2015/08/30

コラムニスト・小田嶋隆が語る「コラムニスト小田嶋のライティング講座」

今回は2015年7月20日放送「赤江珠緒たまむすび」
「週刊ニッポンの空気」を起こしたいと思います。


赤江珠緒(以下、赤江)
さあいつもは小田嶋さんに世の中の出来事にああだこうだ言っていただいているのですが、今日は特別編です。

夏休み突入記念「コラムニスト小田嶋のライティング講座」ということで文書を書くプロの小田嶋さんがライティングに必要な要素を今日は伝授してくださるということですね。とっておきの技を。

小田嶋隆(以下、小田嶋)
まあ、とっておきというのじゃないですけどね・・はい。

赤江
これを聞けば、これから夏休み読書感想文なんかもありますけれども、ちょっと書き方変わりますかね?

小田嶋
良くなるか悪くなるか分かんないですけど(笑)

カンニング竹山(以下、竹山)
でもその知識だけは得られるということですね。

小田嶋
そう、なんかオリジナルなものを書こうっていう話です。だから良いものを書けている人の場合はぶっ壊れるかもしれないですけど、まあちょっと聞いてみて下さい。

赤江
分かりました。まあ社会人の方も文章力を問われるなんていうこともありますから、ちょっと書くと言うことに今日は特化してお話していきます。それではまず、小田嶋さんが文章を書くコツをメモにしてくれておりますのでこちらからご紹介していきましょう。

メモ
「小田嶋ライティング講座その1・読書感想文の悪癖から離脱せよ!」
戦後生まれの人間は文章を書くための最初の訓練を読書感想文を書くことを通じて経験した世代の者です。感想文そのものに罪があるわけではありませんが、

学校現場で扱われる読書感想文はどうしても結果としてどういう感想を抱くことが教師にとって望ましいのか?どんな感想を述べることが子どもとして正しいのか?という道徳教育の部分を担わされることになります。

「カンダタは自分が登っている蜘蛛の糸の足下を切れば良かったはず」だとか、「ラスコーリニコフが質屋のババアを殺したときは気持ちがスッキリした」とかいったタイプの感想にはバツがつくことになります。

つまり読書感想文は文章を書く上で一番大切な原則である「本当のことを書く」「自分の気持ちを率直に表現する」ということを抑圧してしまうわけです。

優秀な生徒ほど「どう書けば先生にウケるのか?」「どう感じたことにすれば良い点が貰えるのか?」を狙った文章を書くことになります。もちろんこれもまた重要な技巧のひとつではありますが、子どものうちからこれをやらされると文章を書くことそのものが解放ではなくて抑圧になってしまいます。

つまり文章を書くことが嫌いになってしまうわけです。ですので、いい大人がこんなことを書いて良いものだろうか?と自分ながら思う不謹慎な感情を素直に吐露することを心掛けましょう。

とにかく書く前に自主規制しないことです。最終チェックの段階で表現を和らげたり削ったりせねばならないケースもありますが、少なくともその段階までは自由に書きたいものです。

竹山
なるほど!よく分かる。

小田嶋
学校の作文ってね、正直に書くと叱られるんですよ。遠足の作文でも「山登るのだるかった」とか「青木くんがゲロ吐いて地獄絵図だった」とかね。そういう作文を書くと怒られちゃう。

竹山
確かに!怒られる。



小田嶋
「展覧会に行って有意義な体験をしました」とか、「山に登って頂上に着いたときにはすごく気持ちが解放されました」とかそういう嘘を書かなきゃならないじゃないですか?

竹山
それが全くの嘘かどうかは別ですけどね(笑)。でも思ってない人もいますからね。

小田嶋
そうです、だいたい子どもなんて山登って、登ってる間じゅううんざりしてるんです。「ずっとうんざりしてました」って書くと「あなたは何ですか!?」って。

竹山
ちょっと怒られますね。

小田嶋
「学校教育ナメてんのか?」っていう話になっちゃうから。それでみんなそういう作った気持ちが書くことをずーっと訓練してきて、それで文章書くことが「ああ・・また作文かぁ・・」って嫌いになっちゃうってことが・・

だから文章を書くことって実は解放で、自分の心を解放することだっていうところから始め、だから思い切りぶっちゃけたことを書いた方がいいのではないか?っていう。

赤江
確かにね、今ちょっと思い出しましたもんね私。小学校3年生のときにね同級生の男の子ガ転校したんですよ、夏休み前に。で、夏休みが終わってすぐにみんなに手紙を書きなさいということで作文みたいな手紙を書くと。

「最近あった学校でのニュースを書きなさい」って言われて、「こっちではこういうことがありますよみたいなのを書け」って言われたんですけど。そのときに1番のニュースが私たちの担任の先生が軽くオヤジ狩りに遭ってたっていうことだったんですよ。それちょっと新聞記事みたいなのに載ってるの、先生が!

竹山
ハハハハハ(笑)はあ、じゃあけっこうな事件ということだ。

赤江
大事件でしょ?子どもにしたら大事件だから、みんながそれを書いたんですよ。「先生が夏休みに・・」みたいな(笑)。そしたらみんな集まった手紙が全部その先生がオヤジ狩りに遭ったっていうことしか書いてなくて。そしたらね、結局その手紙を先生が「無くした」って言って届けなかったんですよ!

竹山
うわーっ、無くしたわけないよね!

赤江
で、「もう1回書きなさい」って言われてね。書いたことを。

小田嶋
先生をセカンドレイプしたんですね。ひどいですね。

赤江
でもやっぱり子どもにとってはそれが1番の重大ニュースだったので書いたんですけどね。

小田嶋
だから生徒全員によるセカンドオヤジ狩りをしたんですね。ひどいですね。

赤江
今思えばね、先生には申し訳なかったなと思いますけど。

小田嶋
でね、感想文のテクニックっていうのはあるっちゃあるんです。時々対談している岡康道っていうクリエイティブディレクターって要するに広告会社の社長をやっているやつなんですけど。

広告の方の人ね、が言っていた話で「なるほどなあ」と思ったんだけど。「登場人物に話しかけちゃう」っていう、「マルコ!君は○○だよね?」っていうあざといけどね。

赤江
話しかけちゃう?

小田嶋
そうそう!だから「又三郎、君はどこへ行っちゃたんだい?」ってやつ。これはもう先生の気持ちをグッと引き込むんですよ。

赤江
なんかそういう子で表彰されている子いた!

小田嶋
だいたい賞がもらえるって言ってましたよ。

竹山
その子のことがなんか可愛く見えるな。「本当に大好きになったんだな、この作品を」って思っちゃいがちになっちゃいますよね。

赤江
「マルコ、歩きすぎじゃないか?」みたいな。「もう靴ずれはできたころだろう」みたいな。

小田嶋
そう、そんなやつでしょ。

竹山
それはあんまりダメでしょうね(笑)

赤江
そうですか、まあその方が思いは・・

小田嶋
まあでもその手を子どものうちから使うのはあまりよくないですよね。

赤江
でも小田嶋さんなんかはもうそれこそ読書感想文で先生を怒らせるような文章を・・

小田嶋
だいたい怒られてましたよ。

竹山
どうんな感想文を書いてたんですか?

小田嶋
だからそういう率直なことを書いてしまって、あとちょっとウケ狙いをして「これオッケーかな?」と思っていったのが全然オッケーじゃなかったりという感じ。だから遠足なんかだと「谷底がすごく深いんで、おにぎりを投げてみたらやっぱり深かった」みたいな話ですよね。

竹山
いやいや、怒られるわー!

小田嶋
「お母さんのおにぎり投げちゃダメだろ!」って話ですよ。だから文章の話じゃなくて、おにぎり投げることの是非が問われちゃうんです。だから小学生の作文ってよくないなっていう・・

でも「おにぎりはともかく文章は良くできている」って言って褒めてくれないでしょ、先生とか?

赤江
まあそうですね、そういう行動込みですからね。

竹山
書くことの煩わしさとそれも良いことを書かなきゃいけないっていう煩わしさが2つあって結局作文が嫌になるっていうそういうことですよね?

小田嶋
そうすると、抑圧して書くとすごくつまらないんですよ。

赤江
では続いてのコツをご紹介いたします。

メモ
「小田嶋ライディング講座その2・ググるな、自分に尋ねろ!」
文章を書くことは自分が何を考えているのか?を知ることです。というのも普段わざわざ文章という面倒臭い表現方法を使わずにものを考えているとき、私たちは自分の心の奥底にある考えや感情に気付いていないからです。

実際、書いてみてはじめて「あっ俺ってこんなこと考えていたんだ」と気付く事は珍しくありません。つまり、文章を書くということは自分の中に埋もれている宝物(まあゴミだったりもしますが)に適切な出口を与えてあげる作業だと言っても少ししか言い過ぎではないのです。

とすれば、原則としては自分の頭の中にあることを何よりも大切にするべきです。事実誤認を含んでいようと偏っていようと自分の頭の中にある言葉は世界にひとつしかない言葉です。

ですからたとえ間違っていようとも程度が低くても自分の考えに沿って言葉を選んだ方が長い目で見ればよいということです。インターネットが普及して以来誰でも検索キーを押すだけで様々な情報にアクセスできるようになりました。

どんなことでも5分もあればそこそこの調べはつきます。でもネットで検索した知識が読者の側から観ても1発で「ああ、これはWikipediaで調べたんだな」と分かってしまう情報であることを忘れてはいけません。

情報として形が整っていても、見解として常識的な線を押さえているように見えてもコピペはコピペです。誰が書いても同じであるものは誰の心を打つこともできません。情報へのアクセスが容易になったからこそオリジナリティの大切さが増しているということです。

そこいらへんの美大生なら誰でも描けそうな上手な絵よりも一目見て誰の絵であるのか分かるオリジナリティを備えた蛭子さんの絵の方が価値が高いということと同じです。

上手であったりデータが豊富である文章より、他に似たもののない文書を書くことの方がずっと大切だということです。

小田嶋
これはね、よく知り合いの大学の先生が言ってるんですけど学生にレポートを書かせると10年前の学生とか20年前の学生に比べてみんなすごくきちっとした文章を書いてくる。

要するに全部ググったりWikipedia見たりしてそれなりに資料を揃えるのが昔より簡単になったから、だからほとんどコピペなんですけどそれをやってきちゃうと。

だけどこっちから見れば「こんなのコピペだろ?」って一発で分かるっていうことが学生にはなぜ分からないんだろう?って嘆いてますけれども。

まあ実際、今ウェブ上に書かれている文章なんかでも「これ丸写しじゃん!」っていう文章けっこう多いですよ。だからなるべくものを書くときはネットを見に行かない方がいいんじゃないかなと思います。

私なんかも調べものして書いちゃうと、調べるとなるほどって思っちゃうことがけっこうあるでしょ?そうすると、ああなるほどって思って丸写しじゃなにしろそれが頭に残って書いているから自分のオリジナルで元々考えていたことがすっ飛んじゃうわけですよ。

そうするとね、常識の線に近づくんだけど良い部分も悪い部分も含めてオリジナリティがすっ飛んじゃうっていうことがすごくあるので。だからあんまり調べないようにしてるんです。

赤江
なるほどね、だって見ると「あっ私が言いたかったこと、これこれこれ!」みたいな文章を見ちゃうと「良くまとまってるな」ってどっか心に残りますもんね。

小田嶋
それに沿って書いちゃうんですよ。何か調べてものを書くということの、例えばお金を出して買った本を自分が読んで、ものは書き出してもまだいい。あるいは自分が知った知識を5年自分の中においてあるとか、2週間置いてあるものはほとんど丸写しでも受け売りでもそんなに問題ないけど。

タダで調べに行って2分前に調べたやつをそのまま書いちゃうというのはすごく問題があるんですよ。だから自分の中で置いておく期間とか値段とか紙かネットかということ、それによって少しずつ違うんですけど。受け売りって注意しないといけないですね。

赤江
なるほど、自分の中でちょっと貯め込んだりとか自分が何か対価を払ったりとか、やっぱりちょっと絞り出したようなものじゃないと。

小田嶋
20年前に司馬遼太郎の本にこんなことが書いてあったよということが、20年俺が憶えているわけだからこれはもう俺のものなんです。司馬さんのものじゃないんです。これは俺のオリジナルだと思って書いちゃっていいんですけど。

まあ20年はいらないですけど、5年置いとけば人から聞いた話でも本で読んだ知識でも自分のものだと思っちゃっていいみたいなところはちょっとあるんですよね。

竹山
5年ですか?

小田嶋
まあ5年までもいらないか・・少なくとも2分じゃダメです。

赤江
それ考えもそうですよね?なんかこうモテるための本みたいなのあるじゃないですか?あれもすぐ仕入れたものをすぐ使ってもちょっと身体に馴染ませてないと無理がありますよね?

小田嶋
あれはね、モテる年齢を過ぎることにようやく知識がつくんです。だから20代の一番モテたかったころにはそういう知識がないんです。50になると知識がつくんだけどもう手後れなんです(笑)

竹山
じゃあ20代のときに読んでも別にそれできないから意味がないってことですか?

小田嶋
どうなんでしょうね?やっぱり知識にならないんですよね。

赤江
ちょっとやっぱり寝かせた方がいいですよね?

小田嶋
寝かせているうちに無意味になっちゃうんですけどね、まあいいやそれは。

赤江
さあではもう1つ行きましょう。こちらはですね・・

メモ
「小田嶋ライディング講座その3・だらしなく書き始めろ!」
これもまた優秀な人ほど失敗しがちなポイントナノですが、批評眼の優れた人は自分の文章の欠点をすぐに発見してしまいます。ですから最初の1行で大変に悩みます。ようやく書き始めても、最初の10行を書いたところですぐに直し始めてしまいます。

そんなふうにして文章を書いていると、文章を書くという作業そのものが苦行になってしまいます。苦しめば苦しむほど良い結果が出るというのは、あれは嘘です。

苦しめば苦しむほど良い結果が出るのは、SMクラブのような特殊な空間の中だけの話だと思ってください。文章は楽しく書き進められなければなりません。なぜなら書き手がうんざりした気持ちを持ち始めると文章が死んでしまうからです。

ではどうすれば楽しく文章を書き進められるのかというと、要するにだらしなくいい加減にノーチェックでダラダラと思うままに恥ずかしげもなく書き進めることです。

もちろんそうやって書いた文章は論理的に整合していなかったり、書きっぷりがクドくなったりいろいろと欠点だらけのものになります。でもそのまませめて200ラインぐらいまでは書いてしまいましょう。

直すのはある程度頭がこなれてからでオッケーです。というよりも書く頭と直す頭は別の頭というか、別の能力なので実は同時には働かなかったりします。書いている間は独善的に自己陶酔的にジャイアン的に俺様的にバリバリ書いた方が良いと思います。

ある程度、時間をおいてから自分の頭を推敲モードの出来杉くんにモードチェンジしてからチェックするわけです。優秀な人は根が出来杉くんなので批評や訂正や欠点の発見は得意でも自分勝手な理屈を展開することや思いっきり大風呂敷を広げることが苦手です。

でも文章を書くときに最初の動機はホラを吹くことだったり、自慢をすることだったり愚痴をこぼすことだったりするわけで、ということはつまり力強く書き進めるためにはちょっと押しつけがましい俺様人格に変容する必要があるわけです。

というわけですので、最終チェックの段階まではとにかくだらだらと無批判に書き続けましょう。翌日読んでびっくりするぐらいが良い力加減です。でもツイッターに書き込むときは1回深呼吸をしてからにしましょう。「死ね」とか書くとヒドいことになります。

竹山
ハハハハハ!経験上(笑)

赤江
文章の方はもう200ラインぐらい?

小田嶋
そう、よく良い文章を書くためには書く前にきちんを書くことをまとめて自分の頭の中で整理してから書き始めましょうということが言われるんですけど、それは嘘だと思うの。

なんか書く前に考えることってたかが知れてて実は書いているときって頭が一番働いているから書いている間に思いついたことの方が事前に考えていることよりレベルが高いんですよ。

だからなんか上手く思いつかないけれども書き始めちゃうと。後から考えてみるとだけど最初の30行ぐらいって頭が働いていないときに書いているからグダグダだったりして使いものにならないんですよ。

だからそれは単に捨てちゃえばいいんで、準備運動だと思ってだらだら「えーと、つまりだねえ・・」みたいなグダグダしたことを書きつつ、少し筆が乗ってくるとようやく頭が働いてくるっていう期間があるので最初から良い文章が書けるんじゃなくて最初の20ラインは何て言うんでしょう?離陸前の。

赤江
離陸ですね本当に、必要な走りなんですね。

小田嶋
そうダメな部分って必要な部分なんですよ。あとで削ればいいみたいなことで書いてみてもいいんじゃないかな?と。

竹山
何かしら動き出すということですね。だからだんだんだんだん頭が動き出すから。

小田嶋
そういきなりツカミの1行が素晴らしいっていうのはあれ後で、1番良い文章をツカミの1行に持ってきているっていうだけでそこからいきなり書き始めているわけじゃないじゃないですか?

竹山
結果上手い具合になっているけど、工程はまた別だっていう。

小田嶋
よく書き出しの1行が大切だからって言うけど、それが大切だと思うと歩き出せないじゃないですか?

竹山
考えちゃう、ずっと。

赤江
確かに、我ながら良い1文が最初にできたなっていうところでそこで惚れ惚れしたりして。

小田嶋
それができるまでは書き始められないとなったら、永遠に書き始められないから最初思いっきりダサく始めると。「僕は思うんですが」とかそういうゴミみたいな1行で書き始めて。

赤江
低いところからダラダラ

竹山
そうしたら頭が回り出すわけですね。

小田嶋
そう書くことによって頭って働き出すから。

赤江
うわーっ、ちょっと今日小田嶋さん格好良いですね。

小田嶋
格好良いですね、専門分野について語ると(笑)

竹山
良いこと聞いたな。

赤江
まあでもtwitterの場合は一呼吸置いてと。

小田嶋
そう、リターンキーを押す前に1つ深呼吸をする。

竹山
そしたら止まる場合もあると。

小田嶋
「『死ね』はマズいな」とか(笑)

赤江
これ大事ですね、やっぱり書くということでもコツがありますね。今日はよく分かりましたね。

竹山
いや面白いですね。なんか楽になるな、文章を書くというのが小田嶋さんから聞いた話で書きゃいいんだと思うと少し楽ですよね。

小田嶋
でも今の若い人たちはメール書いてますからね、私たちが若かったころよりは基本的には文章上手いです、みんな。普通にだからあんまり構えないで書く習慣が短い文章を普段から書いているから基礎的な能力は全然高いから心配せずに書いちゃえば良いと思います。

(了)

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