武井壮が語る「ビブリオバトルに参加して参りました」

2014/04/12

ソクラテスの弁明 たまむすび ビブリオバトル 赤江珠緒 博多大吉 武井壮

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今回は2013年11月27日放送「赤江珠緒たまむすび」
「おもしろい大人」武井壮さんの回
起こしたいと思います。


武井
えーとね、今週は「ビブリオバトル」というものを
紹介したいんですけどご存じです?

赤江
ビブリオバトル?
いや、はじめて聞きました。

武井
毎回、人にフォーカスを当ててたんですが
ちょっと新しい戦いが始まったぞということで
最近流行りのバトルがこの「ビブリオバトル」っていうやつらしくてですね。

まああの・・本ですよね。
皆さん本をお読みになります?
小説とかいろんな本。

大吉
あんまり僕は読まない方ですけど

武井
そのなんか今「本離れ」が進んでいると、大学生なんかはね。
それをまあ解消しようかみたいな流れもあったりとか

また本という文化をもう一度高めたいという思いもあるんでしょうね。
で、本を人々が紹介し合って・・

赤江
ちょっとこれ詳しくご説明しましょうか?



ビブリオバトルとは、
ビブリオは書物などを意味するラテン語由来の言葉で
立命館大学の准教授が考案したそうですね。

ゲーム感覚を取り入れば新しいスタイルの書評合戦であり
知的スポーツと言ってもいいのではないか?と。
ルールがあるんですね。

発表者は自分が面白いと思った本を持参する。
1人5分間でその本の魅力を紹介するんですが
原則、資料配付などはせずに言葉とジェスチャーのみ。自分の身体ひとつで。

そして発表終了後は2分間他の発表者や観客からの質問を受けて
本の内容について更に説明をしたり、理解を深めてもらうという時間もありまして

最終的にはどの本が1番読みたくなったかを基準に
発表者を含む参加者全員が投票し、1番読みたかった本
チャンプ本が決定するということだそうです。

大吉
そうか、自分以外の本に投票するから
けっこう公正な審査になると。

武井
まあこう弁論大会みたいな感じじゃないんですけど
自分のオススメをいかにプレゼンテーションできるか?っていう
おしゃべりの戦いなんですよね。

赤江
ああ、でもこれ熱がこもってないと伝わらないですよね。

武井
だからそこもお客さんがいてやるものが多いので
その人たちにどのぐらい伝わるか?っていうのが
そこがけっこう大きくてですね。

なんで今日これを紹介しようと思ったか?というと
武井壮、この「ビブリオバトル」のエキシビジョンマッチに
参加して参りました。

大吉
何でも仕事受けすぎじゃないですか(笑)
バトルと名前がついたからって言って行ったんじゃないですか?

武井
行っちゃいました、まさに大吉さんがおっしゃる通りに
バトルだって聞いて行っちゃったんですけど。

早稲田大学の「早稲田祭」っていう学園祭で
このイベントをやるというんで、
「全国大学生協連」っていうね・・

大吉
いわゆる「生協」?

武井
ですかね、が実施している「学生生活の実態調査」みたいながありまして
その中で大学生の4割くらいが全く本を読んでいないと。

赤江
えっ!4割も!!

武井
なんかアンケートとかそういうのが出たんでしょうね。
読書時間も年々減り続けているということで
このイベントをやるということで、それで「なんで俺なんだ?」と。

そしたら彼らの選考委員さんの言うには
武井壮が本を読んでいるイメージが全くないと

赤江
まあやっぱり肉体の方にね。

武井
パブリックイメージ的にね、肉体派なので。
「本なんか読んでねえだろ」と。

そんな人にこれをやらせたらどうなるのか?
っていうのをたぶん見たかったんでしょうね。

確かに僕は大吉さんと同じように
そんなにガツガツ本を読むタイプじゃないんですよ。
やっぱりそんなに時間もいっぱいないし。僕はどっちかというとマンガ派。

赤江
武論尊先生大好きですもんね。

武井
だからずっとマンガのストーリーとかに心打たれていくタイプなんですけど
いくつか自分の人生の中でも何冊か自分の人生を決めるきっかけになった本
みたいなのがあるんですよ。

大吉
それは立派なもんですよ。

武井
だからそれを今回は持って行こうってことで、何の本を紹介したか?

赤江
何の本を武井さんはご紹介したんですか?

武井
紹介させていただいたのは「ソクラテスの弁明」という本でして

赤江
あら?哲学関係?

武井
プラトンっていう哲学者の方が著者で
プラトンはソクラテスの弟子なんですね。

彼がソクラテスが最後ギリシャから死刑判決を受けるんですけど
アテナイというところでそれで行われるんですけど。

その死刑に至るまでを彼は死刑になってもいいよっていうような話を
どんどんどんどん国の裁判で弁明していくんですけども
そのいっさいがっさいを克明に記した本なんですよ。

これは中学校の先生にオススメされまして、
中学のときにクロカワ先生っていう道徳の先生がいたんですけども
僕はその先生が大好きで

道徳で「どう人は生きるべきか?」みたいな話をすごいしてくれるんですよね。
その先生に触発されて「この本は武井くん是非読みなさい」と
で、読ませていただいてから本当に僕は衝撃を受けて

この本で言われていることを引き抜いて
2つのテーマに沿って自分の人生を進めようという時期があったんですね。

大吉
中学生で?
中学生が読むにはちょっと早すぎない、これ?
「ソクラテスの弁明」って。

武井
確かに早いと、文章形態も昔の言い方をすごい多用してるんで
最初わけ分かんなかったんですけど、でも辞書引きながら
いろいろ考えながら読んでたら言いたいことはすごいよく分かる本ですね。

そんな本を今回紹介したんですが、
今回のエキシビジョンマッチの対戦相手
これがなかなかすごくてですね。

ワタナベさんという読売新聞の主任研究員
まさに書のプロみたいな方がいらしゃっていて
あとイシイくんっていう早稲田大学の学生さん

この3人でプレゼンテーションを行ってバトルしようと

赤江
ワタナベさんは何を?

武井
ワタナベさんは「八日目の蝉」
これは有名な本ですよね。
角田光代さん原作の本をプレゼンテーションされて

このイシイくんは伊坂幸太郎さんの「砂漠」という本ですね
これを空っぽな自分みたいなのとなぞらえて
砂漠みたいな自分なんですよしながら進めてたんですけど

学生らしいちょっと初々しい感じのプレゼンテーションで
途中で5分って言われてるんですけど、4分くらいで話が終わっちゃって

「えーと、あの・・えーと」なんつって「1発芸やります」なんつって
1発芸やり始めちゃった、で芸人志望なんですよ。
芸人になりたいって言うんですけどまあまあがっちりスベってました。

大吉
いやいや、それはねまだ評価できる段階ではないので(笑)
でもこれ読売新聞のワタナベさんはがっちり来るんじゃないですか?

武井
がっちり来てましたね。
いろんな他の本も引用しながら、
角田さんのこういう作品が好きだっていうのと

なんだっけな?今の世相みたいなのと照らし合わせていろんな話をしつつ
この「八日目の蝉」っていうのを皆さん読むべきだよみたいな
ちょっとフワっと遠回りな・・

内容はあんまり事細かに説明しないんだけど、
この本がどうして読まれるべきかそういう説明をされてたんですね。
だからちょっと3人とも違うアプローチだったんですよ。

でまあ武井壮の「ソクラテスの弁明」なんですけども

大吉
問題はここですよ。

武井
武井壮が「ソクラテスか!」と皆さん最初はクスクス笑ってたんですよ。
観客の中も、「そんなところあるの?」なんつって言ってたんですけど
ここでも今日、軽く皆さんにプレゼンしたいなと思いますよ。

赤江
読みたくなるかどうか、武井さんのを聞いて。

武井
まずこの「ソクラテスの弁明」っていうものに
僕が何故共感を抱いているか?っていうと
僕の人生のテーマみたいなものが2つありまして

それは1つはやらなきゃいけない、しなきゃいけない
これやるべきだってことよりもやりたいことをやって生きると

やりたいことをする時間を自分の人生の中で出来るだけ長い時間とりたいと
やりたいことして生きるっていうのがまず1つなんですけど

もう1つが毎日自分史上最高っていう
毎日自分の人生の自己ベストを更新していくっていうのが
僕の人生のテーマなんですけれども

この2つのテーマを僕の頭の中に導き出してくれたのが
この本なわけですよ。

それでソクラテスというのは「無知の知」という言葉をご存じですか?
彼はね当時ギリシャにいた知識人と言われる人たちが
「俺はこんなことを知ってる」「俺はこんなに物知りだ」ということを

いろんな人に教えたり、例えばお金儲けの話を人に
たくさんしたりとかする人が沢山増えちゃって、
昔の良かった頃のアテネが腐ってしまうんじゃないかと憂いまして

その人たちのところに出向いて、
「あんたたちは物知り顔で話をしているけれど、ものを知ってるって思っちゃってるから
 自分がまだまだものを知らないということを知らないから、そんなに賢くないよ」と

「ただ俺はあんまり物事あんまり知らないと思ってるから
 いつまでも本当に自分が知りたいと思ってることを知り続けるということを
 探求し続けるから、俺が一番賢いよ」と

「だからお前らなんて本当に知識人じゃないよ」っていう
ちょっと荒っぽい言い方ですけど、そんなことを説き伏せて回るわけですよ。

それが「俺は知らないことを知っているから『無知の知』だ」と
無知を知っているからそれが知識なんだよっていうことをね
説いて回るんですけど

彼の周りにプラトンだとかそういった哲学者とか
そういう知識的な探求者なる人たちが集まって行ってしまったことを
反逆のようにとらえられてしまうわけですね。

それで国家を扇動しているんじゃないか?みたいなことを言われて
恨みを買って裁判に掛けられたりします。
「お前死刑だ」とそんなことをして回るなんて頭のおかしいやつだっていうことで

死刑だって言われちゃうんですね。
で、死刑の判決を受けるのに陪審員裁判なんで
陪審員が裁判で投票を行うんですけど、半々くらいだったんですよ。

ほんの数十票の差で死刑だったんですよ。
だから情状酌量を願い出ればもしかしたら死刑は免れられたんですよ。
裁判官もそんな姿勢だったんですね。

なんだけど「いや死刑でいい」とおっしゃるわけです、このソクラテス。
それはプラトンたちが必死に止めるわけですよ。
「どうしてだ!先生」「なんで死刑になっちゃうんだ、おかしい」と

別に悪いことをしているわけでもないのにっていうことを言うんだけど
ソクラテスはそこで言う言葉が

「私は自分の心の赴くままにこういうことがおかしいと思って
 自分のしたいことをしたまでだ」と。
生きたいまでに生きたまでだと。

「それをもって死刑を宣告されるなら、それでいい」と
「それをもし自分の心を曲げて『間違ってました、すみません』と謝ることは
 自分じゃない。もう自分としての命はそこで終わっている」

ということで死刑を受け入れるわけですよ。

赤江
いやそれは、そう思ってもなかなか出来ないですね。
その場ではね。

武井
出来ないんですけども、僕はこれに衝撃を受けて
そんな人間がいるわけない!と。
ただよくよく考えてみたら確かにそうかもしれないと。

「毎日つまんねえ」だの「面白くねえ」だの
「○○が上手くいかない」だの言って生きてて何が面白いんだろうと
自分も思ってたんですよ。

授業がつまんねえなと思ってた時期もありました、中学生の時とか。
でもこれをつまんないと思って生きるのか、ここに何か活路を見いだして
自分のプラスにしてやろうと思って生きるのかで人生は変わるなと思いまして

自分のやりたいことっていうのは、もしかしたら自分の心の中にあって
それを動かすのも自分自身で、だから自分のやりたいことをやるっていうのは
ただただやりたいことを無造作にやるんじゃなくて

自分の歩む時間を全部やりたいものに変えてしまう時間じゃないか?と
そういうふうに思い立ったわけですよ。
それが今の自分の人生につながってきてるんですけど、まず1つはそこで。

さらに「無知の知」っていう彼が求めていたものっていうのは
やっぱりあのいつまでも自分が満足しないと
「もう物知りなんだ」って満足しないっていうそういう気持ちだと思うんですよね。

いつまでも成長してもまだ足りない、まだ足りないって歩み続けていくことだと思うんで
僕がそれを見て確かに「昨日すごい楽しいことあったな」とか
「今日なんかつまんないな」と思ってたりした日があったりしたんですよ。

「これはいかん」と昨日の方が楽しいなんてあってなるものか!と
僕は今日も昨日の自分よりもよりよくものを知りより強くなりってことを続けていけば
もしかしたら昨日より今日の方が楽しくなるんじゃ無いか?と

今日より明日の方が楽しくなるんじゃ無いかっていう思いに
この本を読んで至った訳ですよ。
だからこの「無知の知」が今の僕を支えてまして。

トレーニングとかで身体を強くすることもそうなんですけど
例えば本を読んだりマンガを読んだり、人と話したり人と出会ったりすることで
今まで知らない自分をもう1人手に入れるとか

今まで出来ないことを出来るようにする
知らないことを知っているようにする、その1個1個が成長で

で、明日それを1つクリアすれば今日の自分よりも
成長できた自分でいられると
これはもしかしたら僕にとっての「無知の知」じゃないか?というふうに

この2つのテーマに沿って人生を進めてきて
今ここにいるんですけど、その2つのテーマにすごく助けられてきてるんですね。
いろんな場面で。

だからあの本当にたまたま中学の先生に薦められたこの本で
本当にシンプルな物語の中で自分でいろんなことを考えて
動かされた本でですね、衝撃が今でも残ってるんですね。

こんなふうに人生を形作ってくれたこの本にはすごい感謝の念がありまして
そういう意味でもし「やりたいことが見つからないな」とか
「毎日がなんかつまらないな」とそう思っている学生さんとか若い方とか

若くなくても我々世代でもそういうことが見つからなくてモヤモヤしている人がいたら
是非1度目を通していただいて自分が生きる道みたいなものを
見つけていただいたら嬉しいなと、そういうふうにプレゼンさせていただいたんです。

そしたら学生さんたちがそれに共感していただいて
なんとですよ、この主任研究員さんそして学生代表のこの方を押さえて
武井壮がチャンプ本を得るというね。

大吉
あら?勝ったんですか?

武井
まさかあの「ビブリオバトル」初参戦にして
初勝利を収めるという奇跡が起きましてですね。

赤江
確かに「無知の知」という言葉は聞いたことがあって知ってるけど
そこからそれだけ咀嚼してなんか自分のものにして
「日々変わっていこう」っていうところまで考えつくのはすごいですね。

武井
でもね、簡単にこの本を説明しましたけど
この本の中にそこにたどり着くまでのいろんな機微があるわけですよ。

大吉
まだまだあるんですね。
僕いま武井さんの話聞いたら「じゃあもうこれ読まなくていいか」と思うくらい
内容が入ってきたから

赤江
大吉先生!もうこれでこの本は読んだ!と思って?

大吉
「もう読んだ」と思ったんです、まだいっぱいあるんですね?

武井
恐ろしい人だよ、本当にもう。

大吉
だってもう全部言ってくれたから(笑)
大事なところ!

武井
全部ではないんですよ!
そこはある一部なんですよ!
そこに至る弟子たちの思いだったりいろんなものがあるんです。

大吉
ただそういうふうな思いに中学でたどり着くっていうのがすごいですね。
達観してますね。

武井
先生のおかげですかね?
そういうことをね、すごい言ってくれる先生だったので
出会いですよね、やっぱそれも。

だから僕の知らないことを教えてくれた先生に
もうお亡くなりになってしまったんですけど
改めて感謝の言葉を伝えたい

ありがとうございます、クロカワ先生ね。


(了)

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