お菓子研究家・福田里香が語る「なぜ水戸黄門がいい人だと信じられるのだろう?」

2012/05/23

SUNDAY FRICKERS タマフル フード理論 福田里香

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今回は、2012年5月6日放送「SUNDAY FRICKERS」
「一之輔のそこが知りたい」福田里香さんの回を起こしたいと思います。

音声はこちらから


春風亭一之輔(以下、一之輔)
今なんですか?朝ですね。
ということは今7時15分くらいですから
朝ご飯食べながらこのラジオを聞いてらっしゃる方も多いでしょう。

この食べ物に注目した「フード理論」というものが
今、静かなブームになってます。

「フード理論」というのは、かつてのドラマやマンガに登場する
食べ物・飲み物のパターンを分析して
ストーリーにこの食べ物がどんな効果をもたらしているのか?
を読み解く画期的なものなんですよ。

これを提唱してるのが、お菓子研究家の福田里香さんという方で。
この福田さんが「フード理論」をまとめた本が出版されました。
タイトルは「ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50」という。


50個のタイプを紹介しているわけですね、フードの。
これ読んでもらえれば一番早いんですけど、
とりあえずこの福田さんにね、お話を聞いてみようじゃないか!ということで
電話が繋がっております。
福田さん、おはようございます。

福田里香(お菓子研究家:以下、福田)
おはようございます。

一之輔
よろしくおねがいします。
読ませて頂きました、「フード理論」

福田
ありがとうございます。

一之輔
面白いですね。
「なるほど、あるある!こういうの映画で見たことある、マンガである」というようなのが
50書いてあるんですが。

まずはですね、福田さんに聞きたいのはですね。
ドラマやマンガに出て来るそのフードに興味を持つきっかけは何だったんですか?

福田
一番最初は絵本とかそういったいわゆる幼少期に食べ物が出て来る絵本とかに
興味を持ったっていうのは本当に一番最初のきっかけなんですけど。

その後10代の頃におじいちゃんやおばあちゃんと一緒に見ていた「水戸黄門」ですね。
まぁそれで、「何で水戸黄門さんがあんなにいい人なのかって信じれるのだろう?」と
思ったのが直接な・・。


一之輔
嫌な子供ですね、ちょっとね(笑)



福田
そうですね・・。
でもやっぱり食べてるんですよね、黄門様は。
貧しい農民の家に行って、すごい粗末なものを勧められるんですけど。
助さんと格さんは止めるんですね。
「ご隠居様に何てものを!無礼者!」みたいな事を言うんですけど、
「よいよい。」と言って食べるんですよ。

対して、悪代官と腹黒い商人は
ものすごい豪華な鯛の尾頭付きなんかを目の前にして
何にも食べないんですよ!

それってなんか、すごい豪華なものを無駄にしてるというか
粗末に扱ってるじゃないですか!
それに雇われてる浪人者に至っては、
「先生もどうぞ」何て言われてもお酒すら口に付けないんですね。
本当に正体不明に見えちゃって・・。

逆に最後にうっかり八兵衛が峠の茶屋で
団子を喉に詰まらせて「待ってくだせぇ!お隠居様」なんて・・。

一之輔
定番のシーンですね。

福田
「ああ、こういうふうに使っているからご老公様はいい人だな」って
思えるんじゃないかな?と思って。

一之輔
それはすごいなー!
そこによく気づきましたね。

福田
なので、そのやっぱり下支えをしているというか・・。

一之輔
まずあの「フード三原則」っていうのを福田さんは提唱されていますけども。
「フード三原則」これは一体どういうものなんでしょう?

福田
これはですね、いわゆる今言ったような「いい人」と思って欲しい人
「悪人」と思って欲しい人、それから「正体不明」と思って欲しい人の
パターンをちょっと考えてみたんですね。

1.「善人はフードを美味しそうに食べる」

一之輔
さっき言った「水戸黄門」ですね。

福田
そうですね、大きな口を開けて物を食べることで
腹の底が見えるんですよね、キャラクターの。
だから感情移入しやすい。
美味しそうに食べるから、「あ、いい人だな」って思えると。

2.「正体不明者は、フードを食べない」

一之輔
さっき言ってた「浪人者」みたいな。

福田
そうですね、そうすると全然腹の中が見えないんですよ。
なのですごく正体不明に見えちゃう・・

食べるとしたら、例えばドラキュラのように血をすするとか、
ゾンビのように死肉を食らうっていうと正体不明に見えるんですね。
だから通常の人が食べない変な物を好んで食べるというのも
まぁアリだと思うんですけど・・・、というパターンですね。

3.「悪人はフードを粗末に扱う」

一之輔
扱いますねー粗末に、あいつらは!

福田
よく考えたら、大した損失じゃないんですよ。
例えば、美味しそうに焼けた目玉焼き。
これ原価でいえば数円じゃないですか?

だけどそれに食べずにタバコをジュッと押しつけたら
すごい嫌な奴に見えるでしょ?

一之輔
なんか見たことあるような気がする!



これ「三原則」がまずあって他にも色々ですね、
この「フード理論」50紹介されていますがいくつか紹介しますと。

「鼻持ちならない金持ちの子供は、食い意地が張って太っている」
そうですね、そんな気がします(笑)

「間抜けはフードを喉に詰まらせて焦る」
さっきのうっかり八兵衛のパターンですね。

福田
あの落語もそうじゃないですか!
私も落語を祖父たちと一緒に聞いていて、
本当に一番最初にお腹を抱えて笑えたのが、
「饅頭こわい」と「時そば」
だから、やっぱり分かりやすいんですよね!
食べ物が絡むと、小っちゃい子にも。


一之輔
食べてるところの仕草で
小っちゃい子はフワーッと食いついたりね。
「この人は共感出来る人なんだ!」っていう
空気が生まれたりなんかしますけど。

福田
やっぱり落語家さんを示すステレオタイプフードって
蕎麦じゃないですか!
色んな落語があるんだけど、ズルズルズルってやるのが
やっぱりステレオタイプになってるっていうのは
それだけ強いと思うんですよ!

一之輔
もう表であった人、「蕎麦食ってみろ、蕎麦食ってみろ!」って言われます(笑)
落語にも通ずるんだなぁ・・。

あと、面白いのは、
「動物にエサを与える人はみな善人、
自分が食べるより先に与える人はもはや聖人並である」

これはどういうことですか?

福田
結構ドラマなんかで、マンガでもアニメでもそうですけど。
省略されがちなシーンが動物が出て来るのに食べ物をあげないんですよね。
だから作家性によるっていうか、そこがロマンティックだと思えない人は
やっぱあげないんですよね。
そこも面白く描けないと思えない限り、作家は神だから書かないわけですよ。

例えば、大人気の老若男女に好かれている宮崎アニメだと
宮崎駿監督は必ずあげるんですよね。

一之輔
ペットというか相棒の動物にエサをあげるシーンが出て来るということですか。

福田
そうですね、ナウシカも自分が飼ってるペットに
「チコの実」をあげているし。
至るところであげているって感じなんですね。


一之輔
番ちゃん、なんか気になったのを一つ・・。

番井奈歩(以下、番井)
色々ね、あるんですけれども。
「スーパーの棚の前で2人が同じ食品に同時に手を伸ばすと恋が生まれる」

福田
これも出会いのパターンとしてありがちってことですよね。
たぶん他人から見れば「単なる偶然」なんですけれども、
その時間・同じ日・同じ時間に同じ物に手を伸ばすということで、
恋が始まるっていうのは、何か象徴的だと思うんですよ。
話としてみんなで感情移入出来るというか。

まぁ「絶対この人なんだ、運命の人は!」って思うっていうのは、
恋のステレオタイプでもあるじゃないですか。
そう思わせるきっかけになるということですね。

実は何でもいいんですよね、本屋の前で本をとか。
でもやっぱり食べ物を選んじゃう人は
そこがロマンティックなんだって思ってるってことですよね。

番井
食べ物の好みも大事ですしね、
そこで合う時点で1個ハードルは越えてるよね!
みたいなところはありますよね。
確かにね、好みの問題で。

一之輔
私聞きたいのは、
「カーチェイスではね飛ばされるのは、いつも果物屋」
ハハハハハ、本当に果物屋は災難ですよ。
しょっちゅう突っ込んで来ますよ。

福田
もう世界中の果物屋が被害に遭ってると思います(笑)

一之輔
ゴロンゴロン洋梨とか転がってますもんね、うん。
あれ何でなんでしょうかね?

福田
やっぱり、はね飛ばされやすい道に
実際も出店してるって事なんですよね。
ちょっとその道路にはみ出しながら出店してるっていうのは、
世界中に見られますし。

あと先程おっしゃったようにゴロゴロ転がりやすい形なんですよ。
だいたい果物って丸いんで。
ちょっとした接触でも派手な事故に見せれるんですね。

一之輔
アジとかサンマとかじゃちょっと見た目悪いですもんね。
ビシャビシャはいやですよね。

福田
だから丸いっていう形は私は分析してるんですよ。

一之輔
彩りも派手だしね。

福田
例えばスイカなんか割れたりなんかしたら、
一瞬、「血か!」と思わせるじゃないですか!
でも助かってたとかね、ちょっとしたオチもつけれると。

一之輔
もう一つくらい聞いてしまいますか?
「男前が水道の蛇口から直接水を飲んでいると、
可愛い子ちゃんが話し掛けてくる」

ハハハハハ、男前じゃなきゃだねなんだよね。
これ面白いですね、見たことあります。どっかでね・・。

福田
私の一番小さな頃の記憶は、西部劇なんですよ。
だから馬に乗ったヒーローが宿場町にやってくる。
井戸の前で水を飲んでいると可愛い子ちゃんが話し掛けてくるっていうね。


それがまぁ例えば、学園ドラマにしてもそうだし、
社会人もの、そうすると給湯室の前で話し掛けてきたりとか(笑)

一之輔
あ、そうだ!
なんか水はそういうものを誘うんですかね?

福田
やっぱりそういう事があると思うんですよね。

一之輔
「水を飲む」という行為がね・・。

福田
やっぱり、「生命維持装置」じゃないですか一番の。
だけど本当に人間が水に浸かってしまうと息が出来なくて死んでしまうという・・
溺れてしまいますよね?

だけど人間の構成要素の中の70%が水分なんですよね。
だからすごい「不思議だなぁ」と私は常々思っていて。
あのー「吊り橋効果」ってあるじゃないですか?
吊り橋の渡る時のドキドキを恋と勘違いしてしまうと。
やっぱり人間にとって水辺というのは、ドキドキする場所何じゃないかな?と思うんですよね。

一之輔
深いですねー。読みますね、随分!
この本にそういう事が50書いてございますよ。

これ読むことによって映画やドラマの見方も
だいぶ変わってくるというか、深読み出来るような気がしますけども。

福田
お好きなドラマやマンガをもう一回、フード視点で読み直して頂くと
新たな発見もあると思うんですよ。

出てこない作品が悪い作品というわけじゃないんですよ。
じゃあ、食べ物が出てこない代わりに何で表現しているのかな?って
読んでいけば、それはそれで楽しいと思います。

「この人全然書かない、どうしてだろ?」って思ってもいいと思うんですよ。
違う事が表現してあるかもしれないので。

一之輔
フードとは違う何かが・・
是非ともこれ読んでみて頂きたいと思います。


(了)

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