2013/01/05

ライター・藤木TDCが語る「会田誠の作品は現代美術として分かりやすいです」

今回は、2012年11月23日放送・ニュース探求ラジオDig
Digtag「藤木TDCのCDT」を起こします。

音声は配信期限を過ぎたためありません。

藤木TDC(以下、藤木)
僕自身が自分に似合わない場所って
思ってる場所がいくつかあるんですけども。
例えば、六本木ヒルズなんかはその最たるものなんですけど・・

江藤愛アナ(以下、江藤)
似合わない、ウフフ(笑)
嘘ですよ!

藤木
人に言われるとムカっとくるんですけども(笑)
自分の中ではまぁそう思ってるんですよね。

でも一昨日の21日の水曜日、六本木ヒルズに行って参りまして。
森タワーのですね・・1番高いビルですね、六本木ヒルズの中の。

53階にですね、森美術館という美術館がありまして
そこでですね開催中の、
「会田誠展 天才でごめんなさい」という企画展を見てきました。


11月17日から始まって、長いですね3月の31日まで
開催されるというスケジュールが発表されてる美術展・展覧会なんですけども。

まぁ知ってる人は会田誠って名前を聞くとね、
「あぁ会田誠ね」ってニヤニヤしたりとかね、
「会田誠!?・・あぁ」ってすごい嫌な顔をしたりとかですね・・

会田さんはすごい有能な現在の日本の現代美術の中で
本当にカリスマ的というか話題作・問題作っていうのを
どんどんどんどん作ってる人なんですけども。

知らない人のために説明すると、
1965年生まれ。だから僕より3つくらい年下ですね。
東京芸術大学の大学院を修了してまして、
洋画とか日本画とか立体とかですね、映像とかインスタレーションっていう
創作過程を見せるような芸術活動を・・まぁ何でもやる人なんですけども。

有名なのはですね、日本の伝統美術の様式みたいなものと
オタク的だとか現代的なモチーフを重ね合わせた作品のものとかが
割と有名というか、見せると「あっ!これみたことある!」っていうふうな
ものとして出て来る人なんですよね。

本当に90年代以降、最も重要な現代美術作家のひとりですけども。
っていうと村上隆さんという人がいて、
村上隆さんってヴィトンとコラボしてアニメのキャラクターみたいなのを
ちょっと凶暴なキャラクターをデザインしたバッグとか商品を作ってみたりとか。

可愛いお花のピースマークに似たキャラクターとか
「DOB君」っていうですね、ネズミみたいな見た目のキャラクターで
有名な人なんですけど。

そのヴィトンの丸メガネの太ったおじさんと混同されがちなんですけども、
聞いてる人も「あ、その人ね!」と思って想像した人いるかもしれないんですけども。


そうじゃなくて、2人とも同世代だし、
よく比較されたりとか名前も似ているので混同されたりするんですけども。
あと、モチーフも同じオタク文化だとかアニメだとかを使ってたりするので
混同されがちなんですけどちょっとかなり2人とも違っててですね。

村上隆ってどっちかっていうと商業主義的な物が好きだし、
どんどん芸術でお金儲けしようみたいな考え方を表明してるし、
ハイカルチャー志向でどっちかっていうと裕福な人たちに
向けるような文化発信の仕方をするんですけども。

会田誠さんの方は、サブカル的というかアングラ志向というかですね。
もっと極端に言うと違法なものギリギリなところまで表現するような
やり方をする人なんですよね。



だからちょっと企業の支援は受けにくいというか
企業の商品にはなりにくいわけですね。

例えば、違法性っていうのは要するに残虐であるとか
グロテスクであるとか貧困を感じさせるものが多いとか
あと最も有名なのは美少女とか性妄想みたいなものを
よくモチーフにするんですよね。

だからその部分が地方条例の漫画・アニメ規制とかですね、
そういうものとちょっとぶつかる可能性があったという・・。

だから人によってはそれを見て顔をしかめたりとかですね、
不快な気分にさせられるもの、まぁ残酷だとかポルノ的だとか
という意味でね。

知ってる人はね、会田誠って聞くと
「あの美少女の人ね」ってニヤニヤニヤってしたりとかですね。
美少女の先のもうちょっとドス黒い世界を想像して、
ニヤニヤとか「それヤバくね?」とかですね、
顔に出る人が多いんですけど。

僕自身もそこに芸術的な意義が有ると思ってるんで
その事はまた後で話しますけれども。

そういうふうに人をニヤけさせたりとかですね、
しかめさせたりする作風なのでちょっと展覧会っていうのは
東京で大きいのは出来にくいんじゃないか?
みたいに思われていたんですよね。

石原慎太郎前知事がですね一時、
彼のことを辛辣に否定してたっていう話を聞いたこともあったりして
まぁその後認めたっていう話もちょっと聞いたりしたんですけども。

やっぱり条例なんかと、漫画規制条例なんかとだいぶぶつかる部分があるので
出来ないんじゃないか?と思ってたんですよね。
そしたらですね、森美術館という六本木ヒルズのど真ん中で
大々的な個人展ということで・・「大丈夫かな?」というのと
「横槍が入らなければいいなぁ」という・・
「早く観ていた方がいいのかな?」と思ってパッと行ってきたんですけども。

まぁどんな作品か話した方がいいと思うんですけども。
具体的に作品を見せながら話そうと思ったんですけども。
なんとですね!展覧会に行ったらカタログが売ってるじゃないですか?
「図録」って言うんですけど、あれがまだ売って無かったんですね。


江藤
あら、これから?

藤木
間に合わなかったんだと思うんですけども。
「12月中旬発売」とか書いてあってですね、
中が真っ白な見本だけ置いてあって「それは・・」と思ったんですけど
そういうガッカリ的なところも会田誠的でいいのかな?と思ったりしたんですけども。

今日はですね、会田さんの画集を図書館から借りてきまして
「買えよ!」っていうんですけど4,800円もする本ですからね。
図書館で借りて来ました、見ながら・・
リスナーの方、見えなくて申し訳ないんですけど。
江藤さんの反応から想像して頂きたいと思うんですけども。

まずね、展覧会入り口入るとバーンとこれがお出迎えするんですね。
これね「鶯谷図」っていうんですけども、綺麗でしょ?

江藤
綺麗!これ木ですかね?ピンクと白の・・

藤木
そうですね、桃とか桜の木ですね。
これ要するに元ネタがあってですね、
長谷川久蔵というですね、安土桃山時代。
豊臣秀吉の時代の人が書いている美術の教科書とかにも
たまに出て来るんですけども
金箔にですね山桜を描いたふすま絵なんですね。
これが元ネタなんですよ、そっくりでしょ?構図とか。

江藤
構図は似てるけど、全然色合いとかがなんて言うんですか?違う・・

藤木
で、実はこれ現物をよく見ると分かるんですけども
ものすごくピンクとか黄色とかで綺麗じゃないですか?
これあのもともと長谷川久三の絵は金箔の上に桜の絵を描いてるんですよ。
それが日本的な伝統だとか、日本人の象徴である桜だとかっていうので
もう国宝なんですけれども。

会田誠の「鶯谷図」はですね。
金箔の代わりに下に貼ってあるものがピンクチラシなんですね。
ピンクチラシって今はもうないから、分かりにくいと思うんですけども。

ラブホテルなんかから電話を掛けて、
女の人を呼んでエッチなことをするという業態がですね、
まだ90年代の作品なんで90年代は携帯があまり普及してなかったんで・・

江藤
固定電話?

藤木
固定電話というより、公衆電話から電話ボックスから掛けてたんですね。
電話ボックスに、特に鶯谷みたいなメッカには
いっぱい貼ってあったんですよ、そのガラスの面のところにね。
それを収集してきて、それを金箔の代わりに作品の土台にビッシリ貼り込んで。

で、ピンクチラシって知ってる人は思い出して欲しいんですけど。
だいたいピンクっていうのはエッチな意味なんですけれども、
ピンク色なんですね、蛍光ピンクって言ってですね、
僕ら業界人は「ケーピン」とか言うんですけども。
もっとプロっぽく言うと、「DIC584B」と言ってですね、
大日本インキの「584B」というですね、
ギラギラの蛍光ピンクのインクを使ったものになると。


これをビッシリ貼り詰めると、あたかも桜とか桃の花が
咲いているかのようにものすごく綺麗に見える。
だから、それをひとつの日本の狩野派の伝統的な絵画の
パロディとして作ったものなんですよね。

実は、素材は風俗業のチラシでしかも無許可営業の店も多いし、
アングラだし、日本のダークサイドじゃないですか?
これ例えば、多くの男性の生物的な本能とですね、
好まれる美術センスがですね、創りだしたものでもあるわけですよね?

一時はその都内の電話ボックスどこにでもあったもので、
そういった意味では金箔の代わりに使って日本人の欲望とか
センスからも生まれて来たものは実は離れて見ると綺麗だっていう意味では
日本人の伝統的な意識と直結してるんだ!ってことを
表現しているんだと僕は思うんですね。

これ画集なんかで見ると分かりにくいんで、
実際近くで見ると本当にビッシリ・・

江藤
結構大きいんじゃないですか?

藤木
そうそう、結構デカいですよ。
本当にピンクチラシを貼り込んでる状態っていうのもよく分かるし、
遠くから離れてみるともの凄くビビッドで綺麗なものが
近くで見ると電話番号が全部書いてあったりとかですね。
AV女優とかセクシータレントさんの写真が勝手に使ってある
ピンクチラシなんで、「あっ、ここにこの人がいた!」とかですね、
「Aさんが居た!」とかですね、そういうのが分かったりして
非常に意味が鮮明に実物を見ることによって分かったりするんですよね。

あと、「戦争画リターンズ」っていうシリーズがありまして
「戦争画」っていうのはですね、太平洋戦争当時に
戦意高揚のために軍人とか軍事作戦を賛美する、称揚するような絵を
有名画家に国が描かせてそれで日本中を巡回して見せたんですね。

今みたいにハイビジョンのテレビとかないし、
映画も低解像度で白黒だったりしたから、こういうカラーの油絵とか
細密な絵っていうのがすごくインパクトがあったんですよね。
それによって戦地の兵隊さんはこんなに頑張ってる!みたいなことを
巡回展覧会とかやって戦意高揚したんですけれども。

実は「戦争画」っていうのはその後、
戦争犯罪に結びつくってことでタブーとされて来たものなんですけども。
実は日本のサブカルチャーの原点にもなっていて、
プラモデルの軍艦とかゼロ戦とかの箱絵になって、
箱絵を描く人とかが凄く有名になったりとかですね。


あと、SF小説とかの表紙絵みたいなものに結びついたりとかですね。
そこから始まって、「ヤマト」だとか「ガンダム」だとか
「エヴァンゲリオン」だとかっていうものに至るという
そういった脈々と続くものがあるものなんですけれども。

会田誠も「戦争画」っていうものに影響されててですね。
自分で「戦争画RETURNS」っていうようなシリーズを描いてるんですよね。
例えば、一番有名なのが「紐育空爆之図」というですね
これはニューヨークの街がゼロ戦によって爆撃されてるという
まぁ妄想というか実際には無い世界。

あと、9.11みたいなものを想像させるというんですけども。
これ96年の作品なので全然ニューヨークの9.11よりも
前に描かれてるんでよね。

これもやっぱり元ネタがあってですね、
狩野永徳の「洛中洛外図屏風」っていうですね。
これも美術の教科書なんかに時々出て来る非常に有名な国宝の絵ですよね。

これみたいに上空からパノラマで
人間の目ではなかなか見られないようなものを描いててですね。
実際に、この「紐育空爆之図」っていうのは
画集で見るとよく分からないんですけども、
ゼロ戦のところがね全部3Dのホログラムペーパーで作って貼ってあるんで、
ものすごくメタリックで綺麗なんですよね。
あと、下地に日本経済新聞の新聞紙を使ってたりとかですね。

江藤
なんで?

藤木
日本の経済というものと、
「もしニューヨークが空爆されていたら?」みたいな
戦中にもし日本が勝っていればみたいなのを重ね併せたりしてるという
いろんな意味があるんですけども。

素材も意味も多層的なものであるというのが
実物を見るとすぐにすごくよく分かるんですよね。

こういうのもある一方、やっぱり会田誠なので
美少女というモチーフもあってですね。


「美しい旗」という絵があってですね、
やっぱり「戦争画」に影響されてるんですけれども。

江藤
制服を着た・・

藤木
セーラー服を着た女の子が日本の旗をもって
傷つきながらも立っているというのと・・

江藤
向かいは韓国?

藤木
そうですね、たぶん朝鮮高校のチョゴリ制服みたいなのを着た
女の子が旗を持って立ってるっていう2層の作品になってるんですね。
すごく細密な独特な作風を感じさせる・・

江藤
別々の絵だけど、お互いに向き合ってる感じが・・

藤木
でもね、実物を見ると4畳半アパートとかにあるふすまに描いてあるんですよ。
で、裏返すと4畳半のふすまになるんですね。
ふすまを2つ蝶番でくっつけてあるだけなんですよ。

実はそれは、4畳アパート的な妄想と
現代の戦意高揚というか、現代人が求めてる戦争の姿みたいなものが
実は表裏一体であるみたいなことをですね意味してるんじゃないかな?と思わせて
やっぱりちょっと意味が立体化してくるんですよね。
そこに現代美術っていうものの面白さというか興味みたいなものが
あるんですよね。

あと会田誠なので申し訳ないですけど、やっぱり美少女ということですね。
有名な「犬」シリーズという「雪月花」とか「犬」という題で
有名なものがあるんですけども。

こういう女性が全裸で肘と膝から切断されている女性がですね、
首輪を付けられてるというのをですね、鏑木清貴とかですね
非常に日本の美人画の大家のようなタッチで描いてるんですね。

元ネタは永井豪先生の「バイオレンスジャック」っていうですね
劇画があって、それに「人犬」ってキャラクターで出て来るものが
あるんですけども、まぁそれが元ネタだと思うんですけども。


これよりもっと残酷なものとかもあるので、
成人向けコーナーっていうのが作ってあるんですよね。

江藤
あ、子供は入れるけど子供が見られない場所があるんですね?

藤木
そうそう、「ご遠慮下さい」っていうふうに。
それがね、のれんが掛けてあって入っていくときに
江藤さん分かんないと思いますけど歌舞伎町とかに行くと
「DVD」って書いてですね、今は少なくなりましたけど
お店があってですね、のれんで入っていくDVDの・・
何のDVDっていうのは言えないですけどお店があったんですね。
それをちゃんと模してるっていう感じが面白かったりとかですね。
あと成人向けのところに人がパーッと居て(笑)

江藤
そこが一番人が多いんですか?

藤木
人が多いっていうわけじゃなくて、
すごい人がいっぱいいてビックリしたりとかですね。
「やっぱり皆こういうのを見に来てるんだな」と思うんですね。

どうしても現代美術なので、ポルノ的なものとシンクロしなきゃいけない
っていう宿命にもあると思うんですけども。
現代美術だから現代人の心の奥底にある欲望みたいな者と
シンクロさせなきゃならないということがあるから、
どうしてもポルノ的なものとか選択せざるを得ないっていうのは
現代美術の宿命であると思うんですよね。

そういった現代人のドス黒い欲望を固定化するのも
芸術作品だと思うので必ずしも見てて気持ちいいとか
高尚な気分になれるってものだけが芸術ではないと思うので、
やっぱりこういうのは仕方ない。

僕はそこにやっぱりその会田誠の作品の
芸術的な意味があるなというふうな気はするんですよね。
3月31日までやってますけども、
興味ある人は非常に現代美術としては分かりやすい展示会なので
是非ですね、見て欲しいなと思います。


(了)

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