!僕は全然なんですけど、
他のメンバーがだいぶ良いしゃべりするんで期待して下さい。

宇多丸
という番組、番組名が「INSIDE OUT」っていう。
それは「block.fm」の中で月2回やってる?


ヤナタケ
そうですね、第1・第3月曜日の24時からやってます。

宇多丸
最新USのヒップホップ情報をがっつりと紹介ということで。
これはもうだってその辺のオシャっ子FMとか聞くよりも最先端。
他じゃやってない級のをやるわけですよね?

いいんですか、これ?
TBSラジオから一気にそこ飛んじゃっていいんですかこれ?
AMからその知識的に。

ヤナタケ
いやいやそれをでもね、ここに紹介させて頂きに来たわけですね。

宇多丸
むしろそこをもうぶつけていいかな?と思ったんですよね。
皆さんこれ聞いてる方はヒップホップリスナーではないどころか、
あまり普段全く聞かないような人もいるけど、むしろ一番とんがったところの方が
刺さるんじゃねえの?っていうそういう目論見もありまして。

ヤナタケ
でもこの番組聞いてる人たちはやっぱりとんがってる人が多いんで、
とんがってる先は実はやってること同じなんですよ。

宇多丸
あの最終的にはね、皆さんが見ているような色んな現象と
重なるようなところがあるかもしれませんので、
ちょっと楽しみにして頂きたいと思います。

ということで、そんな「INSIDE OUT」クルーの皆さんをお迎えして
今夜はこんな感じで薦めていこうと思っています。3部構成です。

第1部 「ミックステープって一体何なんだ?」
第2部 「日本にもミックステープ・シーンはあるのか?」
第3部 「何故フリーで出さないといけないのか?~アメリカのヒップホップ最新事情」

となっております。
そしてこうした「ミックステープ」や「フリーダウンロード」の話を通じて、
「音楽にお金を払う時代はもう終わりなのか?」
タイトルも敢えて挑発的な命題を立てさせて頂きましたが、
これに関してまぁちょっと色んな考えを進めていこうかな?と思っております。



素朴な疑問ですよね?
「ダータでしょ!どうすんの?」って思う人一杯いますと思うんで。
それでは皆さんよろしいですか?先生!先生方!

それでは早速始めたいと思います。
まずは第1部!

第1部 「ミックステープって一体何なんだ?」

宇多丸
ということで、第1部の先生は渡辺志保さん中心にお願いしたいと思います。

渡辺
よろしくおねがいします。

宇多丸
えーでは、ちょっとまず根本的な素朴質問から行かせて頂きたい。
「ミックステープって一体何なんだ?」ってまさに、どういうものなのか?

渡辺
まぁヒップホップシーンの中では昔からあるツールなんですけども、
元々80年代後半くらいにヒップホップという音楽ジャンルが台頭してきた時に
DJが如何に自分が例えば「レアなレコード持ってるぜ!」とか
「俺はこんなに上手くスクラッチの技をもってるぜ!」っていうのを
自慢する用の営業ツールだったわけですね。

でもそれがだんだん路上とかクラブとか、
あとレコードショップとかで売られる様になっていって
だんだんそれに商業的価値が当時は付いていたと。

宇多丸
やっぱそれ自体が良いミックステープがあったり。

渡辺
はい、そうですね。
あのまぁ別に正規のCDがあったり、レコードがあったりするわけですけども。
そういう事とはまた別にですね、ミックステープというのが
脈々とリリースし続けられておりまして、
で、例えば「あのDJのこのミックステープが超ヤバイ!!」というのが
ニューヨークから日本まで飛び火していくような・・。

宇多丸
ミックステープなんかいっぱいお店で・・。
それこそ洋服屋さんとか行ってもズラーッと並んでて、
そういうのを見繕って買うっていうのは僕の頃ありましたけどね。

渡辺
私ももちろんお気に入りのミックステープとか
もうテープすり切れるまで聞きました!みたいなテープがあるんですけども、
もちろん宇多丸さんも思い出の?

宇多丸
なんか、それ思い出してたんだけど、
あんまりオーソドックスなのが上がらなくて・・。
DJ Spinbadの80’s MIXのやつがあったじゃないですか?


渡辺
ああ、超クラシックと言われる・・。

宇多丸
ジャケが「ブレックファースト・クラブ」の奴で。
もうジャケで「あら素敵!」って思って。
で自分で80’s DJとかもやったりするんですけど、
やっぱりSpinbadのヒップホップテクがありますもんね。


渡辺
超絶テクが・・。
そうですね、そこでももう如何にSpinbadが
ヤバいテクニックを持っているか?というのをガツンとリスナーは来るんですけど、
それが元々ミックステープだったんですね。

DJにとっては「メディア」
自分から発信できるメディアをですね、おうちでしこしことカセットテープにダビングして
それを捌いていたというのが、そもそものミックステープだったと。

宇多丸
それが今でもミックステープっていうか、その後はメディアが変わってくるわけでしょ?
ミックスCDになり・・・というような歴史が。

まぁでもテープってよく考えたらさぁ、
例えばさぁヒップホップのラップのレコードがさぁ曲としてリリースされる前から、
その前に流通してたのは、ヒップホップの一晩中DJがやっているものの様子を
それでその中でマイク握ってグランドマスター・カズかなんかがやってる

それを聞いて、RUN DMCは例えばこういうルーティンがあるんだっていうのを
なんか練習して、要するに最初からテープをしているのが、
しかもアンダーグラウンドテープとか、それが流通しているっていうのは
ある意味ヒップホップの成り立ちそのものですよね。



渡辺
そうですよね。
本当に自分たちが面白いオリジナルなものを作るか?っていうところで
切磋琢磨というか、とにかくスピードを争って表現をしていくっていうのも
ヒップホップの魅力でもありますんで。

宇多丸
あと曲単位で聞いて、こう「拝聴します」っていうよりは、
色んな曲が流れたりとかそういう全体の場がさぁ、場がヒップホップだから、
っていうので多分一番把握しやすいみたいなメディアなんでしょうね。

渡辺
ごちゃ混ぜ感みたいなものが一番ダイレクトに伝わるものが・・。

宇多丸
あと、週刊誌感(笑)

渡辺
そうですね、週刊誌感(笑)

宇多丸
まさにゴシップがそこで展開していくっていうね。

渡辺
そうそうそうそう。
でそこで、「ビーフ」というラップ攻撃のね。

宇多丸
「ビーフ」っていうのは、いさかいと言いますかね。
お互いの。

渡辺
ラップでお互いを攻撃し合うみたいな・・。

宇多丸
「あいつとあいつの間にビーフが始まったよ!」なんつって。
そうすると曲でそれぞれやりあったりみたいなね、事があったりすると。

で、ミックステープがそうやってヒップホップのそもそものところからありましたと。
そしてその後どういうふうに進化していったか?

渡辺
90年代に入ると、だんだんヒップホップラジオというものが
業界の中もでものし上がってきて。

宇多丸
ラジオ局で1日ヒップホップ流している。

渡辺
そうですね。
日本とは違ってアメリカのヒップホップ専門局っていうのが
ドンドコドンドコ出てくるんですね。

宇多丸
アメリカのラジオ局はね、完全に細分化されてますからね。

渡辺
そうなんですよ、日本の有線っぽい感じなんですけど。
そんな中でもちろん人気DJが出てくるわけですよね。
そうすると、レコード会社のプロモータの人とか、
あとはアーティスト本人が人気DJのところにどこにも出ていない新譜とか
トラックを作る時間、オケと作る時間がなかったので、
もうありもののオケにちょっとラップしてみましたみたいなデモ音源みたいなものを
直接渡しに行くようになるんですよ。

そういうものが貯まると、
DJの奴らは「俺はこういうのを持ってるぜ!」って言うような感じで
それをまたまとめて、当時はCDですよね。テープはだんだん廃れれてきたのでCDに焼いて、
それをやっぱり正規のCDショップではなく、ストリートとか
そういうさっき申し上げた通り、服屋などで売っていくわけなんですね。

宇多丸
そこがちょっと不思議なあたりというか、
たぶん門外漢には不思議なあたりとしては、
「それって違法なんじゃないの?」みたいな。

渡辺
そうなんです、違法なんです。
ただ、こう我々の免罪符的な言葉としては、
「これはプロモーション用です!あくまで!」と。

宇多丸
まぁラジオ局で例えばこの番組で曲を掛けるとかと同じようなことですよ!と。
しかも実際にそうやって機能してるからっていう事ですね。
進化していったと、それが大体?

渡辺
90年代後半から2000年入ってからですかね?
2000年に入ったらそのスピードがどんどん速くなっていって、
大体ヒップホップはそういう形が多いですけど、1DJ1MCみたいな感じで、
宇多丸さんにはDJ JINさんがついてるみたいな感じでですね、
お決まりのタッグが出てくるんですね。



そのタッグでどんどんミックステープをめちゃくちゃ早いスピードで
リリースしていくようになるんですよ。
同時に、スピード重視のためにありもののオケを使ってラップをし始めるんですけど、
それが「ビートジャック」と言うふうに呼ばれるようになりまして。

宇多丸
人の曲のビートを使って、上でラップしちゃうと。

渡辺
はい、そこで台頭していったMCが一人いまして、
リル・ウェインというラッパーの男の子がですね、いるんですけど。
彼はもうね、とにかく早いスピードで曲をミックステープ上で発表していくんですね。
となると、どのミックステープを買っても彼の曲が絶対入ってるんですよ。

宇多丸
「ああ、あいつ物凄い!どこにも入ってるな!」と。

渡辺
でもうそれこそ一から録音してる暇は無いので、
それこそありもののオケの上にどんどん自分でラップを乗せていく。
それをどんどんミックステープで発表していく。
というかたちでのし上がっていって、実際彼が待ちに待ったアルバムとしてリリースした
「THE CARTER Ⅲ」なんですが、初週100万枚をいきなり。



宇多丸
もう既にデビューする前にミックスCDでもう名前は知れ渡ってる、
スキルは知れ渡ってるということだったんですね。
その状態での物凄い高いスタートラインだったってことですね。

渡辺
元々メジャーデビューはしていたんですけど、
それとは別にそのメジャーのスピードとはまた別にぐいぐいアンダーグラウンドで
名前を売って成功したと。

宇多丸
あとやっぱさっきのヒップホップの成り立ちもそうだけど、
曲っていう概念がさぁ、たぶん普通の音楽より
なんて言うの?希薄っつうかさぁ・・。

渡辺
そうですね、薄いですかね。

宇多丸
それこそ、人の(ビートの)上でもやっちゃうし、
ただのバースだけでもボンボン、バースっていうのはつまり1番だけラップしますとかでも、
どんどん出しちゃうし。

元々ヒップホップの成り立ちがそういうものに近かったり。
要するに、曲って体裁が・・、1番があって2番があってっていう事のほうが後から出来たから。
むしろ先祖帰り的というか・・、元々やってたことっていう感じもあるかな?

渡辺
リル・ウェインとか特にこうサビがないんですよ。
メロだけをただ延々とラップしていくとか、
メロ何小節だけ録音したものをそれも自分の曲としてバンバンバンバン
アンダーグラウンドで発表していったという・・。

宇多丸
リル・ウェインはしかも普通のライン自体がキャッチーだからっていう事でね。
「もう全部サビです」みたいな。

渡辺
そう、本当そんな感じです。
それが2003年とか06年くらいまでそういった感じでして。

宇多丸
でこれミックスCD、形態としてはCDになったけど、
その後は当然インターネットに・・。

渡辺
そうですね、同時にYouTubeが出てきたりとか、
MySpaceの登場によって素人でも簡単に自分の作品を発表する場っていうのが
インターネットに出てきたわけですよね。

まぁ日本でも本当に「ニコ動」からヒットが生まれるとか、そういう事があると思うんですけど、
アメリカももちろん同じで、しかもヒップホップの楽曲って
ロックバンドとかだと皆でスタジオ取って各パートが集まって皆で録音しないと
曲ができないんですけど、ヒップホップってパソコン1台で曲ができちゃうんですね、今や。

パソコン1台で自分でオケを作って、自分で録音して声に吹きこんで、
それを自分でYouTubeとかMySpaceとかにアップすると。

宇多丸
作るところから出すところまで全部
この薄い、あのほとんどの人がエロ本として使っている、あの!

ヤナタケ
そんな事はないです!!!

宇多丸
そんな事はないか(笑)
エロ本として使いがちなあの機械を使って!

渡辺
そうです、あの機械を使って自分の机の上で
世界中に配信できるわけですから、「こりゃいい!!」と。
でもって、自分がメジャー契約なんか出来ないようなインディーのアーティストはもう
「待ってました!」とばかりにそういうふうにどんどんどんどん
YouTubeとかMySpaceで自分の楽曲を発表していくようになるんですね。

でもって、擬似アルバムみたいなものも作るわけですよ。
こう12曲録ってアルバム作って見ました!みたいな。
それをCDではないので、じゃあ先輩たちが使っていた
元々あった「ミックステープ」という言葉を使って
「インターネットミックステープ」という形で出しましょうよ!と。

宇多丸
ネット上で並んでいるものを「CD」と言うのは抵抗があるけども、
「ミックステープ」なら、要するに出だしのところに戻るなら・・。

渡辺
CDって書いちゃうと、ここクリックしたら課金されて、物が届いちゃうんじゃないか?と。
ではなくて、クリックしたらダウンロードが始まってMP3ファイルになって、
自分のデスクトップに落ちてくると。それを「ミックステープ」とまた呼び始めたと。

宇多丸
なるほどね。
「なんでテープなんだろ?」って思う人はそういうことだったんですね。

渡辺
でもってド新人だから、例えば5ドルだったら誰も買わないし、
1ドルでも誰も買わない。

宇多丸
そうだよね!だってデモテープみたいなことだからね、本来は。

渡辺
本当にその通りで、だったもう「無料でだしちゃえ!」と。

宇多丸
「それでもいいから聞いてくれ!」っていう奴がいっぱいいるわけね、山ほど。
そういうのが出るようになったと、そして今ですけどどういう感じなんでしょう?

渡辺
今なんですけども、
どんどんどんどん侵食していきまして、やっぱり量が半端ないんですね。
個々のMySpaceとか発表していくと、やっぱり効率が悪いということで。

宇多丸
そうだよね!山ほどある中でそこにたどり着かないもんね。

渡辺
そうですよね、一人ずつなかなか収集出来ないので
今やポータルサイトが出来ていて。

宇多丸
それはそのダウンロードするミックステープが
いっぱい並んでいるサイト?

渡辺
そういうことです。
あとからまたご紹介があると思うんですけど、「Dat Piff」というダウンロードの
ミックステープ専門のサイトが出ておりまして。


宇多丸
ちゃんとジャケがあってね・・。

渡辺
そうですね。
あとはコメント欄とかダウンロード回数とかもパソコンにもちろん
ネット上の掲示板として機能しているので、またそこから生まれるヒットがあったりとか。

宇多丸
そこに行って、「あ、これが今こんなに人気があんのか!」
「この辺アツいみたいだから聞いてみよう」みたいな。

渡辺
同じく2ちゃんみたいに掲示板のコメント欄がすごい炎上しちゃうことも・・。

宇多丸
さっき言ったようにね、それこそ「ビーフ」だ「ディス」だって
盛り上がる文化もあるから、はいはい。
だし、スキルを見てるジャッジしたりってことですよね?
「こいつ下手じゃん!」とか。

渡辺
そういう世界がですね、今できてると。

宇多丸
それがもうとにかくものすごい盛り上がっていると。
それがもうヒップホップシーンを回してるみたいな感じになってるという事ですか?

渡辺
そうですね、はい。
でもってミックステープ発のヒット作というのがどんどん出てきておりまして、
例えばですね、ドレイクというラッパーがいるんですけども、
彼は元々カナダはトロント出身の子役だったんですね。

なんですけども、まぁ自分が好きでラップをやっていて、
彼が2009年に発表した「So Far Gone (mixtape)」というこれもフリーで発表されたミックステープがあるんですけども、
その中に入っていた1曲がですね、大ヒットするわけなんですよ。


宇多丸
それはミックステープ界で大ヒット?

渡辺
で、「Best I Ever Had」という曲なんですけども、
ミックステープを聞いたヒップホップリスナーたちが「この曲やべー!」となって
だんだんラジオでエアプレイされるようになったんですね。

アメリカのビルボードって日本と違って、
ラジオのエアプレイも順位に入ってくるし、
あとはもうダウンロード、itunesはじめどのサイトでダウンロードされたかっていう
ダウンロード数もカウントされる。

宇多丸
なんだよー!!カウントして欲しいね!!
色んな意味で!!

渡辺
日本はどうしてもバーコードピッってやった奴しかカウントされないんですけども。

宇多丸
うちの番組もカウントして欲しいもんだよ!!
この数字的なものね、これ(怒)

ヤナタケ
Podcast的なね!いつも1位ですよ!!

宇多丸
オイオイオイ!

渡辺
というわけで、あのCDとしてまだ出ていないにも関わらず、
ビルボードで・・。
出てないのに、ラジオでかかってるだけなのにビルボードでいきなり2位になりまして、
最終的にはその年のベストラップソングに選ばれてと。
それで逆にユニバーサルが「ちょっとお前、こっち来いや!」となりまして、
メジャーデビューしたと。

宇多丸
その時点では契約が無くて。
ああ、そうなんだ!
そういう成功のケース、無料で聞かせて
そこはお金にならないわけじゃないですか?
そこで評判を拡げて、リスペクトとかそういうのを高めて、
それでドンッとやったら、やっぱりボンッと行くという例が出来たんだ。

渡辺
もう本当、駅前のストリートミュージシャンと同じような感じで。
最初はもう無料でライブを路上で。

宇多丸
そうだよ!ゆず!!
ゆず、タダで見れたんだもんね!本当ですよ!


渡辺
今やもうねホールツアーや武道館なり、本当にそれと同じ図式ですね。
それが今やインターネットで出来る・・。

宇多丸
あ、そうか。
場がインターネットに変わったんだと思うと分かりやすいかもしんないね。

はい、ということで。
こんな様な話をもっとガツンと読みたいの人のためにオススメの文章があるとかないとか・・。

渡辺
はい、あるとかないとか何ですが。
私もこれで相当勉強させて頂いたんですけど、
より詳しく知りたい方はですね、超大御所大先輩ライターの小林雅明先生が書きました
「ミックステープ文化論」という電子書籍、アプリケーションですね。

宇多丸
これもまた「ミックステープ文化論」が電子書籍っていうのが良いじゃないですか!

渡辺
良いですよね、最先端!
そういった電子書籍が「音専誌」という無料アプリからなんと350円で。


宇多丸
ちょっと!こっちも地殻変動起きてるんじゃないの?本も!

ヤナタケ
これ本当に面白かったんでもう是非!!

宇多丸
だったら何故、小林さんを呼ばないのか?というと、
しゃべりがボソボソしてるっていう・・(笑)
それがまた味なんだけどね。

渡辺
さすが電子書籍という感じで、
例えばアーティストのところをクリックするとそのアーティストのYoutubeに飛んだりとか、
そういった仕掛けもありますので、よりダイレクトにミックステープを・・。

宇多丸
ヤバイよね!
これ呼んでてさぁ気になってプッってやったらね、
そのまま手に入っちゃうんだもんね。
で、皆さんがエロ本として使っているあの細い・・(笑)

渡辺
エロからミックステープまでをカバーできるということなので、
是非とも呼んでみて下さい。

宇多丸
では、ということでここまでの話を受けて
ちょっと渡辺さんに1曲選んで頂きたいと。
まぁあれですかね?さっきのドレイク・・。

渡辺
是非ちょっとこれ彼のことだったり、ヒップホップを知らない皆様にも聞いて頂きたい。
曲としてはもうスイートなラブソングなんですけども、
先程も説明しました通りですね、これがホットなのか!っていうのを。

宇多丸
時代を変えた1曲、象徴的な1曲でもあるし。
では曲紹介、渡辺さんお願いして良いですか?

渡辺
ではドレイクで「Best I Ever Had」



宇多丸
さぁということで
最新USヒップホップ動向の特濃講義、第1部が終わったわけですけど。
この後、日本ではミックステープね、今まで説明して参りましたけど
ミックステープ文化、日本ではどうなっているのか?
AKLOさんに話を伺っていきたいと思います。

(2)に続く

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文字起こしをしたり、自分の見聞したことを書いたりしている会社員です。

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