2016/03/17

いとうせいこうが注目する「アピチャッポン・ウィーラセタクン、ナカゴー、東葛スポーツ」

今回は2016年1月14日放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」
「大竹紳士交遊録」いとうせいこうさんの回を
起こしたいと思います。


いとうせいこう(以下、いとう)
まず今日2つあるからね、やらなきゃいけないことが。

大竹まこと(以下、大竹)
あ、そう?じゃあ早速。

いとう
急がないとダメだよ。もう1月から始まっているんですけど。渋谷のイメージフォーラムでアピチャッポン・ウィーラセタクン特集ってのをやっているんですよね。

光浦靖子(以下、光浦)
ああ、聞きとれんかった・・

いとう
アピチャッポン・ウィーラセタクンっていうタイの映画監督がいるの。で僕ものすごい好きなんですよ。このアピチャッポン・ウィーラセタクンって人は数年前にカンヌでグランプリを取ってるんです。

そのときのカンヌの審査委員長はティム・バートンだったの。ティム・バートンが「いや、こいつだ!次の映画界は」って言ったすごい面白い監督がいて。

今まで公開されてきたのは「ブンミおじさんの森」っていうのと、今ちょうどこのアピチャッポン・ウィーラセタクンウィーク・・まあ1ヶ月マンスか?やってて・・


大竹
なんて?もう1回。

いとう
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督・・バンコク生まれだから、そういう名前だから。

光浦
「クン」はアグネス・チャンの「チャン」と一緒ね、名前の一部。

大竹
なんかよく分からないけど、略した呼び方ないの?

いとう
「アピチャ」でいいかな?いいか分からないけど(笑)

いや、この監督の映画が本当不思議!「ブンミおじさんの森」なんかは最初たぶん3分ぐらい野原の牛をずーっと写しているからね。それで田園が・・でも見てられるんですよ、何でか分かんないけど。

で今やってる「光の世紀」っていう映画も前半は村の病院で女医さんが問診をしていると。そこに若い他の医者が来て、どうも若い医者がその女医さんのことを好きらしいと。恋愛模様が描かれて。のんびりした不思議なタッチで描かれるんですよ。

それが終わったかと思うと、後半今度は都会の同じ病院の・・病院なんですよ。同じ女医さんが違う人に同じ質問をしているんです。だから「あれっ?全部この会話見たのに!」っていう記憶が。

たぶんやっぱりね、生まれ変わりっていうものがある世界じゃない?タイの仏教とか。だからものすごくそういう世界はもう1個ある。

あるいは10年先20年先自分が死んでもまた同じことが繰り返されるっていう我々とは違う・・まあ江戸時代まではあっただろう日本人と同じ感覚が映画になっているからハリウッドの考えとは全然違うんですね。とても面白い!

で、アピチャッポン・ウィーラセタクンは自分で美術的なフィルムをいっぱい撮ってるんで今年はもう東京都写真美術館で個展も開かれるんでたぶんこの人はものすごくこれから話題になっていくので・・

光浦
はあ、要チェック!



大竹
その人どんな生い立ちなの?いろんなちょっと変なことしないとそういうふうにはならない?それとも頭の構造の問題なの?

いとう
頭の構造の問題なんですかね?とても若いうちから映画を撮っていて。もんすごく映画をよく見ていて西洋の映画も日本の映画もすごい面白い人。

で、もう1個はものすごい分かりやすい話なんだけど、同じ渋谷なんですけどユーロライブっていうところが去年から2階を・・まあ堀越さんっていう人がやってきて、その人がもうたけしさんをカンヌに連れていったりいろいろしたなんですよ。

で、日本にいろんなヨーロッパ映画持ってきてやってた。その堀越さんが「いやもう映画だけじゃどうしてもダメだ」と。「渋谷にもう寄席がなくなっちゃった」と。「昔はあったと、俺が若いころは。どうしてもそれが作りたい」と。

シティボーイズライブなんかもよく撮っているWOWOWの射場ちゃんが間に入って僕に振ってきて、「じゃあ、分かりました」と。

「渋谷コントセンター」っていう名前で「そこに良い椅子入れて下さい」って言ったら堀越さんめちゃめちゃ気持ちの良い椅子入れちゃったんです、300席くらい。


去年から月1でいろんな芸人、面白いと思うやつ呼んで。まあ倉本美津留とか大林素子さんなんかもすごくお笑いを見ているから巻き込んで。だけど必ず10人くらいしかお客がいないわけ。良いライブをやっているんです。

光浦
あらー、もったいない!

いとう
それがでも回り回って今「テアトルコント」っていうのを月1でやるようになって、20分ずつ4組、まず2組は芸人。今回は例えば「チョップリン」それから「さらば青春の光」だからコント師ですね。

どんな前衛的なコントをやってもいいと20分間。でもう20分ずつは劇団、今の流行りっていうか僕が「この人たちは面白い」と思う劇団を連れてきて彼らが20分のコントをやるんですよ。

だから演劇からもコントをやるし、芸人からもコントをやるっていう「テアトルコント」っていう。

大竹
昔、俺たちが自分たちの劇団にコントとかやるときに客が入らないときに他所の劇団呼んできて予告編やらせたの。

いとう
ああ、言っていたね。

大竹
「予告編を20分ぐらいのダイジェストでやれ」って言って。予告編をその劇団についている客がみんな観に来て劇場が満員になったことがあったっていう(笑)

いとう
ハハハ(笑)上手いやり方をするよね。

そこに出てくる劇団が実は今回は「ナカゴー」っていうのがもう僕大好きな劇団で一番笑える。カタカナで「ナカゴー」って書くの。

松尾スズキさんとね、俺どっかでロケで一緒だったとき「せいこうさん、芝居観るの?」って「観るどころじゃないですよ、しょっちゅう観ますよ。昨日も『ナカゴー』観てきたんですよ」って言ったら

松尾さんがもう一言目に「今、日本で一番面白い劇団だってね。俺まだ観れてないんだけど」って。

光浦
マジで!?うわー観に行こう。

いとう
彼らはね2ヶ月に1回くらいずつドンドンやるから。なんかね、芝居をね、やたら上手い連中がね、ずーっとバカなことしている笑わずに。でもなんか人間の汚さもドンドン出てくる。面白い劇団なんですよ。これが20分のやつを持ってくるから。

もう1つは「東葛スポーツ」っていうの。これも去年か今年くらいかな?僕もしゅっちゅう観に行っていて、きたろうさんも観に来てた。

大竹
あ、そう?

いとう
これは今まであったビデオとかを全部切り貼りして自分たちの芝居と・・芝居も全部ラップ。役者が全部女の子たちがラップ!ラップの間にそのビデオもシーンがバーンッて出てくるから1個でも間違えたらもう狂っちゃうっていう世界をやってんの。

光浦
うわ、すげー!!

いとう
で、汚い毒みたいなものも社会にバンバン吐くし、これが「あしたひろし・順子さんに捧ぐ」つって介護ネタやってたじゃないですか?

「あした純子・昇悟」っていうやつ、この昇悟は古関昇悟だからきたろうさんの息子さんだから。

大竹
えっ!?

いとう
きたろうさんの息子さん、しょっちゅう「東葛」出てるの。ラップやってるの。言ってないですか、ここで?

大竹
あっ、そうなの!聞いてない聞いてない!

いとう
これももう「あした純子・昇悟」っていうタイトルで出ちゃってるんだから。昇悟がけこうなすごいラップをかまして。

大竹
ああ、あいつラップなら良いかもしんないね。

いとう
ラッパーになりかたかったんだよね、確か。

大竹
あれ、芝居だと自己顕示欲が・・自我が強すぎてちょっと照れちゃうところがあるんだけど。ラップなんかだったらストンと入るかもしれないね。

いとう
しかも芝居の中に収まりながらっていうものだから、「チョップリン」「さらば青春の光」「ナカゴー」「東葛スポーツ」って今の笑いのシーンで芸人だけじゃない笑いのシーンで一番面白い面子。なぜか客が半分ぐらいしか入らないわけ!

光浦
ヤバい!メモっとこう!今が狙いだ!渋谷・・

大竹
「チョップリン」も昔観たコントですね、ティッシュのね、良いティッシュと悪いティッシュを分けるコントがあったんだよ。あれは下らなくておかしくて。それで「こいつらは面白いな」と思ってシティボーイズライブのゲストに呼んだんだもんね。



いとう
そうですよね?まあここでは僕と倉本っちゃんの好みだから「巨匠」とか、今出て来ている「Aマッソ」っていう女の子たち、すっごい面白い子立ち入るのね。だからそういう子たちをどんどん出しているんで、ぜひ注目して・・

光浦
面白い劇団名の子なんでしたっけ?

いとう
「ナカゴー」・・しょっちゅうやるんですよ。この間も・・まだ時間あります?

この間、観に行ったナカゴーのやつなんかは、ある女の子がタイに旅行に行ったら友だち突き飛ばしちゃって毒蛇がそれで噛んじゃって、その友だちが死んじゃったって「その命日だ」って言って泣いているんですよ。

そこにその人を偲んで人々が来る。そしたらテレビの中からその死んじゃった人が霊になって出てくる。それが実は新しく後から入ってきた可愛い女の子が死んじゃった男の子を寝取っちゃってたと。

それを謝りに私は仏前に謝りに来たと。そこにその女の子の霊がテレビに写って、そっからワンショットで20~30分ずーっとテレビの中から悪口言ったら泣いたり本気で。もうカットなしですよ!

裏でこれやってんだろうな?と思ったけど、声しないんですよね。つまりビデオなんですよ。あらかじめ撮ってあるものすごい芝居。ワンワン涙が出てくるような芝居に合わせて全員も声が枯れんばかりにウワーッてやるけど、いちいちおかしいの!

みんな真面目にやってることなんだけど、それがなんか人間っていうものの「私は別に寝取られたと思ってないよ、別に私が飽きていたんだから」とか女の意地を張ってたり刷るけど涙は出ちゃってるとか。

いやー、役者をここまで追い詰めてなおかつナンセンスをやるっていうタイプはいなかったな。

大竹
いないね。追い詰められた役者はいろんなことをするけど、ナンセンスに転化するのはとっても難しいもんね。

いとう
難しい!それで観ててもこの間、鎌田くんっていうのが作・演出なんだけどそのコメントも書いたんだけど。何しろ喋ってないやつにまで演出がやたら行き届いているから。どういう感情で観ているのかっていうのがいちいちちゃんと芝居をしているから。

しかもそれなのに「ムーブ町屋」っていう町屋の駅の前の小さい商業施設の中の視聴覚教室みたいなとこでやってるから、全然ソデもないし黒い幕吊っているだけだから。なのにすごいレベルをやっている。

大竹
そうかお金がなくても出来るんだ。

いとう
そうなんですよ!お金がなくても出来るんですよ!照明もないからね。こういう人たちが今出て来ているんだってことをぜひこれ観て欲しい。

だから今日はアピチャッポン・ウィーラセタクンナカゴー東葛スポーツっていうこれだけの人たちを。

(了)

関連コンテンツ

スポンサードリンク