2011/07/30

300doors・上田ダイゴ「超カンタン!黒字公演の作り方に参加しました。

今回も300doorsに参加してきました。
今回は、「超カンタン!黒字公演の作り方」
講師は、マーベリックコア代表・上田ダイゴさんです。


以下、書き留めた内容です。



小劇場で演劇をしていると、「動員400人の壁」とか
「動員200人の壁」が結構ある。
今回の公演はその「動員200人の壁」に苦戦している
劇団に参考になると思う。

<「黒字公演」とは?>
「黒字公演」というフレーズを聞いて、
まずどのような方法を取るか?

・収入を増やす
・動員を増やす

だいたいこの2つを思い浮かべると思う。
しかし、今回はその2つは取り扱わない。なぜか?

動員を増やすということに対するパラドックスがあるから、
動員を増やして収入を増やしても、
その分費用も当然ながら掛かってくる。
しかし、収入と費用の差(粗利益)というのは、
何人動員しようと小劇場では
大差はあまりない。
しかし、その反面リスクだけはしっかり動員に比例する。


収入を増やそうと策を練るときに「スポンサーをつけようぜ!」
という話に流れがちになる。
スポンサーをとる = 営業活動 ←要はビジネス。
小劇場で活躍したい人は、ビジネスなんかしたくないし
もっと手堅いビジネスをした方がいい。
ビジネスの話だったら、他にうまい人もいるし、
ドラッカー読んだらいいんちゃう?
有効な方法ではあるが、(講師)個人的にはやりたくない。

では、どうするか?
→徹底的に支出を減らす。
今からしゃべることは「ケチれ!」です。
世知辛い話を今から聞いてもらいます。

<劇団あるある>
後片付けの時、パンチ(カーペット)をゴミを取るときに
誰かが養生テープ、黒色・肌色の布テープを使って
床のゴミをとっていたとしたら、
その人は殺されかねない勢いで怒られます(笑)
この場合は、茶色のクラフトテープを使います。

<テープカースト制度>
テープにはカースト制度が存在します。
養生テープ → 黒色の布テープ 
→肌色の布テープ →クラフトテープ
高価な養生で床のゴミなんかは絶対にとってはいけません!!!
1公演で下手したらテープ代だけで、
5千円から1万円くらい使っちゃう場合があるし、
公演ごとにテープの貼って剥がしてを繰り返すので、
この部分の改善や発明はないものか?と考えております。

<「黒字公演」の定義とは?>
全ての制作費をチケット代でペイできること
(グッズ売り上げも加えてもよい)

<昔話>
劇団入りたてのペーペーの頃、公演に参加したとき、
公演を見に来ていた別の劇団の代表が講師を目に留めてくれて
「是非ともうちの公演に参加してくれ」と言われた。

講師は「是非とも!」と返事をしたが、

「で、その公演。参加費6万円なんやけど、
いつ持ってきてくれる?」と言われた。
しかも、その参加費は絶対に返してくれない。
前もって赤字補填しているようなものだ。

この参加費も含んで黒字だという劇団もいる。

参加費も払わず、チケット代だけで制作費をペイ出来るものを
「黒字公演」と呼びます。

<なぜ「赤字公演」がダメなのか?>

劇団によっては「客が納得するなら赤字でもやる」という
劇団も本当にいるらしいです。羨ましい限りです。
その考えはそれでOKだと思う。

しかし「赤字」というのは、
劇団の体力を削っていくものだと思う。
劇団員の体力ややる気をなくしていく、
お金が減るというのももちろん問題だが、
やる気のほうが大きい。

<劇団あるある2>

劇団を立ち上げ、旗揚げ講演をする場合、
作演出は、これまで溜め込んだ表現したいことを
旗揚げ公演に詰め込もうとする。
練り上げた期間も相当なもの。
伝えたいことを詰め込むために
多少の赤字も覚悟して、セットや衣装を作る上げる。

役者も、立ち上げということでそれは熱心に稽古をする。
稽古も頻繁に行うため、稽古場代もかかる。

また劇団全員が初心者の場合、うまいやり方もわからないので、
無駄なことに経費をかけてしまう場合もある

旗揚げ=御祝儀公演ということで、お客さんも集まりやすい。

無事、旗揚げ公演もやり遂げ、
達成感で次は半年後に第1回本公演をしようという話になる。

いざ、次回公演の準備をしようと思うが、
脚本を考える時間が3か月程度になる。
前回と違い、旗揚げ公演に全てを注ぎ込んだ後なので、
前回よりは脚本ができあがりにくい。
短期間であるため、密度の濃い作品は書けなくなり、
クオリティも落ちてしまう。

その脚本をカバーしようとするために、
役者も努力しようとする。
そうすると議論を交わす機会が多くなり、
役者同士の関係も険悪になる。

旗揚げはご祝儀で行ったということで、
観客も「義理を果たした」という気分の人も多くなり
集客も落ちる。
その上、2回目ということで観客の反応もシビアになってくる。
厳しい意見に、役者たちも不本意な思いをする。

旗揚げの達成感を引きずっているので、第2回公演の話は進む。

このころ、役者でうまい奴は他劇団に
客演として参加するようになる。
またそれぞれの方向性がはっきりと見えてくる。

とりあえず公演は行う。

こんな結果になったけど、もう一度スタートに立ち返って
1年後に第3回公演をしようという話になる。

もうこの時には手遅れで、自然消滅する。

こんな劇団を結構な数見てきた。
これの流れのどこが問題なのか?

表現者というのは、最初は達成感だけもらえればいいと感じる。
しかし、2回目以降は何かしらの
見返り(評判・クチコミ、ギャラetc.)が欲しくなる。

2回目なので、評判をもらえないのは仕方ない。
(それを反骨精神にして、いい演技をしようと躍起になる場合もある)
それに引き換え、「赤字」というのは実際ダメージを受ける。
批判を受けた上に、お金を払うなんて、
「やらさせてもらっている」状態になる。
それでは夢も希望の無い。

「赤字」というのは一番の害悪。
上記の流れを促進させてしまう。
それは一番ダメな結果だと思う。

こんな流れは良くないと思う。これを防ぐためには
「赤字」であることを解消すること。
もうけることではなく、「赤字」でなくなることを目指す。

<「火曜日のゲキジョウ」ができるまで:その1&略歴>

「火曜日のゲキジョウ」というのを年に50回公演を行ったが、
赤字は一切出していない。
参加したかなりの劇団にお金を持って帰ってもらった。
参加して頂いた劇団の方の役に立てたのかな?と思ってます。
そこまでのプロセスを話します。

20代後半でこの世界に入った。
普通に劇団を旗揚げをして、
スパンは違うが同じように劇団をつぶした。
その後、3人組のコントグループをつくり、
マンスリーライブを1年間行った。
人気も出て、結果50人からスタートしたライブは
最終的に600人まで動員した。
「やった!」と思ったが、その裏でかなりの借金を生んだ。
大赤字の結果、コントグループは解散することに。
このときはまだ、動員増やせば「赤字」は回収できると思ってた。

多額の借金を抱えてしまったので、
長野の塩尻にある12時間勤務で
必死の思いでプリンタインクを詰める作業をこなした結果、
借金をチャラにした。

30代で大阪に戻ってきて、仕切り直そうと思ったが、
「赤字はもうイヤだ!!」という気持ちが強かった。
既存のやり方ではダメで、うまくいかないと思った。
そこで、「マーペリックコア」という
公演のプロデュースユニットを立ち上げた。

ここで、転機となる公演「アドシバ」を始めることになる。
劇団2組により即興芝居の公演で、
テレビのバラエティーの要素が強かった。
当時、劇場の立ち上げがあり、
そこの関係者と知り合いだったので
「何か出来ないか?」と交渉をした。

その劇場を見ていると、小屋というよりか、何もない部屋だった。
イメージで言うと「グラビアアイドルのイベントをやる場所」な感じだった。
出来てもイベントくらいかなと考えていたが、
演劇畑なので何かしたいと思った。

□ ここで気になった問題点
公演3回でつぶれる劇団を救済できるイベントはないものか?
活動が年間で本公演が2回(3回なら活発な方)
この活動ペースでは動員が増えづらい、
半年のうちに忘れられてしまう。
一度盛り上がる熱が冷めるのはもったいない。
この期間を埋めるイベントが必要だと思った。

年2回の公演で上手になろうというのは無理な話。
年2回になると、1回1回が真剣になり、本気度MAXで毎回臨まないといけなくなる。
そうやって気を抜けない状態になると、しんどくなり息切れを起こしリスキーになる。

また、劇団だけでの活動になると、交流が生まれづらくなる。
この半年の期間の間に小さいイベントで名前を覚えてもらえるようになるイベントを
すればいいと思った。

小さいイベントと言っても脚本をつくるとしたら、
作演出には負担がかかる。
10分、30分、1時間の作品のどれも作る労力はあまり変わらない。
稽古場代や衣装代もかかってしまう。
名前を売るためだけのイベントなので、リスクも下げた方がいい。
即興芝居なら、労力が少ない。
当日来てその場で終わるイベントができる。

「アドシバ」はプロデューサーとして、場を提供した。
プロデューサーということで第3者の立場として、
何があっても赤字を出してはいけない立場になった。
そのため、徹底的に少人数でシンプルに回せるシステムを作った。
結局、その劇場はあっという間に閉館した。
そこから2回劇場を移動して、その間に内容を先鋭化させていけた。

劇団へのギャラはチケットの数に比例した歩合制にした。
固定制にすると、動員が増えるとプロデューサー側が儲かるが、
客が少なかった場合のダメージが少ないため、歩合制にした。
儲かるか?とリスクが少ないか?の選択は、
常にリスク回避を選ぶようにした。

公演でかかる費用として大きいのは、人件費。
「アドシバ」は自前で人材を教育した。
照明係も「アドシバ」でしか照明をやらないような人を使った。
簡単なON/OFFみたいな操作で済むくらいで終わらせた。
そうすることによって、仕込みもバラシも手間がかからなくなり、
公演回数32回と連発して行うことが出来た。
その時、ちょうどインディペンデントシアターからバックアップも
いただき良い条件下で公演が行えるようになり、
更に楽になり、「赤字」が出なかった。

<なぜ、良い条件をもらえたのか?>
個人的に考えてみた。

1.劇場がよく空いている火曜日を選んで開催をしていたから
劇場としても空きを無くしたいということと、
「アドシバ」の形式としてその日のうちに撤収できるから、
劇場側としてもメリットが多かったのではないか?

2.イベントの性質上、毎回2組の劇団に参加してもらった。
そのため劇団間の交流を活性化することが出来たこと。
劇場自体も多くの劇団の目に触れることになった。

3.以前から、インディペンデントシアターを頻繁に利用していたので
ある程度信頼関係が構築されていた。
公演によっては舞台監督をする場合があり、その出演者や裏方の人には
「ローンで買った家のようにこの小屋を取り扱え!」
「借りたときよりも綺麗な状態で返す!」ということを心がけて利用していた。
その辺りの点も信頼を築く一因になる。

このときも、リスク回避の方法をとり、動員が50人以下の場合は、
会場費を25,000円、それ以降1人増えるごとに500円となるようにした。

<「火曜日のゲキジョウ」ができるまで:その2>

「アドシバ」で手応えをつかんだが、しかしこれは「イベント」
小劇場に関わる人間としては、「公演」でなんとかしたい!

そこで着手したのが「LOOP!LOOP!LOOP!」
効率的に儲けるのはどうすればいいか?を考えた。
公演日数を長くすると、それだけ人件費もかかるので、1日で
その上、1日のうちにたくさん公演をうっていけば?と考えた。

アドシバで劇団間の交流が活性化していたこともあったので、
3組でそれぞれ30分の芝居を作ってもらおうと考えた。
しかも、それは各劇団の終わりと次に公演する劇団のはじめが
つながるような形での公演形式にして、
どこから見てもつながる構造にした。
これで、一日8時間で4公演こなした(笑)

また、プロデュース側としても、赤字を出さないために
各劇団の独立採算制システムをやった。
全体にかかる経費を3劇団に負担金として出して貰い、
各劇団にチケットを売ってもらうシステムにした。
(だいたい40人売ればペイできる)
プロデュース側は赤字が出ない代わりに、儲けも出ない仕組み。
200人程度を呼べる劇団が、
40人に売るというのはそんなに難しくない。

結果、全体で見ても各劇団で見ても黒字になった。
このとき、このやり方は「アリ」だと思った。
勢いに乗って、第2回を実施したが、大失敗に終わった。

小屋を大きくして、動員目標を増やしてしまったのが原因。
先述の法則通り、リスクだけが大きくなり、大赤字になった。
この理屈に出会って、それを身をもって理解した。
ここが考え方が変わった瞬間。

「アドシバ」と「LOOP!・・」で手応えがあった。
2組の劇団で2回公演を行うことにより、
お客さんの取りこぼしがすくなるなるようにした。
収入も出しやすくなる。
60名の売上で、3万くらい出るときもあった。

ここでようやく「火曜日のゲキジョウ」の話になる。

<「火曜日のゲキジョウ」ができるまで:その3>

これまでの形式で手応えがあったのに加えて、
彗星マジック」という劇団が、この方式を見習って、
月一で公演をしていこうと考えていた。


こちら側も、ブルペンズとして劇団を呼んで年3回と
「アドシバ」を年5回くらいやりたいと思った。

これまで合計すると、火曜日が20コマ埋まることになる。
あと、30コマ埋めれば、毎週火曜日にはなにかやっているという
売り文句も付けれるようになる。
そんなことを言っていたら、ステージタイガーさんが
年8コマと男気あることを言ってくれた。
そこから順次、他の劇団も手を上げていただいた。

インディペンデントシアターからも
ゴーサインとバックアップを頂いた。

ここで、自分のことを差し置いて、
「火曜日のゲキジョウ」を成功させたいと思った。
よく出てくる例えに
「関西小劇場界は、小さなパイの奪い合いになっている」
そんな話を聞くが、その程度ではない。
やる側と見る側がグルグル回っている状態、
奪い合いさえない状態。
その上、僕は怠け者で、宣伝作業が面倒で嫌い。

噂に聞くと、下北沢ではなんやかんやで
お客さんが来る状態になっているらしい
そしたら、大阪でもその状況を作ってやる!!
大阪でも感激文化を定着させたい!と思った。

そう思ってくると、自分のソフトをつくること、
作演出することが面倒になってきた。
なので、この方式を他の劇団にも試してもらうため、
いろんな劇団に持ち込んだ。

「火曜日のゲキジョウ」では
30×30方式を、22回行い、成功させることができた。
参加劇団にも結構設けてもらったと思う。
完全にシステマチックにして場を提供することに徹した。
この形式では、プロデューサー側は赤字が出ないがあまり儲からない。
なので、集客がよくも悪くても正直どっちでも良いといえばいい。
スタッフは集客が良かったときは機嫌が悪くなる時もあった。

<月刊彗星マジックのモデルケース>
「定点風景」という公演を、パートナー劇団を呼んで
月一で、12回行った。


最初の3,4回は苦戦し赤字になった。ここは試行錯誤の期間。
これまでの動員は200人くらいの劇団で、仲の良い劇団を呼んでいた
仲がいい劇団ということで、お客さんもに通ってしまい横の広がりがない状態だった。

そこから中期に入り、状況が変化した。
これまでの継続で固定ファンがつくようになった。作品と劇団に対しコアなファンが
つくようになった。コアなファンは動員のために重要な役割をもつ。
また、パートナー劇団もすこしずつ幅が広がり始めた。
また「火曜日のゲキジョウ」自体も知名度を上がってきたので、動員につながった。

最後の3ヶ月では、まったく交流がなかったニュートラルやステージタイガーなどの
知名度・集客力のある劇団がパートナー劇団となってくれた。
また、月一でやっていたので、それぞれの技術が飛躍的に伸びた。
役者は2回稽古するだけで台本を離してやるくらい上達した。
システムも先鋭化し、作品クオリティもあがってきた。
コアファンがブログなどで発信し始めたことも集客につながった。
後期にこれまで努力してきたことが花開いた。

最初は赤字だったが、年間を通したら黒字決算になった。
後半で取り返すことが出来た、動員も1年で1,000人を達成した。

しかし、ここで終わらなかった。
場所をインディペンデントシアター2ndに移し
「定点風景 劇場版」(これまで劇場でやっていたのに、劇場版)をやった。
最初は200人動員できるかどうかの劇団が、動員270人の劇場で公演ができるようになった。
「彗星マジック」の作品は、万人受けしにくいファンタジーものであるにもかかわらず、
動員を30%も上げることが出来るのはすごい。

固定ファンにより、グッズの売上もハンパなかったし、
これまでのものをまとめた4巻セット6,000円で販売したDVDも
売れていった。

この反響が、一番嬉しかった。
アイデアで信頼を勝ち得て、動員が増えた。

<まとめ>
・長期的プランを立てる。
1回の公演で収支をとろうと思うから、苦しくなる。
長期的なプランで黒字が出ればいいと考えるだけで、気分的にラクになる。
本公演では黒字にならないと覚悟して、その分を小公演でカバーをする。
小公演3回、本公演1回くらいの単位で考えていくといい。
定期的に公演を行うことで、固定客をつかむことが出来、知名度も上がってくる。

・コンセプトを立てる
長期的に動くために立てる。
是非ともいれて欲しい要素が「公共性」。関西小劇場界においてメリットがあること。
劇団は上の階層に登っていくことを目指す。最後には東京を目標にする。
ここにある発送は関西を抜けるという考え、できるのならすぐにでもした方がいいと思う。

しかし、「関西でやっていくんだ」という考えでもいいのではないか?
「関西小劇場界の裾野を拡げる」というコンセプトを持つことで、スタッフの協力も得やすい。
劇団は東京に行くことができても、劇場はその場を離れることはできない。
その場を活性化してくれれば、スタッフも喜ぶ。自分の為になるのでいろんな面で協力もしてくれる。

・スタッフは自前で育てる
これは、かなり重要。もし希望者がいなければ駆け出しの照明さんと一緒に成長するというのも手
金銭的に無理だと思う方でも、とりあえず声を掛けてみるのは大事。他の方を紹介してくれたり 
相談に乗ってくれる。
コミュニケーションを取ることは大事。積極的な交流が大事。

・情熱ややる気を全面にだすこと。
情熱はお金に換算できると思う。これも大事な要素。
劇場やスタッフは、目には見えない技術を提供している。
いわば、金額のつけようがないものを提供している。
心から誠実に付き合うことが大切だと思う。不足分を情熱で補填できる。

・「テープの1cmは、血の一滴と思え!」

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