2018/03/26

作家・大沢在昌が語る「『新宿鮫』を出すまでの間の11年間まったく本が売れませんでしたから」

今回は2017年12月1日放送「大竹まことゴールデンラジオ!」
「大竹メインディッシュ」大沢在昌さんの回を
起こしたいと思います。


大竹まこと(以下、大竹)
はい、ようこそいらっしゃいました。

大沢在昌(以下、大沢)
どうもこんにちは、よろしくお願いします。

大竹
大沢さんは趣味に遊びにいきいきとしていらっしゃいますね。

大沢
そんなことないですよ。もう仕事にあえぎ、お金がなくて・・酒場でお金を使いすぎたり、ゴルフでお金を使いすぎたり、道具にお金を使いすぎて・・もうひたすら書いて、書いたそばから右から左にお金が出ていくという。

大竹
書いたものの、銀座あたりの酒場で落とすお金ってどう・・比重・・

大沢
何を言わせたいんですか!(笑)

大竹
どのくらい?

大沢
もう今は本当に昔に比べると。

大竹
昔はもう毎日でしょ?

大沢
まあそうですね、昔はあの風営法が実は大きなテーマなんですけども。今は風営法がすごくうるさくなって隣に座って接客する・・それは女性でも男性でもそういうお店は午前1時までっていう決まりがあるんですよね。

銀座はもう昔から12時1時でピタッとお店終わるんですけど。まあバブルとかその後ちょっとぐらいまではだいたい六本木では3時ぐらいまで飲み屋さんがやってたんです。

大竹
だからあのころは銀座で飲んで、そこから六本木?

大沢
銀座で終わって、そこからまた六本木に行くということはダブルでお金がかかるわけで。それでお金を使って、だから今に至って全くお金が残っていないという状態なわけですよね。

大竹
あのね、あのころ銀座で呑んだ方たちが六本木に行くときにタクシーはみんな5千円とか1万円とか札で・・バブルのころはそうやってね。俺そのころちょうど銀座でラーメン屋の出前持ちやってたもんですから。そういうお客さんをずーっと見てて。

大沢
なんていうラーメン屋さんにいたんですか?

大竹
天下一ラーメン、行ったことあると思いますが高いラーメン屋で。

大沢
高いかなあ?(笑)

小説家を主人公にした「覆面作家」


大竹
まあ皆さんの感覚とちょっと違ったと思います。さて今回は「覆面作家」というご本をお書きになりました。ちょっと参考資料を読ませていただきましたが、どの話を・・これは短編が詰まっているんだけど、室井はどれを興味深く読みました?



室井佑月(以下、室井)
私が一番好きなのは「確認」、すごい全部面白かったんですけれども次に自分の好みでいいんだったら「大金」。

大沢
みんな飲み屋の女性が絡んでいる話だよね。

室井
そこもなんかやっぱり大沢さんのことを思い出しながら・・

大沢
思い出しながらって別に付き合ってたわけじゃないから、やめてくれる?そういう言い方すんの(笑)

室井
なんかスリムな身長の高いホステスさんが好きなのかな?とかって。

大沢
ああ、そうですね。まあホステスさんに限らず女性はスリムな方が好きです。

大竹
まあ本からでもその辺のことはちょっとうかがえるところはありますよね。で、大沢さんは昔とちょっと考えが変わってきたと?

大沢
いや、まあ言い訳なんですけど。この「覆面作家」という作品集は主人公が作家、それもハードボイルドミステリーを書いている「私」という名前はまあそこには出てこないんですけども。まあ「○○」というふうに伏せてあって。

読む人がだいたい私とかぶるだろうと思わせるような書き方をしているわけですよね。作家を主人公にして小説を書くって当たり前ですけど世の中の職業で一番よく分かっているのが作家なわけですから。それも昨日今日始めたわけじゃなくて、もうじき40年になりますから私も、まあ安易じゃないか?と。

普通は例えば警察官を主人公にしようが新聞記者を主人公にしようが、俳優を主人公にしようが、その業界のことをちょっといろいろ調べて。ちょっと泥縄ですけどその知識を作品の中に散りばめて書く、それがまあ仕事っぽいところではあるんですえけど小説家は。

この小説家を主人公に書いてしまえば、そのまんまベタで書けるんで「ちょっと安易だな」と思って小説家を主人公にしたものを書いたことがなかったんですね。もう100冊くらい出しているんですけど。近い例えば漫画の原作者とかは書いたことがあるんですけど。

ただ今回のこの話は一番最初に出てくる「幽霊」という作品が面白いネタがあるからと言って推理作家のところに持ち込んでくる男がいて。そのネタがあながち嘘とも思えない、社会のアンダーグラウンドの中でそういううごめいている集団がいるみたいな話で。

その集団のことをアイデアとして思いついたときに、普通に例えば私が他で書いている「新宿鮫」とかあういう刑事を主人公にした話で書くと「これはけっこう大変だな」と実態を描くのは。ちょっと雲をつかむような話なんでね。

その雲をつかむような話だということしか書けないとしたら一番分かりやすいのは作家を主人公にして、そこに持ち込みがあったというふうが一番安易ですけど分かりやすいなと。

これを1冊にするまで自分がこれをシリーズで書くっていうことを全く思ってなかったんですよ。たまたまその「幽霊」というのを書いて、そのあと割と面白いっていうんで「あんなのを他に何本か」って言われて「村」というのを書いて。そうするとだんだんスケベな根性が出てきて「1冊分書くか!」と(笑)

「私シリーズ」って編集者とは言っていたんですけども、「私シリーズ1冊分書こうかね」と言って開き直って推理作家を主人公にしないと書けない・・「確認」とかそういうのはあれですけど、例えば・・なんだっけ、忘れちゃったなタイトルを・・古いものが多いから。

この「覆面作家」であるとかそういうのは、もうあえて意識して小説家が小説家の話を書くというかたちにしました。

大竹
そうなんだ、そこは今まであんまり楽ちんすぎるから避けてきたところで。

室井
だってもう100冊出されてるんだから、最初の1発が物書きの話で。2発目も物書きのっつったら「あれ?」って思いますけど(笑)

大竹
でも俺も読ませていただいたんですけど、やっぱりすごいなと思うのはどの書き出しも何気なくものすごい風景描写とか人を引き込むようなディティールとか、書いてないんだよね?そんなんじゃなくて・・

室井
そう、1日に1編ずつ読もうと思ったんだけど、気付いたら全部読んじゃってた(笑)

大竹
そうだよね。これはちょっと短編で分かれているのもあるんだけど、けっこう気楽な感じで読める本だよね。

室井
だけどなんかすごいリアルでした。

大沢
そこはやっぱり書いた人間の顔が思い浮かぶようなつくりになっているんで、まああちこちでも言ってるんですけど。ここに出てくる小説家に日常は本当にリアルです、そのまんま私ですと。ただし、そこに襲いかかってくる事件というか、あるいは関わってくる美女とか全部フィクションですと。実際はそういう華やかのことも怖いこともなにもなく、ただ日々淡々と過ごしていますと。ただ生活だけはリアルです。

室井
「確認」とかって本当にすごい、殺し屋が本当にそういうふうに身近にいるんじゃないかなって思っちゃった。

大沢
いるわけないじゃない!(笑)

大竹
でもこれで女性の作家の方が登場するやつがあるじゃないですか、美人の。この番組に旦那さまが作家で奥様が官能小説家って方が来たんですよ。その女性がすごい綺麗だったんですよ、それとちょっとダブってきてね。

大沢
その旦那さんは生きてらっしゃるんですか?

大竹
まだいる、まだって言い方は失礼だけど(笑)まあそういうこともあって・・リアルじゃない話も設定はリアルなんだけどリアルじゃない話が入ってくるのも番組やってたときに日常の中にリアルじゃないことがストンと入ってくるんだなっていうふうに思ってね「ああ、そうか!」と思いましたけども。でもこの本は何冊目?

大沢
いやたぶんね、ちゃんと数えたことがないんで分かんないんですけど。たぶん100冊目を超えたぐらいなんじゃないかな?と思うんですよね。本の数え方って例えばエッセイを入れるか?とか小説だけで数えるか?とかあるんで。たぶん小説だけでちょうど100かその直前ぐらいかなと。それは事務所の人間が数えてくれているんで、僕はあんまりそういうのを気にしないんで。

大竹
「新宿鮫」のシリーズって何作まで?



大沢
あれは短編集も入れて11作です、だからまあ1割ですね。

大竹
「新宿鮫」はどうするんですか?まだ・・

大沢
来年の頭から長編で言えば第11作目になるんですけど、連載開始する予定でおります。オオカミ少年って言われちゃうんですけどいつも「来年書く、来年書く」ってもう最後のが2011年ですから、もう6年書いてないんで。

大竹
うちの女房は大沢さんの本が大好きなんですけど、このシリーズをとても楽しみにしておりまして。ぜひ書いていただきたいと思うんですけど。

大沢
ありがとうございます、頑張ります。

『新宿鮫』までの28作品・11年間は初版だけ


大竹
大沢さんは今までけっこうラッキーな感じで物書きになっちゃった・・

大沢
そんなわけないじゃないですか!(笑)

大竹
いやでも他の人みたいにド貧乏のどん底みたいなことはあんまり・・

室井
そういうイメージ全然ないや。

大沢
いや売れない苦労をしてますよ。

大竹
そうですか!?

大沢
23歳でデビューして、まあデビューこそ早かったんですけど。今は若いデビューっていうのはけっこう話題になったりしますけど当時は逆に特にハードボイルドですから「あんな若造が書いたもの・・」っていう感じで評論家にも相手にされないですし。

僕はそれで言うと79年デビューして90年に「新宿鮫」を出すまでの間の11年間、作品でいうと28冊まったく本が売れませんでしたから。

室井
そんなことイメージにない。

大沢
今の時代だったら、そんな28冊も売れない作家なんかすぐに消えているんですけど。当時はまだ出版界も景気が良かったんで。まあなんとなく養ってもらえたんですね。

だからもう本当に本屋さんに行って、その月の新刊で今月僕の本が出ているのに僕のだけ無いんです。だから「なんで無いんだろう?」と思って聞いたら赤川次郎さんの台にされてて。赤川さんの本が全部売れると俺の1冊目が・・あんまり言うと赤川さんが悪いみたいだから申し訳ないんだけど(笑)要は売れる作家のためにスペースしか本屋さんは空けないよっていう。

大竹
それはちょっと切ない話ですね(笑)赤川さんの本を全部買っちゃえばね・・自分で(笑)

大沢
そうなんですよ。それは僕、大赤字じゃないですか(笑)

室井
でもすごい!最初から平置きにされるだけですごいですよ。

大沢
いやいや、だからそれがされないからそうなってるわけよ。本の量が今より少なかったから、今は例えばよく言うんですけど100万部の売上げを立てるのに簡単な言い方をすると100冊本を出して1万部ずつ売れて100万部。かつてはそういう意味では100冊出さずに50冊ぐらいで100万部の売上げが立つっていう時代だったんですね。

それがどんどん売れなくなったもんだから、出版社もどんどん本のアイテム数を増やしてきて売上げだけ維持しようとする。それがまあ逆効果になっているというか・・1冊1冊が売れなくなる原因にもなってますし。

だから本を作り過ぎないで欲しいっていうことはよく言っているんですけど、まあでもいずれこのまんま行くと出版界っていうのは完全に破綻に向かって進んでますからシビアな言い方をすればもう10年以内に本屋さんも出版社も作家も3分の1から半数ぐらいは消えるってやつ、僕自身も含めて生き延びられるっていう保証はない。

室井
けどそうかもしれないです。お友達だった同じような職業の人がみんな田舎に帰ったりとか。

大沢
まあ廃業したり、作家のつらいところはタレントも同じだと思うんですけど「元」っていう肩書きがないんで気が付いたらいなくなってる。「そういえば昔いたよね?大沢在昌って。最近どうしてるのかね?」って「なんか八百屋で働いているらしいよ」みたいなそういうことですよね。

大竹
でも若いときから売れたんじゃないんですか?イメージとしては。

大沢
僕はだから28冊ずーっと本は初版しかなくて、そのころたまに珍しいファンだっていう人に会うと「僕は大沢先生の本は全部初版で持ってます!」って言われると「俺の本は初版しかねえんだよ!」ってふてくされてたっていう(笑)

若い人への言葉「自分を諦めるな」


大竹
2刷りがないから、全部初版だっていう。でもいろいろ経験をお積みになっていい言葉だなって思うことをおっしゃっていて「自分を諦めるな」っていう意味合いのことをおっしゃっていて。

大沢
若い人によく言います。

大竹
それはどんな言葉ですか?

大沢
今の若い人って本当に・・まあ言い方は悪いけど、最初っから無理をしない。諦めてる。身の丈に合う生き方をしようとする人が多いと思うんですね。

もちろんそれはケガはしないかもしれないけれども、若いときに冒険しなかったらもう冒険できるときなんか無いですから。大竹さんも当然そうだったと思いますけれども、若いころは背伸びをして突っ張って。後から考えるともう恥ずかしくてやってられないようなことを平気でしてたじゃないですか?

大竹
はい、人に言われるとけっこうこれでも堪えるタイプですけれども。「してた」ってもう決めつけですからね。

大沢
だってそういう顔してますから!大竹さんも。

大竹
まあ本当に今、女房がVHSみたいなやつをちょっと俺も年だから若いころのをDVDに整理してるんだけど。大沢さんに言われた通り、本当若いころ自己顕示欲のかたまりみたいな・・。

室井
外に遊びに行ったりとかしないんですよね、若い子。

大沢
そこに話を振っちゃうとちょっと飛ぶけど・・。だから若いときっていうのは無茶する、背伸びする、そのときは自分は格好良いと思っているけど後から考えると無茶苦茶格好悪いんだけど・・大人から見るとね。

大竹
しかもその上、後先も考えてない。

大沢
だから大ケガもしたかもしれない。たまたま大ケガしないで済んだっていうだけで。でもそれをやれるときにやらなかったらやれないじゃないですか?だからそれを含めて「自分を諦めるな」っていうのは自分の中にある可能性っていうものをとにかく自分で決めるなと。

「俺はここまでの人間だ。これ以上にはなれない」とかそういうなのを決めるなよと。やってやってやってダメだったらそれはしょうがない。そういうこともある人生には上手くいかないことの方が多いんだから。

大竹
20年先に花開くこともあれば、40年先にそうなる可能性もあると。だから諦めるなと。

大沢
最初に諦めちゃったら、もう絶対そこから先はないんで。

大竹
ダメでもダメで、またそれはそれの・・

大沢
それはしょうがない。でも後で「俺はあのとき、やれるだけやった」って少なくとも自分には言い訳できるじゃないですか?それをやらなかったら自分に言い訳すらできないんで。それは寂しいなって思うんですよ。

大竹
でも子どものころから、後にも先にも1回だけお母様におっしゃった言葉あるそうですね。「俺は天才なんだから、絶対可能なんだ!」と。

大沢
そういう古いネタを振ってくるの嫌だな(笑)まだ全然デビューする前で、これは父親がガンで余命幾ばくもないときに僕が小説家になるという夢を捨てないっていうんで母親が「お父さん死んでも死にきれないから、嘘でもいいから『諦める』って言え」って言われて、「いや、諦めない」って言って。

「あんたが作家になるなんて誰が決めたのさ!」って言うから・・それは世の中の誰も知らないし、でも自分を信じるしかないじゃないですか?だから「俺には才能がある。だから俺は絶対作家になるんだ」って言ったら、もう完全に「あっこの子おかしくなったわ」っていう顔して見られてのを覚えてますけどね。

大竹
お母様に?「普通の精神状態じゃない!この子は。もうちょっといっちゃってる」と。

大沢
でもそう自分で自分を信じてやらなかったら、よく作家志望の人に講座とかで・・例えば教室に50人いて「みんな自分は才能があると思ってるでしょ?」と。「それを信じなきゃ誰も作家になれないよ。でも99%は錯覚だからね」と言うんですよ。

でも自分がまず自分を信じなかったら絶対なれないから。でも錯覚だっていうこともあるからそれに気付くことも、あるときあるかもしれない。それまでは信じなさいよと。

大竹
あるとき「やっぱりこれ随分やってきたけど限界だな」って思うときありますよね?

大沢
あります、僕自身も何回かそういうときがありました。まさに「新宿鮫」の前の作品を出したときに周りの北方さんだとか逢坂さんとか仲間たちがどんどんブレイクして文学賞を取ったりベストセラーを書いているときに、僕だけいつまで経っても鳴かず飛ばず。

28冊目の本に1年半をかけて自分のできる最良のものというのをブチ込んで書いた。これが例えば1回くらい重版しないかと。落ちてもいいから何か文学賞の候補にならないかと。ところが全くダメで、そのときはキツかったです。それはもう「俺はもうダメかもしれんな・・」ってそのとき一瞬思いました。

大竹
それで精魂込めたのが28作目で・・

大沢
それでやけくそになって書いたのが29冊目の「新宿鮫」なんですよ。だからタイムラグっていうのはあるんですよね。努力っていうのは必ずそのとき答えが出るわけじゃないなっていうのも学びましたし。

大竹
でもその28作目で全部命がけで書いた本が売れなかった・・

大沢
全く売れない、話題にもならない、文学賞の候補にもならない。「なんだよ!俺のことなんて結局誰も見てないんだな」と。それプラス「俺の書いたものなんて、そこまでの価値がないんだな」ってそのとき思いましたね。

28冊目っていったら、そこそこの量じゃないですか!?一応、玄人っていえる量ですから(笑)2冊目、3冊目っていうわけじゃないんで。

大竹
それが29冊目で、本当に人生って分かんない。

大沢
だから28冊目がダメで諦めて「作家辞めてもう八百屋になるわ」って言ってたら「新宿鮫」がないわけですから。だから僕しばらく「新宿鮫」っていう本を自分が書いたっていうのは夢じゃないのか?と。自分が売れたとか賞をもらったっていうのは妄想でまだ相変わらず俺は売れなくて、そういう夢を見ているんじゃないかと思って。

原稿を書きながら自分の横に自分の書いた本を置く本棚があるので、そこを見て「新宿鮫」があるのを見て「ああ、夢じゃなかった本当だったんた」っていうのが4、5年そういう日々があります。

大竹
へええええー、人によってそれが34歳で迎えるか?60歳で迎えるか?は分からないよね。今日は本のご紹介なので良いお話もありがとうございました。

大沢
とんでもないです。

(了)



2018/03/06

倉田真由美が語る「中村うさぎの話にとっても考えされられた介護の話」

今回は2017年11月27日放送「大竹まことゴールデンラジオ!」
オープニングの一部を起こしたいと思います。


大竹まこと(以下、大竹)
くらたまさんは何か今日はちょっと話したいことがあるとおっしゃってたけど・・。

倉田真由美(以下、倉田)
そうなんですよ、すごく考えさせられるお話だったんですけど。私の長年の友人の中村うさぎさん、作家のね。身体を悪くしてだいぶお休みになったりしてましたけど。

大竹
一時は生死をさまよったよね。

倉田
でもここ最近はすっかり元気になられて、とはいえまだ歩くことはまだあんまり杖をつきながらでないとできないんですけれども・・リハビリもしないし真面目にね。

大竹
しないんだ。

倉田
しませんね!あの彼女は。「しなさい!」って言われててもしないんですけど。その彼女のトークショーに私もゲストで呼ばれて彼女が話していたことがとっても考えさせられる話だったんですけど。

うさぎさんのご両親ってもう80代かな?お母様の方が認知症が始まってしまって、すぐ理不尽なことで怒るんですって。症状でありますよね?例えばもう「私のお金を盗った」とか「お財布隠したでしょ?」とか。

大竹
猜疑心(さいぎしん)も強くなる時期がありますからね。

倉田
そうなんですよね。それでそのうさぎさんとご両親って一緒に住んでないんですよね。もう何十年も一緒に暮らしてないんですけど、ときどき会っていて。

その会ったときにうさぎさんに対してものすごく理不尽なキレ方をしたらしんですよ、お母様が。うさぎさんも分かってるから病気だって最初は穏やかに話していたらしいんですけど、なかなかそれがもう「辛抱できん!」みたいな感じの。

「言いがかりにも程がある!」みたいな。しかも割と言葉は達者なままのようなので分かってはいるけど言い合いみたいになってしまって。それお母様の方が怒っちゃって暴れちゃってどうしようもなくなったらしいんですね。

で、そのときにお父様が「分かった分かった、よしよし」ってお母様をギュッて抱きしめたらしいんですよね。そんなことをしているのを1回も見たことがない。長い人生、父親が母親を抱擁するなんて性格的にもあり得ないし「もうこんなこと今まで見たことがない」っていう・・

そのギュッと暴れて怒り狂ってるお母様を抱きしめるお父様を思ったらしいんですけど・・で、これ愛の話としてこういう話をしたんじゃないですよ。話にはまだ続きがあって。

お父様に認知症のお母様について話したときに「あれも俺の試練だと思ってる」って言われたらしいんですよ。うさぎさんのお父様って大手の商社マンでエリートサラリーマンだったんですけどもう退職されて・・それで退職されてからクリスチャンになられて、教会に毎週通ってるらしいんですよね。

大竹
商社マンでいらしたころは入信はしていなかった?

倉田
そこまで熱心には・・ただキリスト教的な考え方っていうのはずっとあったみたいですけど。仕事を辞められてから毎週教会に行くようになって、そのうさぎさんの言っていた話が愛の話としてじゃないんですよ。

お父様が今支えになっている本当に理不尽なことがすぐにキレたり大変な奥様を世話している。その支えになっているのが宗教だっていう。愛じゃなくて宗教が支えになっていて、その宗教を必ずしも礼賛するわけではないけれど。

でも彼にとって宗教が救いになっているんだ・・宗教があるからそこで暴れるお母様を抱きしめたり受け入れることができている。そうやって、ともすれば本当に倒れたくなるほどの大変なことじゃないですか介護って特に老老介護なんて。

まあ老老じゃなくても大変だけれども介護は。そのときに支えになるものが愛情だったら一番もしかしたら良いのかもしれないけれども、必ずしも愛情じゃなくても支えてくれるもの?それがそのお父様の場合は宗教なんだけど。それがあるとすごく楽になるんだっていうお話をされていて「うーん、なるほど・・」と思って。

大竹
だから「試練」っていう言葉を「これは私にとって試練だ」っていうふうにおっしゃったわけね。まあ愛の話に・・たぶんなったと思われるのはそれもちょっと違うっていうふうにお父様は思われたんだろうね。

倉田
そうだと思いますね。

大竹
日本人の人は無宗教が多くて、俺は本当に思うのは世界でもこの国でも大きな1つの緩やかな宗教があったらなあといつも思ってるんだけどね。ただ宗教も先鋭的になって分裂を繰り返していたりするわけだよね。

聖地を巡って争ったりするわけだよね?そこが人間的なんだろうけども、なんか1つの大きな緩やかな・・だからそういう意味では日本は豊かな感じなんだよね?まあ八百万の神だからね。良いときだけちょっと信じて、結婚式はキリスト教で挙げて。

倉田
まあ自由ですよね。それで仏教のお墓に入ったり。

大竹
それで正月には神社に行ってね・・何してるんだっていう感じはするけども(笑)

そのもうちょっと年寄りの認知症が進んだり、それから猜疑心が強くなったりっていうことを個人的に受け止めるんじゃなくて世の中で認知症の症状とかたくさんもっと分かって「こういうことなんですよ」っていうのも必要だよね?

倉田
もうちょっと広く知られることは大事ですよね。

大竹
いやー考えさせられる話で。

倉田
なんか介護の話っていうと、どうしても愛の話みたいな感じになるけれど・・。

大竹
まあ今の話のように正直現場は愛だけじゃやってられないでしょう。

倉田
そういう方もいっぱいいると思うんですよね。

大竹
くらたまどっか宗教に入ろうかな?とか思ったの?そういうわけじゃないの!?(笑)

倉田
違いますよ!私は全然、何も無宗教のままだけど(笑)

大竹
いやでも自分がそういうふうになったときのことを考えて・・

倉田
違いますよ、私は全然無宗教なままだけど。

大竹
でも自分がそういうふうになったときのことを考えて・・

倉田
でもだから何かやっぱりその自分の信念なり支えになるもので行動するんだと思うんですよね。なんだろうな?その対象に対する愛じゃなくても例えば愛する子どもに迷惑を掛けたくないとか。なんか動機はいろいろ人それぞれあっていいと思う。

太田秀明アナ(以下、太田)
たぶん自分を支えてくれる何らかの理由はみんな一生懸命探すんだと思うんですよね。愛情だったりとか過去のパートナーに対する罪滅ぼしたっだりとか、社会的な責任感だったりとか、宗教的な考え方だったりとか。

それで見つけて支えられる人はそこになんとか縁(よすが)を持って頑張るっていうことができるっていうのは良いのかな?というふうに思いますけどね。それが見つからないと苦しんだと思うんですよね。

倉田
そうですよね、必ずしも見つかるっていうもんでもないですからね。こうすれば見つかるってわけじゃないし。

大竹
老老介護だとか介護離職だとか特別養護老人ホームだとか、それからお金もかかるしね。若者の問題も別にあるとして、年寄りもなんかアレだよね?周りの環境は厳しいじゃない?

まあ俺なんか汚辱にまみれた清濁併せのんで今日まで来たわけじゃん?いろんな良い面も悪い面も、俺自身にもダメなところも悪いところもあったわけじゃない?過去を反省するじゃん?

それで近ごろ本当に思うことはね、この場所にいるからか?こうやってラジオで話しているせいだとかそれはよく分からないけれども。なるべく偽らずに中村うさきさんじゃないけども清廉な方に近づきたいなと。

そりゃ行かないよ?オムライスを食えば「あいつの方がデカいのはなんでだろう?」とかね。ほんの大したことじゃないのに取っ替えてみたら大きさが一緒だったとかね。実際にそんなことをやっているわけだ俺は。「ちょっとオムライスを交換しろよ!お前のと」みたいことをやってるわけだ。

1つのテーブルで争ったりもしつつ、ただなんか大命題として俺もくらたまと一緒で神様はいないわけだから。何か自分の中で決めるのかねえ?なんかこうちゃんと神様じゃないけど、もう1人の自分はいるよね?

倉田
そうなんですよ!神は見てないけど、自分は見てますから。

大竹
神は見てないけれども、もう1人の自分がいるわけだよ。だからもう1人の自分がそれは例えばゴルフのスコアでも、あのときの発言でも何でも良いけど「お前、ああ言ったじゃないか!」と。それをちゃんと全うできるのか?と。「あのときあんな格好良いこと言っといて!」っていうもう1人の自分はいるよね?

倉田
いますね。

太田
まあそれでいいんじゃないですかね?ひょっとしたらそういうことなんじゃ無いですか?第三者の目があるっていうことが宗教だったり神だったり仏だったりっていう。

大竹
いやだけどね、この年で思うけどやっぱし自分の周り半径3メートルぐらいしか見えてないわけだ。そんなに遠くが見えるわけじゃないからね。なるべく半径3メートルで正しいことでも遠くから見たら「お前、完璧に間違ってる」ってこともあるわけだからね。その辺のことを、その中村うさぎさんはそういうことを見て話されるのもあの人やっぱし清廉だよね?


倉田
あんなに正直な人、私は知らないです。

大竹
だからあんなに苦しんだんだよねえ?自分が間違ってないかね、ちゃんとデリヘルでもなってみたんだもんね。

倉田
そうですね、いろいろ体験されました。

大竹
そういうことも体験しつつ、ものを書いていこうとする・・あの人を支えている押している大本のものが・・いや世間には波風を立ててるよ。立ててるけど、俺なんかにはとっても良いなと。まあ憧れとしてね、できないけども・・思うよね。

倉田
私もそう思うな。本当に正直な人だから。必ずしも正義の気持ちで正直っていうことではないのかもしれないけど。でもデリヘルのときは本当にいろんな方にいろいろ嫌なことを言われたらしいですよ。そんなことを・・特に男性に。

大竹
そこはもう分からないところだからね。ちょっと難しい話だけど・・・すぐ忘れちゃうんだよね。こんな良い話したのにな。でもほんのちょっと心の隅に残しておきながらお仕事しましょうか。

(了)

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