2014/08/28

ダイノジ・大谷ノブ彦が語る「阿久悠さんと松本隆さんは非常に対照的な作詞家」

今回は2014年7月16日放送「大谷ノブ彦 キキマス!」
大谷レコメンド「渚のバルコニー/松田聖子」の回
起こしたいと思います。


大谷
今日はですね、松田聖子さんの「渚のバルコニー」でございます。
というのもですね、何故この曲を選んだのか?というと、
今日は作詞家の松本隆さんの誕生日でございます。

ニッポン放送のリスナーの方々でしたらやはり、
例えば「ロングバケーション」大滝詠一さんの傑作アルバム
あれの作詞を全曲手掛けた・・

元々「はっぴぃえんど」というね、日本の黎明期のロックバンドのですね、
まさに日本語ロックを確立したバンド。
この「はっぴぃえんど」のドラムを担当していたという。

そのときから「風をあつめて」なんていう曲がありましたけど
やはり「風」というキーワードを使って・・

この「はっぴぃえんど」のなくなった後におそらくその・・
松本さん的には松田聖子さんのプロジェクト、松田聖子というアイドル歌手なんだけど
非常に歌の上手い、このアイドル歌手をいわゆる一流ミュージシャン

当時で言いますと、細野晴臣さんとか
「ティン・パン・アレイ」とかですね。

あとは松任谷由実さん、荒井由実さんですね。
名前を変えて呉田軽穂なんて名前で作曲してましたけど。
「赤いスイートピー」なんていう曲とか作っておりました。



そういう松田聖子さんの作品におそらく日本語ロックのその行き先
自分の作品の行き先を「はっぴぃえんど」から松田聖子さんという
その舞台を変えて発明していったんじゃないかな?と思います。

実はこのニッポン放送のこのラジオをやらせてもらうことになって
本当に80年代・70年代の歌謡曲を聴く機会が増えて非常に勉強になりまして

特に僕の心の中にすごく引っかかったのが筒美京平さんという
素晴らしい作曲家の方と、やはり作詞家でいうとやっぱり松本隆さん。
そして阿久悠さんなんですね。

この2人は非常に対照的な作詞家ですよね。
阿久悠さんはやっぱりですね、「物語」なんですね。
歌詞の世界が「勝手にしやがれ」とか



例えば大滝詠一さん作曲で阿久悠さんの曲って1曲あるんですけど
これは何か?っていうと、小林旭さんの「熱き心に」です。
これも非常に男の物語なんですね。

対しまして、この松本隆さんの曲っていうのは
「風景描写」の連続なんです。「物語」にならないんですよ。

例えば、先ほど言いました代表曲「赤いスイートピー」なんかもそうですよね。
「春色の汽車」とかそれこそ「赤いスイートピー」とかもそうですけど、

「翼の生えたブーツで」とか、こう自分の空想の中で絵にしていくんだけど
それがストーリーにはなっていかないんです。イメージの連続で行くんですよ。
このたぶんね、描写を発明したのがおそらく松本隆さんだと思うんですね。

「物語」的なもの、例えば演歌の世界もそうだと思うんですけど、
それを更に歌謡曲の中に落とし込めたのが阿久悠さんであるならば、

それはつまり阿久悠さんが非常に優れたコラムニストであるというのと
関係あると思うんですよ。
松本隆さんは「風景描写」なんです。

ところがこの松田聖子さんに至ってはですね、
「風景描写」なのにサビに入ったり、一番歌のキーポイントになった瞬間に
急に自分の思いをブチまけるって方法をするんですよね。

今日かける「渚のバルコニー」例えば「渚のバルコニー」っていう単語
これってイメージですよね、「渚のバルコニー」ってよく考えたら
なんじゃそれ?って思いますよね?(笑)

で、「ラベンダー」が出る。「夜明けの海」単語がともかく出て来ます。
「右手の缶コーラ 左手には白いサンダル」「ジーンズを濡らして泳ぐあなた」
全てが映像1つ1つコマでこうやって見せていってる感じですね。

そこに何の物語もストーリー性がないんです。描写でいくんですけど、
サビは「I love you so love you もう離さないで あなたを愛してる」
って急に女性の心情になるんですよ。

「赤いスイートピー」もそうなんです。
「I will follow you あなたについていきたい」
いきなりサビで女性の思いが非常にエモーショナル、感情的な描写が出てくるんです。

でもう「赤いスイートピー」に至ってはですね、最後の最後にですね
「好きよ 今日まで 逢った誰より I will follow you」その後に
「あなたの生き方が好き このまま帰れない 帰れない」なんて

女の子に言われてみたい一番のセリフじゃないですか!
「あなたの生き方が好きよ」ですよ!!

要は何を僕は一番言いたいか?っていうと、
これってこの歌の世界の中になりきる人じゃないと表現できないんです。
分かります?

例えばさっき言った阿久悠さんの歌詞を松田聖子さんが歌ったら
たぶん歌えないんです。なぜならあれは「物語」を語っているから

松田聖子さんは「物語」を語る人じゃないんです。
その中の役になりきる人なんです。
だから松田聖子さんのことを「ぶりっ子」とか言うんです。

だって女性的な歌詞世界だもん。いきなり「離れないで」って言うんですよ。
それを一番可愛い言い方で言える憑依型。まさに役者としたら最高ですよね。
女性の一番可愛いエッセンスを全部詰め込んだのがこの松田聖子さんの表現方法

そしてその松田聖子さんの良さを存分に引き出したのが
松本隆さんの歌の世界じゃないかな?と思いますね。

よく「ロングバケーション」とこの松田聖子さんの歌っていうのを
ちょっと比べてみたらそこが一番違うと思うので
そこをポイントにしてちょっと聞いてみると非常に面白いんじゃないかな?と思います。

歌い手としての松田聖子さんの素晴らしさもよく分かります。
曲は松田聖子さんで「渚のバルコニー」



(了)

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