今回は2016年9月20日放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交遊録」深澤真紀さんの回を
起こしたいと思います。
深澤真紀(以下、深澤)
先週、交際相手のいない若者が過去最多というニュースが流れたのをご覧になった方も多いと思うんですけど。
でね、「やっぱり!」と思っている人が多いんですけど実はこれ調査内容とそのデータの読み方に問題があって。私、ご存じの通り10年前に草食男子を名付けたときも別に恋愛ができないとは全然言ってなくて恋愛にガツガツしてないし同性の友だち・女友だちもいるよっていう
飢えた世代よりだいぶ良いよ!っていう褒め言葉だったんですけど。まあなかなかこの意味が伝わらなくてですね。今回もこの調査はどういう調査かっていうと・・
(参考)コラムニスト・深澤真紀が語る「『女子力』より『女子術』に長けてる方が良い」
阿川佐和子(以下、阿川)
この調査は間違っとる!という話ですか?
深澤
間違っとる!というか質問と読み方がおかしいぞ!っていう話なんですけれども。
「出生動向基本調査」という厚労省の下に「国立社会保障・人口問題研究所」というのがございまして。1940年にやっぱり「産めよ増やせよ」なんで子どもをどうやってたくさん産んでもらったらいいのか?っていうために調査しようっていうことで始まったのが・・
もうすごい大規模な調査で、これ2015年で5年おきなので15回目です。結婚している夫婦への調査っていうのと、1982年からは独身者にも調査を始めています。
出生動向基本調査 - 国立社会保障・人口問題研究所
阿川
どこで調査されているんですか?私、された記憶ないけど・・一応独身ですが。
深澤
1万件くらいしか調査票が配られていないので。
太田英明アナ(以下、太田)
18歳以上35歳未満の独身の方です。
深澤
いやいや、82年のときにはまだ35歳未満だと思いますよ!
阿川
そもそも対象外と(笑)
太田
対象だった時期もあったと。
深澤
そのとき忙しくて来てても気がついてないこともあります。
阿川
どうも変だと思ったら!(笑)
深澤
「出生動向基本調査」で検索したらどなたでもダウンロードできます、調査結果が。ただA4で56枚もあるので、結局ニュースになりやすい部分が1枚目に「プレスリリース」としてまとめられるんですね。
そうすると、だいたい忙しいんで記者は。そこしか読まない。そうすると「交際相手のいない若者」というのがプレスリリースに書いてあるので「やっぱりそうなんだ!」って記事にしちゃうんですけど。
多くの中高年の方は「俺たちの時代は交際相手がそんなにいないなんて考えられない!」ってみんな言うんですけど、全然嘘で。実はバブル期も今も交際相手がいる人と性経験のある人の人数は変わりません。
阿川
交際って何をすると、交際相手になるの?
深澤
そうなんですよ!その通りなんです!阿川さん、いいことおっしゃいました!
阿川
友だちと恋人の間に何があるの?(笑)
深澤
バブル期は「恋人として交際している異性がいる」っていうのには男性は87年には19.4%いました。19.4%しかいないんですよ、バブル期でも。で、2015年も19.7%。
倉田真由美(以下、倉田)
5分の1しかいないの。全然変わんないね。
深澤
女子は87年は26.2%、2015年は27.3%。あんま変わらないんですよ。私たちなんとなくバブル期の若者は超イケイケでみんな恋愛をしていると思っているんですけど。
倉田
でもなんで男女差・・勘違いしている女ってこと?
深澤
既婚者と付き合っている人が多いっていうこともあると思いますけど。
倉田
ああーーっ!!なるほどね!
阿川
そういう計算になるんですか!
太田
二股かけてる男が多いっていうのもある。
深澤
まあいろいろな理由があると思います。
倉田
なかなかそこは面白いことに。
深澤
さっき阿川さんがおっしゃった「交際とは何か?」っていうのが実はこの質問を複雑にしているんですけど。
「交際している異性がいますか?」っていう質問項目なんですけど、1番は「婚約者がいる」っていうのに丸をつけて下さい。2番は「恋人として交際している異性がいる」、3番にですね「友人として交際している異性がいる」っていう質問があるんですよ。分かりにくいでしょ?
「交際している異性はいますか?」って聞いて、「1:婚約者・2:恋人・3:友人」って出てくるんですよ。4で「交際している異性はいない」って出てくるんですよ。
「友人として交際している異性って何?」って言ったらこれ調査が1987年に始まった質問項目なので、たしかに30年前は異性の友人がいること自体もちょっと特別な人というか・・
阿川
えっ、いついつ?
深澤
30年前です。
阿川
たかが30年前って、ついこの間じゃないですか!
深澤
阿川さんは発展家でいらっしゃったからね。
阿川
男女雇用機会均等法でしたっけ「席を同じくしてなんとか」っていう年は越えてましたよ。男友だちはいたわ!私だって。
深澤
そうなんですけど、厚労省はたぶんまだ男女の間には異性の友人もいないだろうと思っちゃったもんですから・・こういう質問項目を作っちゃったんですよ。
若者も1987年の男子に「友人としての交際している異性はいますか?」って聞いたらね、23.6%も円をつけている。だからお友だちなんだけど丸をつけちゃってる。
それが当然2015年の若者に「友人として交際している異性はいますか?」っつったら、そんなのただの友だちだから丸をつけないでしょ?だからね、今は5.8%しかそれに丸をつける人がいないんですよ。
阿川
えっ、解釈の違いってこと?
深澤
そう!つまり昔は友人として交際しているかどうかが「交際」の質問の中に入っちゃってたの。そのまま今に・・
阿川
「交際」って何!?ちょっと待って!例えば太田さんがガールフレンドが3人いて、その3人ともチュッチュしたりイチャイチャなんかしたりしていると「でも友人」っていうそういう解釈?
深澤
そういう解釈ではなくてですね・・
倉田
それは太田さんと深澤さんがご飯食べに行きますよ。これは?
阿川
友人として交際しているの?
深澤
たぶん当時のこの質問項目を作った人の気持ちは分かりませんが。ただ87年当時に「交際」ということを聞くにあたってはやっぱり異性の友人がいるかどうかも「交際」であろうというふうに思っちゃったもんですから、この質問を作っちゃったんですよ。
87年当時の若者はまだそんなに発展家ではなかった。決して必ずしも・・
阿川
そうかなー、87年は痴情の時代だと思っている人たちはここらへんにいるけど(笑)
深澤
と思ってらっしゃいますけど、データ的にはそんなに恋人もいなかったんです。
倉田
でもバブルのころですよね?
深澤
そうなんですよ。つまりみんなバブルのころは「赤プリで・・」とか「ティファニーで・・」とかっていう一部の人だけがニュースで流れていたので若者がすごい恋愛していると思っていたんですけど。
それは全共闘世代とかね、団塊の世代がみんな暴れていたわけではないように8割の人は全然暴れてなかった。そのようにバブル期も実は8割の人は全然恋愛に関係なかったんですよ。
私はあの時代に生きていて割といろんな人に当時から取材をしていたので、学生時代から。それをけっこう肌感覚として、みんなが思っているほど別に今の若者は恋愛していないなっていうのは知っていましたけど。
阿川
それで同じ質問を今すると、解釈の違いで「友だちとして交際していますか?」って言われたら。「そりゃ女友だちはいるわいな」と。
深澤
いるけど、丸はつけないわけですよ。「交際」についての質問だから。つまり彼氏か彼女か?って聞かれていると思っちゃう。
阿川
「女友だちがいますか?」っていう質問じゃないの?
深澤
そうなんですよ。全体としては「異性と付き合ってますか?」っていう中に「1:婚約者 2:恋人 3:友人 4・・」って非常に難しい質問でしょ?「友人として交際」してなんかいないわけですよ。
だけど87年は4分の1の人がそれに丸をつけちゃって。今はその数がどんどん減ったから結果として交際している異性がいないのは今は増えちゃったんです。その「3:友人」ってみんな丸をつけたから「4:いない」に丸をつけなかっただけで。
っていう話を私5年前にも同じ結果が出たので、新聞記者とかテレビの人に表に丸をつけながらやったんだけど。「深澤さん、それだとニュースが面白くならない。やっぱり『過去最高』と書きたいんだ。インパクトが欲しいんだ」って。
とうとう今回の発表では取材にも来なかったですからね。私がその抗議をするもんだから。「このデータがおかしいんだ!」っていうことを言うもんだから・・(笑)
阿川
でもなんか・・すいません、茶々を入れるわけじゃないですけれども。それ最初に倉田さんがおっしゃったように女と男の付き合っている解釈の違いがあって、それ今の質問4項目を男にした場合に例えば「婚約者がいますか?」これはもう両方の同意があるから丸かバツかがはっきりするな。
それから「恋人として付き合ってますか?」っていうのは男の視線で「こいつは恋人で、これは女友だち」と。つまり両方ともセックスの関係はあるけれども。恋人はこの子だから、あとの3人は友だちなんだっていう。
つまりセックス関係はあるけど友だちなんだっていうのが、男の方そういうふうなので「3」に丸を付けるかもしれない。女は逆にそういう性的関係になったら「これは恋人」っていうふうに。
倉田
そう、それぞれ4人ともみんな恋人、恋人、恋人って思ってるわけですよね。同じ1人の男に対してね。
深澤
でもね、女子も同じように「友人として交際している人」が87年当時の方が25%くらい丸をつけていて、今の方が7%ぐらいで減っているので。基本的にはその質問の意味をたぶん80年代は・・
阿川
いや、オンナがオトコ化したんじゃないの?
深澤
それもあるかもしれないです。とにかくこれ一番困るのは何が困るかっていうと、中高年がドヤ顔して「俺たちのころは恋愛もセックスもイケイケだった」と。で、童貞率も処女率も87年と今は実は変わらないんですよ。
阿川
えーーっ、ちょっとこれびっくりなんだけど。
深澤
そう思うでしょ?87年も未婚者は43.1%。
阿川
性経験のない未婚者の割合が男性が42.0%、女性が44.2%って。
倉田
これ増えているんじゃないの?
深澤
全然、全然。男性はバブル期にも童貞は43%、女性に至っては65%も処女でしたから。
倉田
当時?
深澤
そうですよ。
阿川
そりゃそうね!(笑)
深澤
本当、本当!だから一番よくないのは、結局のところ経済活動なんですよ。1987年から確かに少し増えるんですよ、1987年から2002年から2005年に向けて交際相手もセックス経験も増えるんですけど。そこから経るんですよ。
何でか?っていうとやっぱり2008年のリーマンショックで一気に減るので。結局、恋愛とか結婚ってほとんど経済活動なんですね。やっぱり社会の状況が良ければ。
阿川
当人も?
深澤
当人も、だって自分が一番怖いじゃないですか?日本って非正規の男の子は7%しか結婚できないんですよ。
倉田
えっ、7%!?
深澤
20代から30代。だけど正規雇用の20代から30代は27%結婚できるんですよ。
阿川
安定があることが前提ってことなんですね。
倉田
それはちょっと暗澹たる気持ちになるなあ・・。
深澤
本人も・・なんだったら男子の親も反対するから。「お前は非正規なんだから、今は結婚するな」と。
倉田
当然、相手の女子の親も反対しますよね。
深澤
だけどそんなことを言ってられないわけ。皆さんとにかく中高年の人は、俺たちのときはそうだったからとプレッシャーを与えないで、これはあくまでも社会経済の状況ですのでもうちょっと考えていただければと。酒場の呑みネタにしないでいただきたいということを言いに参りました、以上です。
(了)