ジェーン・スーが答える「楽しい仕事は本当にあるのか?」

2015/07/07

ジェーン・スー 石井大裕 相談は踊る 男性学 田中俊之

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今回は、2015年5月16日「ジェーン・スー 相談は踊る」
19時台「リスナーからの相談」を起こしたいと思います。


石井大裕アナ(以下、石井)
それでは早速今夜最初の相談です。男性からの相談です。

メール
スーさんこんばんは、はじめてメールさせてもらいます。僕の悩み相談は「楽しい仕事は本当にあるのか?あるならばどうやって自分の仕事にするのか?」という春っぽいガチめかつ抽象的な悩みです。

先日ある雑誌のトークショーに行ったときにスタイリストの方が当日の撮影のことを振り返って「仕事、人生って本当に楽しかった。こんなに楽しいことはあるのか!と思った」と語っていて、やっぱりこんなに楽しい感情がすごく素敵な雑誌を作るんだなあと感動しました。

しかし就職する際に好きなことは趣味、仕事は辛いけど生きるためのツールと決めてしまった就職氷河期世代の僕には、楽しい仕事をしていない自分を改めて突き付けられました。

本の仕事に携わりたくて大学生のときにバイトしていた編集プロダクションではすごく楽しかったけれど、このまま続けていても正社員にはなれないと知ってしまい地元に帰り堅めの仕事に就きました。

しかし、仕事を楽しいと思えたことはなく、これはシルクロードを1歩1歩踏みしめるようなものでいつかたどり着く定年退職という天竺までは辛い道なのだななど考えてしまいました。

今の仕事をもっと好きになってこの道を全力で走るか、思い切って砂丘を超えて蜃気楼のような向こうの世界に飛び込んで新しい世界を探して砂まみれになるか。スーさん、楽しい仕事は何ですか?僕はそれを知らないのです。本当に迷ってます。どうかアドバイスを下さい。

ジェーン・スー(以下、スー)
なるほどね、あのー「楽しい仕事に就いてない。なぜなら、仕事は生きるためのツールだから」好きなことは趣味にしないと結局安定もしないし不幸になるというような考え方で

今、真面目に仕事をしているんだけど、仕事楽しくないし楽しそうな仕事している人もいるし、どうしたもんかな?と。楽しい仕事は何ですか?ということなんですけれども、今の仕事楽しいですか?

石井
私はもう天職でございます。これを極めて私はもう天竺まで行きたいと思います。

スー
でもさ、これ「1歩1歩シルクロードを踏みしめて定年という天竺まで」って言うけど。定年退職が天竺である可能性なんて100%とは言えないよね?

石井
そうですか?

スー
勤め上げたことに対しての喜びというのがある人とない人といて当然じゃないですか?



石井
そうか!そうですね。まあだから職人堅気な仕事、例えば実況アナウンサーなんてまさに職人ですけども、こういう仕事っていうのはとにかく日々の積み重ねで、もうやってやってとことんやってもう一番50歳、60手前で油が乗ってくるっていうことですよね?知識も経験も含めて。

だからそういう職人気質の仕事っていうのはそういうふうにやんなきゃいけないけど、他のものっていうのはどうですかね?

スー
「男性学」という勉強があるのはご存じですか?

石井
いや、全く知りませんでした。

スー
「女性学」があるように「男性学」っていうのがあって、まあちょっともう1個ラジオ番組やっててそっちで昨日その話をしてたんですけど。社会学の先生で田中俊之先生っていうのがいて昨日ぐらいに本を出したんですよ。



「男性学」ってどういうことか?っていうと、男性であるからこそ抱えてしまう問題、女性であるからこそ抱えてしまう問題っていうのがあるじゃないですか?例えば、女性だったら妊娠・出産をした後に仕事を続けるべきかそうじゃないかっていうことが女性だからこそ悩んでしまうこと。

それが正しいか正しくないかじゃなくて、社会の環境としてそれが問題になってくるっていうのがあるじゃないですか?で、男性は男性で男性だからこそ抱えてしまう問題っていうのがあるっていうので・・

何の話をしているか?っていうと、その田中先生が働き終わった定年退職の人たちにインタビューをしたときに「結局、私の人生こんなもんでしたか」っていう残念でしたっていう声がけっこう多かったんだって。

その理由っていうのが、結局子どものころには大きな夢を持つことを期待されて。でも大人になると「安定」、親が期待するのが安定。周囲が期待するのも安定。できるだけ安定して長く勤めるっていうね。

でも子どものころ男の子って大きい夢を持つことを期待されるんですって、女の人よりも。例えばアンケートで出てたらしいんですけど。女性だと小さいこと何になりたいですか、大人になったら?

お花屋さんとか、看護師さんとかそういう人を助ける仕事だったり比較的自分の今の生活の眼の周りに入る仕事っていうのを挙げる人が多いだって。親もけっこうどういうふうに小学校1年生の子どもに将来なって欲しいですか?って、まあなんとなく似てるんだって。子どもの夢と。

だけど、男の子の場合はなんとなく見ているテレビ、世の中で活躍している人、みんな頂点の勝者になるみたいな。「それこそが成功だ!」っていうのを見させられてるから、人によりますよ。

もちろん個人差はあるんですけれども、パイロットとか医者とかそれこそテニスプレーヤーとかそういうふうに思う。だけど、実際に親が期待するのって「公務員」なんだって!

石井
安定とね、信頼の「公務員」

スー
そのへんの、この方もそうだと思うんですよ。仕事っていうのは安定して長くちゃんと勤めて定年退職まで行かないとよくないものだ!

好きなことなんかやってそれで稼いでいたらバチが当たるみたいなさ。仕事っていうのは辛いものだっていう前提がたぶんあるんだと思うんですけど。そんなことはないと思うよ。

石井
ちょっといいですか、スーさん。めっちゃいいこと言いますね!

スー
何を言ってんの、あんた!開始25分で何を言ってんの!

石井
ちょっともうかなり感銘を受けましたけど。

スー
まあ田中先生の本を読んでよ、Amazonで売ってるから。もっと詳しく書いてあるから。

石井
今の受け売り系?

スー
そう、受け売り!受け売り!完全に受け売り。

石井
あーなんだ!なんだなんだ。

スー
なんですけど、なんだろう?やっぱり・・ここで気になるのが「今の仕事をもっと好きになってこの道を全力で走るか?思い切って砂丘を越えて蜃気楼のような向こうの世界に飛び込んで新しい世界を探して砂まみれになるか?」なんか真面目にやってる限り安定はするけど絶対につまらないとか。

石井
でもこの文章は確実に上手いですよね?

スー
ねえ、文を書くのが好きなんだなっていう感じはするし。で、新しい世界をやったら必ず苦労をするみたいなことだと思うんですけど。これ相談者の方男性だからこれ抱えてしまう問題のうちのひとつだと思うよっていうことにまず気付いて欲しい。

私、すごい好き勝手に生きてきて、やりたいことしかやってきてないんですよ本当に。だけど、これたぶん女で独身だからだと思う。

石井
はあー、そうか・・。

スー
だって35歳まで働いてさ、会社でウワーッて働いて「もう辞めた。もうここの会社にいても出世もできないし、つまんなくなった」「私インドに行きます、ヨガの先生になります」って言っても

「バイタリティあるねえ、君は」って言われるけど。男だったら「あっ、あいつドロップアウトだな」って。

石井
そうですね。けっこう「自分探しの旅に行きます」っていう人ね、けっこう多いですよね。

スー
そうそうそう、自分探しをいつするか?とかどうやるか?っていう問題はあると思うんですけど、やっぱり男性だと働き続けないといけないっていうプレッシャーが自分で自分にそのプレッシャーを掛けているところもこの人あると思うんですよ。

あのね、好きなことを、楽しい仕事っていうのは別に「今やってる仕事から楽しさを見つけてやってみることもできると思います」みたいなことももちろん模範回答としてあると思うんですけど。

うーん・・まあ今この人がいくつなのかっていうのはt、ちょっと分からないんですが。やってみるのも手だと思いますよ。楽しいと自分が思う仕事。

石井
そうですよね、大学生のときには実際にこの編集プロダクションですごく楽しいっていう経験があるから。

スー
ただまあこのまま続けていても正社員にはなれない、っていうこれも現実なわけで。だから好きな仕事をやってることで多少収入が不安定になるっていうリスクはあるんですけど。

これがさ、今このご時世だと好きじゃない仕事をやっててもじゃあ一生安定で昔みたいに定年までクビにならないか?っていうと、そんなことがないわけですよ!

石井
確かにね、僕自身もそういう恐怖にありますから。

スー
っていうかさ、テニスを辞めたときガーン!ってならなかった?

石井
なりましたよ!もうその後は。だって私ずーっと入院してたんですから。

スー
そっか、そっか。怪我なんだもんね。

石井
怪我もありましたし、病気にもなりましたし。テニス辞めた理由っていうのが実はもう最後不眠症になりまして、だいたい3ヶ月から4ヶ月ほとんど眠れない状態になって熱がずーっと微熱が37度5分ぐらい。だからテンション的にも下がる。

その中で最後、もう人とも視線を合わせてしゃべることが出来なくなって、無理やり家族に連れ帰られて日本で入院してたんですよ、ずっと。でもうそのときは「もう終わったな」と。だって6歳から追いかけてた夢ですから。そのときは21歳手前くらいですね。

スー
しかもそこそこいい線いってたんだもんね。

石井
自分で言うのもなんですけど、才能自体はないんですけど・・

スー
ハハハ(笑)これ努力で頑張って・・?

石井
「がんばろう!」っていう意志はありましたから、そういう中でも夢がなくなった瞬間っていうのは「あっ、終わったな」と思ったんですけど。まあでも誰かにね、家族だったりとか助けてもらったっていうのが僕にとっては一番大きかったですね。

スー
まあもちろんね、でも好きな仕事「これしかない!」と思ったものがダメになった人でも今これだけ元気ですから。

石井
「できるー、できるー!」と思ってますから。

スー
まあ多少のカラ元気だと思いますけど。

石井
スーさんまだ分かってないな!私ここに来る前に2時間ウエイトトレーニングしてきてますからね。名古屋出張からのウエイトトレーニング2時間!

スー
それがカラ元気っていうね。

石井
それでプロテインを家で水を入れて飲もうをしたんですよ。で、水を入れたら手が震えちゃってるからトレーニングでパーンって落としちゃって粉と・・

スー
おめえの話はいいんだよ!相談戻るぞ!それで何が言いたいか?っていうと、あっ話終わっちゃったよ、もう。

石井
だからプロテインこぼしたっていう・・

スー
違うの!そうじゃなくて好きな仕事やってみるのも手だと思います。でもその前になんでそんなことを仕事について考えちゃうのか?をまず考える方が先だと思うよ。

(了)

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