2012/07/07

山田五郎が語る「オリンピック直前のロンドンはこうなっていた」

今回は、2012年5月31日放送荒川強啓デイ・キャッチ!
「デイキャッチャーズ!ボイス」山田五郎さんの回
起こしたいと思います。

音声はこちらから


荒川強啓(以下、強啓)
はい、2泊4.5日で行って参りました(笑)

山田五郎(以下、五郎)
弾丸ツアー行って参りましたよ。

今回のロンドンオリンピックは、
俗に「イースト・ロンドン」と呼ばれるロンドンの中心部の
金融街の「シティ」ってありますよね?
あれより東、ビショップスゲートっていう通りより東の方の下町地区
「イースト・ロンドン」と言われる地帯で開催されるんですよね。

ちょうど日本で言えば、兜町より東にある
浅草とか両国とか向島とか墨東地区とかそういう感じの
下町なんですよ。


その、ハイドパークとかボンドストリートとかがある西側の
高級感のあるところとは違って。
「イースト・ロンドン」っていうと昔から貧しい労働者や移民が多い地域でね。
かつては治安が悪いこともあって観光客は事実上ほとんど行かない場所だったんです。

だから今回のオリンピックには、
そんな「イースト・ロンドン」を再生させようという狙いも
あるんじゃないか?と思うんですよね。

ただ、「イースト・ロンドン」自体はそういう地区なだけに
家賃も安くて、ちょっと刺激的ということもあって
結構、10年くらい前から若いアーティストが移り住んで、
この辺も東京の東に似てるんですけども。

強啓
東京の墨東地区は治安はいいですけどね。

五郎
はい、そうですね。
グリニッジビレッジみたいに逆に人気が出て家賃が上がっちゃうっていう
これを英語で「ジェントリフィケーション(Gentrification)」という現象が起きちゃって。
それがオリンピックが更に加速して、家賃が上がって
貧しい労働者が住めなくなるんじゃないか?っていう不満があるわけですよね。

一方で、移民の人たちっていうのは
安い公営住宅が提供されているわけですよ。
だから、「イースト・ロンドン」の中心地の団地みたいなところは
移民の人がばっかり住んでるわけ。

それは不公平だろうというんで、
白人労働者階級の不満が募ってるわけですよね。

移民の人たちの中でここのところ増えているのが、
バングラデシュとかパキスタンからの移民の人が・・。

強啓
アジア系の人が多いの?

五郎
アジア系の上に、イスラムなわけですよ。
だからお酒飲まないわけですよ。
そうしてね、下町の老舗のパブっていうのが結構潰れてるんです。




下町文化の伝統が破壊されるということで、
またそういうことが不満を煽ったりして。
でもう、白人の労働者による移民排斥運動が起きたりとか、
逆に移民の暴動が起きたりみたいなことが続いてたんですよね。

これをね象徴するような景色っていうのが、
「ブリックス・レイン」っていう下町の真ん中の通りで見られるんですけども。
そこは、1666年から続いた大老舗、下町ビールの大老舗の「トゥルーマン」っていう
ビールの醸造所があるんですよね。

だから東京で言えば、アサヒビール吾妻橋工場みたいな感じの立地ですよ(笑)
アサヒビールの吾妻橋工場が今のビルになったのと全く同じ1989年に
この「トゥルーマン」が潰れて、今イベントスペースになったりしてるんですよね。
その一体がもう完全にバングラデシュタウンなんですよ。
今、「カレーの街」って謳ってて、カレー屋さんがブワーッ並んでて。


強啓
じゃあ近づくと臭いが漂ってるの?

五郎
もう近づくも、完全にカレーの臭いがしてて。
古い工場がモスクになってたりとか。
ロンドン名物の街灯もバングラデシュの赤と緑の色に塗られて、
蓮の花みたいな形になって・・、もう完全にバングラタウンなんですよ。
すごい象徴的な光景だなと思ったんですけどね。

今回NHKのBS1の「エル・ムンド」っていう番組の
ロンドン五輪特番で行ったんですけども。
変わりゆく「イースト・ロンドン」の中で、下町の伝統を
守ろうとしている人たちを取材してきたんですよ。

「パーリーキングクイーン」って言ってね、
体中に真珠貝のボタンで飾りを付けた衣装を着て
冠婚葬祭になると出動したりだとか。
東京で言えば、鳶の親方一家みたいな感じですね。
印半纏みたいなのを着て、「パーリーキングオブショウウィッチ」とか書いた
あれを着てなんか有れば出動する人たちだとか。

あるいは、サッカー選手のベッカム。
彼も「イースト・ロンドン」の労働者階級出身ですから。
彼の大好物で今も取り寄せているという「ウナギのゼリー寄せ」を作ってる
「クック」って店のオヤジだとか。

強啓
食べました?それ、美味しい?

五郎
食べました。
昔、私ロンドンで食べた時は不味くて食べられなかったですけど。
意外と食えた。「さすがにここは名店だ!」と思いましたよ。
ベッカムご愛用の店は!


強啓
美味しいんだ!

五郎
美味しいかどうかは・・さておき・・食えた!

それからね、先程言った1666年創業の老舗ながら
1989年に潰れちゃった「トゥルーマンビール」っていうのを
これを復活させた若者が居るんですよ。

ジェームス・モーガンっていう人と、マイケル・ジョージ・ヘムスっていう
32歳くらいの若者、この2人が商標を買い取って昔のレシピ通り作って、
下町のパブの卸してるんですよね。

とっても印象的でデイ・キャッチ!リスナーの方にもお伝えしたかったのは、
このジェームスとマイケルの言っていた言葉なんですよ。

「トゥルーマン醸造所が潰れた工場の周りがね、
カレータウンになってるっていうのって結構悲しい話じゃないの?」
というような事を振ったらね。

「それは、その通りだ。
確かに悲しいし嘆かわしいけどね。それを言っても始まらないんだ。
このそもそも『イースト・ロンドン』が移民の街なのは今に始まった事じゃない。
トゥルーマン醸造所が出来た1666年の直後くらい(江戸時代ぐらいのはじめ)に
フランスから2万5千人のプロテスタントが逃げてきて、
移り住んだのがそもそもこの町のはじまりだ。」と

更に、
「東ヨーロッパ主にポーランドから逃げてきたユダヤ人が住み、
アイルランドからの移民が住み、イギリスの他の地方から上京してきた人たちが住み。
そういう移民や地方出身者が多い、そういう下町だからこそ
コミュニケーションの場としてのパブ文化が育ったっていう側面もあるんだ」

「西の方の気取ったところには、パブの文化が無いでしょ?」
「みんな会員制クラブとかで内で飲んでるでしょ?」と。
「移民や異文化を受け入れること自体が『イースト・ロンドン』っていう
下町の伝統であり、パブ文化ってものの神髄だから、
今の状況を一概に否定するっていうのは、
逆に自分たちの伝統を否定することになるんじゃないか?」って事を言ってるんですよ。


強啓
そんな若い青年たちが!!

五郎
32歳!びっくりしましたよ!しっかりしてるんですよ。

イスラム教徒はお酒を飲まないから、パブには来ないけどもね。
その人には別のコミュニケーションの場が生まれるだろうと。
それが今度また新しい「イースト・ロンドン」の伝統になっていくんじゃないか?って
ちょっと感じ入りましたね。

強啓
いいねぇ、そういう発想出来るって。

五郎
僕ね、東京の下町も同じようなところあると思うんですよ。
何かっつうと、「江戸っ子」って言いますけども。
そもそも「江戸っ子」自体が地方出身者の集合体じゃないですか?

強啓
天下普請で全国から寄せ集めですからね。

五郎
「佃島」なんて全員大阪から来た。
そっくり来たから、「住吉神社」奉っていたりとかするわけなんですけども。
だから、江戸の下町文化っていうのも実は
常に異質なものを受け入れることでね、活性化してきたし。 
その新しい伝統が生まれてきたんだっていうことですよね?


伝統っていうと古いものを古い形のまま、
全然変えないで保っていくっていう印象を持ちがちですけども。
実は、伝統っていうのは古いものを古い形のまま続けてるだけでは守れないですよね。

むしろ、変化し続けることによってしか
伝統は守れないってとこがあるような気がするんですよ。

そう考えるとね、「俺ん家は、5代続いた」とか
「3代続いた江戸っ子だ!」って威張りますけど。
それ自体、江戸文化の本質を一番誤解している
野暮ないきがりなんじゃないかな?っていう気も・・。

強啓
そうかもしんないな・・。
ただ、残して欲しいものもあるけどね。

五郎
もちろん。
だから、それはそれで残していくけども。
それも同じばっかりじゃいつか無くなる、変えていかないと。
残していくために変えていかないといけないこともあるっていうの確にそうだと。

「トゥルーマンビール」も昔通りのレシピで造ってるやつ以外にも
バリエーションを今、増やしてるんですって。
ちょうど日本のイースト東京、下町もね
スカイツリーが出来て色々変わって行くじゃないですか。
だからその変化を嘆く声もありますけど、
そこを前向きに受け入れて発展していって欲しいな
っていうことを感じましたね。




(了)

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