ジャーナリスト・青木理が語る「新宿ゴールデン街アングラ交友録」

2013/05/26

Session-22 ゴールデン街 荻上チキ 青木理

t f B! P L
今回は、2013年4月18日放送「荻上チキ・Session-22」
「Session袋とじ」青木理さんの回
を起こしたいと思います。

南部広美(以下、南部)
今夜のテーマは、
「小粋なジャーナリスト青木理の新宿ゴールデン街アングラ交友録」

荻上チキ(以下、荻上)
ゴールデン街のアングラ交友録・・
さっきもゴールデン街の話チラリと出ましたけれど、
どれくらいの頻度で今いってるんですか?

青木理(以下、青木)
今は少ないですよね。
今は週に1回か2回・・2回は行くかな?

荻上
ほうほうほう、割と行ってると思います(笑)

青木
僕、通信社の元々記者だったんですけども。
通信社の記者で例えば警視庁の担当なんかしてたときは
1週間のうち5日ぐらい行きましたよ。
だからまぁ平日はほぼ必ず行くような感じですよね。

荻上
仕事を兼ねてってことですか?

青木
そうそうそう、仕事も兼ねるし・・その・・
これどうしようもない風習なんですけど。
警視庁の記者クラブとか警察周りっていうのは、
夜おまわりさんの家に「夜回り」っていうのに行くわけですよ。


で、遠いでしょ?おまわりさんたちが住んでるのは、千葉とかね。
あるいは茨城なんていう人もいるんだけど。
そこに「夜回り」に行くわけですよタクシーとかハイヤーで。

戻って来て原稿書いたりとか打ち合わせしたりとかすると
だいたい終わるのが12時とか1時くらいになるでしょ?
で、飲みたいじゃないですか?

ゴールデン街は朝までやってるので「まぁいいか」って言って
そのまんま行くと、だからそういう人たちの・・
今は無くなっちゃったけど、バブルの頃ってマスコミも景気が良かったので
ゴールデン街の前のところにそういう記者たちのハイヤーとかタクシーが
ズラーっと並ぶっていう時代があったんですよね。

荻上
見たことないし、見てみたいですね。
なんかそんなバブリーな風景を。

青木
そうそうそう(笑)
だから本当バブルですよね。

荻上
いや羨ましいですよ!
でもそのゴールデン街をそもそも知らないっていうリスナーの方
いらっしゃると思うんですけど、ゴールデン街って何でしょうね?

青木
まぁその新宿の歌舞伎町の片隅に佇んでいる、
何十軒・・何百軒なんでしょうね、小さな飲み屋さんの密集している一角?

昔、「赤線」とか「青線」とか一応、御上公認の売春するところは「赤線」でしょ?
で非合法のところは「青線」って言ってたのね。
昔の「青線」だったんですよね。だから本当狭い区域の中に小さな建物、木造家屋、
正確には3階建てらしいんですけど、まぁだいたい2階建ての建物があって、


その昔はね、1階で飲み食いして2階でその・・そういうことに及ぶというような
ところがそのまま残ってて、今でも小さな店が残っててそこお酒が飲めると。
こういう場所です。

南部
そうだったんですね。

荻上
その2階の部分で飲んだりとかすると、
やっぱりなんかムラムラとしたりするんですか?青木さん!

青木
しないしないしない(笑)
いつの頃からなのか・・これ一つ申し上げておかなくちゃいけないのは、
多分何百軒もお店があって僕が知ってるのは本当一部ですよね。

例えば、演劇関係とか映画とか新聞記者とか出版社の人とか
まぁテレビ局の人もそうですけど、いわゆるあんまり良い言葉じゃないけど
「文化人」系の人たちっていうか作家さんとか、そういう人たちが
いつの頃からかいっぱい集まるようになったんですよね。

なので、そういう仕事の人たちが必ず行くと。
一見さん(いちげんさん)は基本的にお断りなんですよ。
で、「会員制」なんですよ、「会員制」。
でも常連になればもう本当に安く、だいたいボトルが入ってれば2千円くらいで飲めると。

荻上
一晩過ごせると。

青木
一晩過ごそう思えば過ごせる。
だけど大体1軒で済ませるっていうことは無くって、
近いところにいっぱい店があるから、3軒・4軒はしごして
気がつくと明るくなってるというようなところなんですよね。

一時バブル崩壊後に、どこもそうですけど地上げがすごくって
ゴールデン街周辺も地上げがされてね、店が何軒か閉じてったりとかしたんですよね。
最近はけっこう若い人がそういうところに入って、
だから僕なんか全然行ったことないけれども、20代くらいの店主さんがやっていて
お客さんも全員20代とか30代とかそういう店も出来てるみたいで。


だから僕は本当一部しか知らないんだけれども。
そのうちの一部にずっと行ってると、だから僕は会社にいるときいつも言ってたのは
「会社にいる時間よりも長い」というふうに僕は言ってたんですけども(笑)
まぁそれくらい行ってたってことですよね。

荻上
今ゴールデン街って間貸しじゃないけど、この日はこの人に貸しますよみたいな感じでね。
日替わりで店の雰囲気が変わったりってところもあったりすれば、
ずいぶん変わったんでしょうね。

青木
僕あまり詳しくないから適当なこと言えないんですけど、
すっごい権利関係が複雑で、だから地上げ出来ないとも言われてるんですけども。

つまり、ある店は大家さんから直接借りてるんだけど、
隣の店は大家さんから借りてる人から借りた人がまた貸してるとかね
っていうふうになっちゃってたりとか(笑)

だから家賃もずいぶん違うみたいだし、だから本当もうそういう意味では
ぐちゃぐちゃですよね。

荻上
すっごい密集してるじゃないですか?
例えば江戸時代の長屋がもっとギュッとなったような
イメージですから、これ火事になったら大変だなっていつも思ってるんですよね。

青木
いやだからバブルの地上げされてたときには、けっこう不審火が出たんですよ。
おそらく放火じゃないか?って言われてるんだけど、突然店から火が出たりとかして
いやだから燃えたら一発で一網打尽になっちゃうようなところではありますよね。

ただ最近はすごいですよ、外国人の観光客の人なんかがこう・・
多分コースになってるんでしょうね、なんかその旅行ガイドに載ってるのか?
ものすごくたくさん来て見るっていう・・

南部
あーでも見たいだろうな、海外から来た人たちは。

青木
そう非常に日本的というとか、まぁ昭和的な日本の風景が
そのまま残ってるっていう感じですよね。

荻上
そうですね、下町の感じというかね。
例えば東南アジアに行ったら「ゴーゴーバー行こうか?」とか・・
そこまで卑猥な感じでは無いかもしれないですが、今は。
南部さんはちなみにゴールデン街は行ったことあります?


南部
・・・20代前半・・。

青木
ずいぶん大昔ですね。

荻上
その頃はバブルの頃が少し残ってる頃ですよね?

南部
そのバブルの頃だったし、自分もやんちゃだったから・・

荻上
やんちゃ!!

南部
なんかまぁ・・あの辺はとにかく夜いましたよね。

荻上
あのー・・、南部辞典の「やんちゃ」という項目には
どういった意味が書かれてるんですか?

南部
いやいやいや、一応世間一般のみなさんと共有してる「やんちゃ」ですよ。

荻上
それはどっちの「やんちゃ」ですかね?
こうブイブイ腕でね、人を殴っていったタイプなのか・・

青木
南部さんの世代だと、スカートが長くて手に鎖を持ってるとかそういう?

南部
そうです、校内暴力スケバン的な・・。

青木
そういう感じの「やんちゃ」だったってこと?

南部
いやそっちじゃないかな?ハチャメチャ系だったと思う。

青木
あ、いますよ!ゴールデン街にそういう人たまに。
酔っぱらうともう訳が分からなくなって暴れちゃうとかそういうタイプじゃないですか?

南部
暴れはしないですけど、モノマネとかしたりします。昔ですよ!!
今はもう全然出来ないけど、お酒飲んで・・。

荻上
やらせないので、どんなレパートリーがあったかだけ教えていただけます?

南部
覚えてないけども・・当時はすごいバブルで各局の女子アナさんたちが
すごいタレントさんみたいになってた時代で、それぞれの局の花形アナウンサーさんの
しゃべり方をマネしたりとか、やってましたよね。
そんな時代もあった・・。

荻上
っていう子がいっぱいいるんですか?ゴールデン街に。

青木
いますよね、ただどっちかというと僕が行くような店っていうのは
さっきも仕事の延長線上みたいな話をしましたけど、
例えば「噂の眞相」の岡留さん,編集長ですよね。
なんかがいる店で新聞記者とか出版社の編集者とかノンフィクションの作家とか
テレビ局の記者とかそういう人たちがいるようなところ。
まぁ右翼とか左翼とかの人もいるようなところに行っていたっていう感じですよね。
から仕事の情報交換も出来るわけですよ。


南部
そうですよね!そうなりますよね。

青木
僕なんかは警視庁の記者クラブにいて夜回りをしてから行くわけですから
ある意味それがニュースなのかどうかは別としてですよ、そういう議論は別としても
まぁ一応世の中でホットとされているような情報を持っているわけですよ。

で、一方で週刊誌の編集者さんとかテレビ局の記者とかね、
他者の記者とかいるから、そうするとお互いにね・・
「どうなのかな?」って情報交換出来たりとかもするし。

もっとディープな話で言うと、どんな会社でもそうだと思うんですけれど
不満ってあるじゃないですか?
例えば僕が取材をしてて何か圧力がかかって書けなかったと。
「チクショー!」と思うわけですよ。

まぁどこのメディアも多分TBSもそうだと思うけど、あると思うんだけど。
そうすると僕の会社では出来ないけれど、例えば週刊誌だったら出来るかもしれない。
あるいは、僕の会社では出来ないけれどもこれは許されないから
「噂の眞相」にお書いてもらおうじゃないかとか(笑)
って言うような情報交換も出来るわけですよね。

荻上
こんな原稿余ってるよっていうことですよね?

青木
逆にそういう週刊誌の人が「これはうちでは書けないんだけど」って
まぁウラ取って、もちろんウラ取るんですけども。
「こんな話があるよ」って言われたらそれで取材をして書いたりとかも出来るし。

まぁだから「噂の眞相」っていう雑誌は
南部さん読んでいたらよく分かると思うんですけれど、
編集部の記者とかはほとんどいないわけですよ。
全員でも、最盛期は多分5・6人いたのかな?
でもそうじゃないときは2人くらいしかないなくって。

荻上
匿名の投稿とかね。

青木
どうしてあんなに情報がたくさん集まったか?って言えば・・

南部
私、読んでて不思議だったんですよ。

青木
多分、半分くらいはゴールデン街のおかげっていうのはあったと思うんですよね。

南部
こぼれてしまったものがどんどん「噂の眞相」に集まってたっていうことか・・

青木
「噂の眞相」っていうのは基本的に独立した雑誌で、
岡留さんっていう編集長が自分で立ち上げて自分で経営して自分で編集してるから
まぁはっきり言えば、岡留さんが根性決めさえすればタブーは無いわけですよ。

例えば、テレビ局だとなかなか芸能のことやりにくいなとか、
芸能スキャンダルやりにくいとか、新聞とかだと検察とかね、
警察の批判しにくいなとかあるじゃないですか。

悲しい哉、あるんですけれど。
でもそれは岡留さんは関係無いわけですよ。
僕らは警察とか検察のことで書けないことがあったりすると、
今だから言うんですけれど「いや岡留さん、こんな話があるんだけど」とかね。

あるいはテレビ局の人が「いやあの芸能プロダクションのあれヒドいんだよな」
なんていう話だったら、また岡留さんに「いやこれヒドいんですよ!」なんて言うと
全部「噂の眞相」に出るっていうね(笑)

南部
じゃあこのゴールデン街のこの何て言うんですか?
飲みの席が無かったら世の中に出なかった話たちが全部ここで報われたというか・・。

青木
いっぱいあると思いますよ。
「噂の眞相」の最盛期っていうのはもちろんネットが無いことだったので、
今はネットがあるからまたちょっと情報の流れがおそらく違うと思うんですけれど
あの頃はネットが無かったので、やっぱりメディア批判
メディアがメディアを批判するってこの国のメディアって
基本的にはあんまりやらないでしょ?


でも「噂の眞相」は平気でやるわけですよ。
岡留さんに聞いたことがあってすごい感心したのは、
ヒラの編集部員は書かないけど、大手雑誌の編集長はもう公人であると。

だから何かあれば実名で書くと言って、
ある週刊誌の編集長がその部員を愛人にしてたらしいんですよ。
で、そのアパートに出入りする写真を隠し撮りして載っけちゃうっていうね。

いつもは芸能人のそういうスキャンダルを追っかけている
載せる側の編集長が何故か撮られちゃうとかね(笑)

荻上
いいですね!
「お前もやってんじゃねえか!」みたいな。
嬉しいですよね、やっぱ人なんだからさ。

南部
編集長だったら、「シノドス」編集長も!

荻上
僕もやられるでしょうけど、やり返しますから!
人ってそういうもんじゃんっていうのはでも何処かにあるので。

南部
荻上チキだけは敵に回せない!

荻上
いやいや、そんなこと無いですよ。
僕もある時期まではこっそりと裏日記みたいなのを付けていて

南部
怖いっ!!

荻上
あるブログにパスワードをかけてその・・
ほら論壇って言ってもみんなすごい良いことを言うんだけど、
たとえば何だろうな?っていうと、出すと特定されるとあれなんですけど・・
 
保守系の論客ですごい「女は家で家族を守るべきで、男はもっとマッチョで」みたいな
そういったすごい典型化してますけど・・そう主張する人が
ちょっとお仕事した帰りに「帰るコール」で電話を掛けて、奥様にですよ!
で、「今日何買って帰ればいい?」みたいな(笑)
尻に敷かれてる感が半端無いですよ、「ごめんよ、遅くなって」みたいな。
そういうのを見るとけっこうやっぱり「何言ってんだよ!」と思いつつも、
ほっこりするじゃないですか!

青木
そうだからまさにヒューマンインタレストででね、誰だってそうでしょ?
これも具体的な名前は出さないですけど、「文教族」と言われている大物の政治家
名前出したら誰でも知ってますけれど、その子どもはとんでも無い不良だとかね。

自分の子どもも教育出来ないくせに国の教育行政を語れるのか!っていうような
問題もあるんだけど、ただまぁ人間誰でもそういうところがあって。
だからその「噂の眞相」っていう雑誌は僕は本当に面白いなぁと思ったのは、
そういうその普段偉そうになんかこう人の芸能人のスキャンダルを
追っかけてる人もやっちゃうとかね。

あるいはヒューマンインタレストで面白ければいいじゃん。
ただしその代わり弱い人とか一般の市民に対しては、
僕らメディアって犯罪が起きると加害者にしても被害者にしても
ある意味一般人じゃないですか?そういう人たちをああだこうだ暴くんだけど、
そういうことは一切やらないと。

やるのは基本的に官僚とか政治家とかマスコミとかの人間だっていうことで
その代わり何でもかんでも書いちゃうっていう(笑)
それだから僕らは・・南部さんもそうだと思いますけど、
スカッとしたっていうかね、だから最近マスコミのなかで寂しがってる人がいてね。
「いやー『噂の眞相』があったら書いてもらいたいネタがいっぱいあるんだけどな。
 今、うちの編集部でこんな話が・・」みたいな。

そういうのはネットに流れるのかもしれないけど、
ネットってやっぱりなかなかウラを取ってる情報じゃないし、
だからそれはまた少し全然違くなっちゃうでしょ?

ちゃんとウラを取ってドンって出されると、
やっぱり「あーすげー『噂の眞相』!」っていう時代はあったし。

荻上
荒唐無稽な陰謀論とかが勝手にまことしやかにネットとかで拡がってると
そういう人たちがネットでね、キリッと見つけたみたいな話を見つけると
いろいろとなんか胸が痛むわけですよ。

世の中を憂いている人たちの姿を見ると、憂いたくなるみたいな・・。
そういうのを見ると「噂の眞相」に代わるメディアに
ネットはなれているのか?っていうはね、まぁあったりしますけど。

そういうある種のサロンみたいな場所ですよね。
そこに行けば若手も紹介出来るし、ネタを交流出来る。
それは善し悪しももちろんあると思いますよ。
それがあるからある種のマスメディアの情報交流が独占されてたんだから、
質が良い悪いなんて価値判断するんじゃなくて、
解放されたことに意味があるんだよってのは一理あるとは思いますけどね。

青木
まぁでもゴールデン街に関していうと、
僕の行っている店なんかに関して言えば、
今チキさんがまさにおっしゃった通りのところであってね。
僕なんかは面白いし、いろいろ情報交換出来るし、
逆に飲みながらヒントになってそれが企画になったりするときもあるんだけど。

最近の20代とか30代の編集者とかね、記者なんていうのは
「あんなところに行ってるのは、業界人同士がお互い愚痴をこぼし合って
 慰め合ってるだけで本当のネタはあんなところには無い」っていう人もいて。
それは一種正しいですよ。

荻上
あくまで慣習を守っているだけだと。

青木
それも正しいところはありますよね。
ただ古くはそれこそ野坂昭如さんだったりとか田原総一朗さんだったりとか
岡留さんだったりとか、僕の先輩で言うと作家の辺見庸さんとか、
まぁあんな人たちが・・僕が行き始めたのが90年ぐらいですかね?
その頃っていうのはそういう人たちが上にたむろって、あの辺で飲んだり
殴り合ったり議論したりとかしてて。


それがそれでまた一つの作品だとか文化を作ったっていうのも
まぁ間違いない。それはその新聞とか出版に限らず・・
僕は知らないですけど、演劇だったり映画だったりの人たちも
そういうことをあそこでやってたのは間違いないでしょうね。

荻上
「つながる」っていうことね、けっこう大事だと思ってるんですよね。
だからネットだとやっぱりつながりきれないものっていうのも
もちろんあるし、やっぱその酒を介さなくてもいろんな場所で
つながるっていうのはあると思ってるんで。

僕けっこう最近焦ってて、若手の論客っていろいろ出てきたけど
全然つながってねーじゃねえか!って思って
なんかね勉強会とかセッティングしたり、花見とかやったりとか
なんかホームパーティとかね、やってみたりして(笑)

南部
焦った故の行動だったりするんですか?

荻上
そうそうなんかだって隣の分野知らないんだもん、お互いに。
だから互いに尻尾踏んだりするのね。
この研究をしてる人がちょっと別の分野でその分野ですごい真剣にやっていて
もうエキスパートで「ああ、いい人出てきたな!」と思うんだけど
隣の分野を知らないから下手な例としてそれを出して
「何だよ!」ってカチンとさせたりとか。

青木
そしたら・・だからそういう時はまさにゴールデン街っていうのはぴったりで。
飲み会をセッティングしたり勉強会セッティングしたりっていうのって
大変じゃないですか?ゴールデン街っていうのは・・

南部
そこに行けば!

青木
誰かはいるから・・まぁ10回くらい行けば
ほぼ一通りの人と会えるようなところなわけでしょ?
で、リアルだし。酒飲みながらだからケンカになるときもあるけれど。

だからあれじゃないですか?
チキさんなんかゴールデン街でsession22とかって店をやって
南部さんをママにして。

荻上
それで番組終わった2時からスタートみたいな(笑)

青木
そこに行けば、あれじゃないですか!
若手論壇陣みたいな人たちがいて、僕みたいなのが行くと、
「なんだ・・オッサンの記者がよー!」とかって言うような場所を作るっていうのも
手かもしれないですね。

南部
ああー!仕事の相談を荻上さんに。
人生の相談を私に・・なるかどうかわからないけど(笑)

荻上
多分ね、石を投げられると思いますよ。
「昨日の番組なんだあれ!」みたいなね。

青木
でもね、ゴールデン街って聞くと・・
そういうところのハードルが低くって
多分開店資金とか店の中を綺麗にすると大変らしいんだけど
そうじゃなかったら家賃だけ。
あとはお客さんさえいればもうすぐにでも、
空いていてすぐにでも始められれば始められるっていう・・

荻上
じゃあもう数百万とかいらなくてっていう。

青木
たぶん要らないと思いますよ、そんなには。

荻上
逆に青木さんが店やったら僕行きますよ。

南部
あ、そうですよ!そうですよ!

青木
僕はダメなんですよ、そんなことをしたら
あそこから出なくなって(笑)
多分廃人・・

荻上
いつかやりたいと思ってません?実は。

青木
いやいや、無いです!無いです!
僕は飲むのは好きですし、あういう雰囲気は好きですけど、
僕はあそこで飲み屋なんかやったら多分20年くらい経ったら
あそこで突然変死体になって見つかるみたいな(笑)
そういう人生になりそうなので・・。

荻上
飲ませてね、悪いことしちゃったりしたら大変ですからね。
今日は良かったですね、メールとかで「前飲んだやつだよ」くらいで済んで。

青木
僕は意外とそういうとこは大丈夫ですよ。

荻上
あ、堅いんですか?

青木
堅いです、堅いです。チキさんとは違いますよ!

荻上
俺は堅いですよ(笑)

青木
あ、そうでしたっけ?

南部
今、点検したんですけど無いですね。

荻上
良かったですね、もしかしたらスタッフが検閲してるかもしれないですけど(笑)
スパムフィルターとか「外人」ってキーワードをはじくとか(笑)

南部
じゃあ曲行きましょうか?
青木さんがおすすめで。

青木
はいはいはいはい、あの今日だからゴールデン街とかそういう話をしろって
ことだったので選んだんですけど。

これね、もう無くなっちゃったんですけどゴールデン街にゲイバーがあって
そこは文化人の方々、大沢在昌さんとか高村薫さんとかが来てた店なんです。
もう無くなっちゃったんですけどね。
「ルル」って店だったんですけどそこが何故か僕がいろんなところ飲み歩いて
もう明るくなったくらいに必ず最後に行き着く店だったんですよ。

その店は何故か知らないけどいつもヘビーローテーションで
ちあきなおみが流れてたんですよ。

荻上
曲に行かなくてこれを聴きながらしゃべってもいいんじゃないか?
っていう感じがしましたけどね。

青木
このちあきなおみさんの歌を聴くと、パブロフの犬じゃないけれど
「あ、そろそろ家に帰らなくちゃ!」っていう気分になるんですよ。

荻上
もう今帰りたくなってるんですか?

青木
だからもうそろそろ帰ろうかと思ってるんですけど。

南部
これ何ていう曲なんですか?

青木
「夜へ急ぐひと」っていうね、だからまぁそろそろ帰らなくちゃいけないですよね。
曲はスタッフに選んで頂いたんですけど、そのゲイバーの店が・・
僕らはオカマバーって言ってたんですけど、面白い店で。


まぁルルさんって言うんですけど、それこそ大船渡ってという岩手県の出身の
ママさんがやっていて、キン子さんっていうんですけどね。

水上勉さんに「キン子」さんって付けて貰ったとかって言っていて
「あ、本当なんですか?」って言ったら、
「そうよ、私の声は琴のようだから、『琴』に子と書いて『琴子』って言うの」

周りにママに言わせると、「違うわよ、あいつは金に汚いから『キン子』って言うのよ!」
とかって言われたらしいんだけど(笑)
何故かみんなキン子さんを愛していて、最後に必ずそこに行き着くんですね。
この間、引退されて大船渡に戻られたんです。

荻上
それって佐野眞一さんの・・。

青木
そうそうそう!あのー、「津波と原発」っていう本の中に出てきます。


荻上
何か覚えてると思ったらそれですよ!

青木
そうです、そうです。
大船渡で被災して、僕は基本的に震災の取材はしたんですけれど
なんか僕「書けないなぁ」と思って結局どこにも書いてないんですけれど、
取材だけはしてその時にキン子さんのところに・・避難所にいたんですけどね。

避難所に行ってなんかまぁ救援物資とも言えないような
ラーメンとか届けたら、まぁ元気そうだったので良かったなぁと思ったんですけど。

南部
いやー、嬉しかったと思いますよ!

青木
こんなことを言ったら岩手の人たちはあれかもしれないですけど・・
田舎でゲイだとなんていうのかな・・中々受け入れられないのかな?と思って
ひょっとすると男に戻ってるのかな?と思って、
あんまりね・・「ゲイのルルさん居る?」とか言えないなとか思って行ったら。

避難所に行って「あ、久しぶり!」って僕が言ったら完全にそのまんまで
「あら、青ちゃん!お久しぶりね!」って言って出てきたから。
「ああ、なんだここでも受け入れられてるんだな」って思って。

でなんか避難所で炊き出しとか全部キン子さんがやっていて
本当避難所でも暖かく見守れてて、中々いいなぁと思いましたよ。

荻上
本当にたくさんに思いとか出会いがギュッと詰まった曲なんですね。
ゴールデン街の話をする青木さんが好きになりました。

南部
大船渡の懐の深さも分かったところで、青木さん今夜はありがとうございました!

(了)

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