2018/10/28

コラムニスト・深澤麻紀が語る「学芸員は本当に頑張っているので、地元の博物館にまず行ってください」

今回は2018年4月25日放送「大竹まことゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交遊録」深澤麻紀さんの回を起こしたいと思います。


深澤麻紀(以下、深澤)
今週お話ししたいのは、先週16日に山本浩三・地方創生担当大臣が滋賀県主催の「地方創生セミナー」の質疑応答があって。そこで「文化財観光をどうしたらいいですか?」って言ったところで・・

「京都の世界遺産・二条城は英語の案内表示が以前はなくて、去年まではお花も生けられなくて、お茶もできなかった。一番ガンなのは学芸員。普通の観光マインドが全くない、この連中を一掃しないと」と発言。

他にも大英博物館が改装したときに「学芸員が抵抗をしたけど、全員クビにして大改装が実現して大成功した」というようなことを質疑応答で・・

質疑応答って失言が出やすいんですけど。講演自体は原稿を用意していくんですけど、質疑はその場で聞かれることについてけっこううろ覚えのことを言っちゃうことがあるので私もよくそれがあるんですが。

大竹まこと(以下、大竹)
その大英博物館のってウソなんでしょ?

深澤
そうなの!だからセミナー後の記者会見でさすがに記者が問題だってそのときから思っていて「どういう意味ですか?」って聞いたら、

「今の学芸員は文化財だからと何でも反対する。だけど観光立国だと生きていけないから一掃は言い過ぎたけど、観光マインドは持ってほしい」と釈明。

それがすぐにニュースになったもんですから、さすがに翌日「適切ではなかった」と撤回しお詫び、だけど辞めません。官房長官も電話で注意っていうことで終わったんです。

太田英明
そもそも文化学芸員とおっしゃいましたけど、そんな肩書きの人はいないんですよね?

学芸員は国家資格、大事な仕事は文化財の保護


深澤
「学芸員」って国家資格なんですね。「学芸員」っていう国家資格があるんですけど、ただ山本大臣はここで終わらなくて、さらにこれがニュースになったときに山本大臣は二条城について事実誤認をしているという報道があったらまた18日に・・

謝った翌日に「記事の方が間違っていて、二条城は水や火が使えなくて昨年やっと花が生けられるようになったんだ」って発言したんですよ。

そしたら二条城がまた「いやそれ以前にも水や火を使うことはあった」と。だから裏を取ってないわけです。つまり1回失言したのはまだ許されるんですけど、それに対して報道が出て「いや、そんなことない」と1本二条城の人に電話をさせればいいわけですよね。

だからということは、反省してないわけです。1回謝ったことについて「いや、間違ってない」ってまた違うことを言う。

しかもさっき言った大英博物館についても当然新聞社が「こういうふうにうちの大臣が言ってるんですけど・・」って言ったら、

明らかな事実誤認で観光のためにスタッフを解雇したことはもちろんないし、そもそも根本的な建物の改装も・・大英博物館なんですよ、世界一の博物館ですからそんな大々的な建物の改装をすれば誰もが知ることなんですけど・・

大竹
改装もしてないの!?

深澤
大々的なね、リニューアルとかリノベーションとか細かい手直しはどんな博物館もしますけど。でもまあ大臣もまた発言を訂正したと。

大竹
すごいねえ。

深澤
本当すごいの、そもそも「学芸員」って皆さんあんまりご存じない。私が学生時代図書館の司書と学芸員があこがれの仕事だったんで、やっぱりやろうかな?と。

だから大学生のときに文系の学生が取れるのは教職と図書館の司書と学芸員。でもどれもやっぱり大変なんですよね。

大竹
難しいの?

深澤
そもそも普通に卒業単位を取らないといけない上に、2年間で何単位みたいなのを取らなきゃいけなくて。私はあんまり真面目な学生じゃなかったんで卒業単位も危なかったので。あと教科書も高いんです専門書だから。

「こんなの無理」と思って諦めたんですけど、ただ博物館法というきちんとした法律があって、あくまでもきちんと大学で所定の単位を取得するか試験に合格して・・だから国家資格です。

で、大事なことは博物館の資料を収集して保管して展示して調査・研究をするんですけど。いちばん学芸員の大事な仕事は何か?っていうと、とにかく文化財の保護なの。

日本って基本的に紙の文化じゃないですか?紙と木の文化だから、皆さんも博物館とかに行くともうびっくりするくらい虫に食われているいろんなものって見ますよね?

結局、日本は湿気も多いから虫とカビが大敵。もうすごい大変で日本の学芸員の方って温度と湿度と光の管理がすごく大変だったり、やっぱりあんまり古いものが残ってないんですよ。

なんでかっていうと紙の文化だから、燃えちゃったりとか。で、今残っているものをダメにしないで。例えば酸化しちゃうとかそういうことをしないっていうのがすごく大事な仕事なんですね。

最近だと明かりがLEDになったことで展示物が劣化しなくなったとかって。あそこから出てくる光の種類が変わるからっていうから、みんなLEDに変えたりとか。そういうすごく大事なことをされてて・・

保存をメインにしながらも、もちろん観光マインドっていうかね、博物館とか美術館に来てもらおうっていうことを頑張っているんですけど。

あと皆さんすごく誤解されてるんですけど、博物館に行くと膝掛けをしたお姉様とかおばさまが上品に座っていらっしゃる。あれが学芸員だと思っている方がいて「暇そうな仕事だな」と思っていると思うんですけど。

あの方は「監視員」と言って、だいたいパートとかアルバイトの方で。専門職ではなくてあくまでも皆さんが博物館で急にガムを噛んだりとか暴れたりするのを止めるためのお仕事なので。学芸員自体はもう死ぬほど忙しいお仕事なんですよね。

大竹
案内してくださる方は学芸員なんですか?

深澤
例えばツアーとかがあって「13時に今日博物館ツアーやります」とかそういうのはもちろん学芸員の方ですけど、どちらかというと表にいらっしゃるよりは企画をしたり世界中に借りに行ったり。

借りに行くのがものすごく大変ですし、運搬とかもプロの運送会社に頼むしかないですからね。

大竹
例えばピカソ展をやろうなんていうことがあったとすると、その学芸員の方が海外に行ってどういう梱包の仕方をして、どういうふうな船で安全で何日までに届くみたいな・・

前に何かの展示会みたいなのに行ったときに中国のがまだ届いてなかったことがあった。いろんな国のコーナーが埋まってたけど。中国のところは白い布がかかってたよ。「まだ始まってません」みたいなのだったよ。

最近の博物館は展示やイベントが面白い


深澤
でもね、その大事なものを貸してくれるためにはいかにキチンとして管理や保管をしてくれる博物館か?っていう信頼があるから貸してくれるんですよ。

ということは、向こうも必ず1回は来るんです。どういう貯蔵庫・倉庫なのか?とかどういうふうにちゃんと展示しているのかを見るわけだから。ものすごく大変な仕事なんですよね。

そういうお仕事に人にね・・まあガン患者にも失礼だし、あとね一番ひどいと思ったのが「こういう連中を一掃」こんなことをお仕事している人に言う言葉ですか?

そもそも図書館司書もそうなんですけど、学芸員も非正規で安い賃金で働かされているケースがものすごく多くて。だけどイベントはいっぱいやらなくちゃいけなくて、ものすごい大変なんです。

でもね、日本の博物館ってものすごく良くなってて、是非あんまり博物館行ったことがないよっていう方も国立博物館っていうのは東京だと「トーハク」(東京国立博物館)、京都だと「京博」(京都国立博物館)、奈良は「奈良博」(奈良国立博物館)、福岡は「九博」(九州国立博物館)

あとは東京の「国立科学博物館」(科博)とか大阪の「国立民俗学博物館」(民博)とか、千葉の国立の「国立歴史民俗博物館」(歴博)

もう素晴らしい、皆さんが若いときに行っていた「なんか面白くねえよ」ただただ石とか見させられるだけだみたいな。今は立体的なね、素晴らしいんですよ展示が。もう1日いても飽きないような。

頑張っている博物館のために芳名録に記入を


あと地方でもすごく頑張っている博物館がいっぱいあるので、あと小さい博物館って入り口に芳名録があることがあると思うんですけど。「良かったな」と思ったら、あそこに名前とコメントを書いてあげることが翌年の予算にすごくプラスになるんです。

はるな愛
えっ、そうなんですか!

深澤
だからあそこに置いてあるの!だから「これを見られて良かったです」とか書くと、何人もの人の役に立ってるということで是非書いてあげてほしいんですけど。

とにかくね、当たり前なんだけど学芸員という個人をディスるんじゃなくて国とか文科省とか文化庁がどういうふうに文化財を守るのか?とか、あと「博物館法」があるわけで学芸員はそれ以上のこと水とか火のことは決められないわけですよね。

あともっと言うと観光のことって実は文科省じゃなくて国交省の外局に2008年に観光庁が作られてる。だから観光庁のことあまりご存じじゃない方が多いんですけど。観光庁が主導になるべきなんですよ。

どう考えてもこの発言は国がどういう観光マインドを持つか?っていうことを言うべきなのに個人の専門職の人を叩くっていうのは今の安倍内閣の失言の特徴的なもので。辞めさせればいいのか?ってみんな言うんだけど・・

大竹
「この連中が金食い虫だ」って言ってるのね?

深澤
そうなんですよ、だからそれがおかしくて。やっぱりね、今の大臣の失言の問題は自分の職務の不勉強とか不誠実が問題なので、それはなんとかしていかないといけない。

とにかく学芸員は本当に頑張っているので、博物館にまず行ってください。地元の博物館は素晴らしいところがいっぱいありますからね。

(了)

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