2012/03/24

堀井憲一郎が語る「観客として大丈夫なラインは7人」

今回は、キラ☆キラ2012年2月7日(火)放送分
堀井憲一郎さんのペラ☆ペラを起こしたいと思います。

音声はこちらから


堀井
寄席の方、演芸の方の言葉で「ツ離れ(ツばなれ)」って言葉があるんですね。
これは、1から10までの数を読む時に、
ひとつ、ふたつ、って読んでいって、やっつ、ここのつ、で
とう で「つ」がなくなるんで、10になることを「ツ離れ」って言うんですね。

つまり、演芸場って最初開けた時とかって、
前座さんしか出ないんで、3人とか4人しかいないもんなんです、普通ね。

それからどんどん人が入ってきて、
「もう、ツ離れしたか?」「ツ離れしました!」「じゃあどうする?」とかっていう
ふうにやったりするんで、10人以上入ることを・・

つまり、10人以上はいることがわざわざ隠語になってるっていうことが、
10人以下の客が、10人になるというラインが割と
寄席演芸の世界では大事だって言う意味ですね。
それぐらいしか客がいないということがあって、「ツ離れ」というのがあるんですけど。

ところが私、寄席好きだし・・
空いてる寄席がすごい好きなんですよね。

豊田
じゃあむしろ「ツ離れ」してない・・

堀井
「ツ離れ」はまだいいんですよね。
聞いたこと無いんで私が作った言葉でですね、
「ツ戻り」っていうのがあるんですね。

豊田
ツ戻り!

堀井
要するに、13人くらいいた客が減ってって
10人を切ってしまうみたいな事があったりします。
これはね、寄席演芸でトリ(最後)の方を目当てに出てるんではなくて、
「東京の方に来たから、どうせなら寄席寄っていこうか!」っていうんで、
でも夜って21時までやってたりしますから、
その前に7時半くらいに中入りあったら、「帰るか!」って。

その辺で帰っちゃうっていうのがあって、
客が少ない時は本当に中入りを入れないっていう手段をとるらしいですよ。
中入り入れたら帰られちゃうから!
「無しだ!」っていうような事をするようなのがあるんですけど。

私はだから色んなところの数少ないのに行って、
現実に昨日とかは、両国にある「両国寄席」っていうのに行って来たんですけど、
これは11人でしたね。


最初から11人いたんで、「これすごい!」と思ったら全然増えなかったです(笑)
見に来た人が最後までいて、まぁ1人帰られて入ったんで
プラスマイナスゼロだったんで、11人で。
でも11人くらいだと大丈夫なんですね。
私ね、何回か経験してねラインが分かりました!7人です!!

豊田
7人?
その7人は・・

堀井
7人以上いるとまぁ大丈夫かな?と思うんです。
で、7人になると「ヤバいっ!!」って思うんです。
他の客を見出すの!演者よりも!

豊田
どう・・どういう事です?

堀井
最後の一人になったら大変なことになるから、
他の奴が帰るなら、帰ろう!!っていう気持ちになるのが7人なんですね。

去年の12月、割と本当に最近ですよ。
最近、寄席ってそんなに流行ってないわけじゃないない12月に
池袋演芸場の夜席にちょっと遅めに入ったら、パッと開けたら5人でした!
で、池袋演芸場って横に広いんですね、全員入り口側に寄ってくるんですよ。




でね、新しい客が入って来ると客が全員私の顔を見ますよね。
「お、増えた!」ということで(笑)
演者との問題じゃなくて客が増えるのかどうかという気ばっかりしてて、
「1人増えたから、これ帰っていいかな?」ってなことに(笑)

別に聞きたいとか聞きたくないとか関係なくなんとなくいるんで、
「これすごい減ってきたら辛いな・・」ということになってくる。
その時とか左側・下手側に客が5人。
真ん中から上手側に1人もいなくて下手側に5人が入ってるんで、
俺が入った時はひでや・やすこさんという人が漫才をやってたんですけど、
その2人は入り口側に斜めに立ってやってました(笑)


上手側に1人も客がいないから、
「うわっすごいシュールな風景!」とか思って、
完全に身体がそっち向いてやってるっていうのが・・。
今の寄席ってね、昼席が混んでるんです。

豊田
あ!そうなんだ!
夜じゃないんですねー。

堀井
夜は空いてってトリに向けて減ってくということが多いんですね。
顔付けというか出るメンバーにもよるんですけども、
昼席の方は、地方から来た客とかなんとか、観光客・・
上野動物園でパンダ見たら、じゃあ鈴本(演芸場)も見ていこうかとか。
東京タワーを見て、江戸情緒っぽいからちょっと見ていこうかっていうのもあるし、


ツアーも、あそこお弁当食べても怒られないんで、
お弁当とセットでこの時間帯に組み込んだり出来るんで
本来は落語好きの方から言わせると、弁当食いながら落語観れないんで、
弁当食いながら落語は観ない方が絶対いいんですけど。

まぁでも食べてても怒られないんで、ツアーはそういうふうに組まれるんですね。
食べてる人もすごいいて、演者はすごい嫌がってます。
どんな芸をやろうとも食欲に勝てないから(笑)

俺、浅草演芸ホールでずーっと弁当開けて、
ずーっと弁当の感想言い続けているオバさん5人組がいて(笑)


豊田
えーー、もったいない!せっかく・・

堀井
それはさすがに会場の人に・・
浅草演芸ホールであんまり怒られないけど、
「ちょっと静かにして下さい!」ってね怒られてて、
俺あんなに怒られてるのって、高校時代から観たことないわ・・っていう
そういう弁当の感想を言ってる人もいるけど
それはまぁ混んでる方ですよね。

この間の節分の日に、私は池袋演芸場に行きました。
これはものすごい立ち見になってました。
それこそ昼席なんですけど、平日なのに午前10時半行った人が
「かなり並んでるよ、12時開場なのに」って。
1時間半前から並んで入って、その日は豆撒いてくれるんですよ。
手ぬぐいとかくれるんです。
なおかつ、出ている演者がすごい良かったんですね。
そうなってくると混んでる事はあるんですけども。

すごいので言うと、柳家のある1人だけで会をやられる
独演会の方とかだったら、1人しかいない・・。

例えば公民館の和室で行ったら、
「お客さん、来られましたか!
お客さん1人だけかもしれないんで・・いいですか?」って言って
「いいですか?」って言っても「駄目だ!」って言うわけにはいかないけど、
まぁ入ったら、その時は後から来られてはあるんですけども。

豊田
1人だったんですか?しばらくは・・。

堀井
そう、始まる前はね。もう1人来て、2人でいって、
「いつも常連さんでもう1人来る方がいるんで、
開演時間始まったけどその人待ちましょうかね?」
ってまってたけど、6・7分来ないんで「じゃあ、やりますか!」ってやり始めたら、
5分くらい経ったらその人が来たんだよ!じゃあ3人になったの。

そしたら師匠が、「最初からやりますか」ってもう一遍リピートした事が・・
そういうなのとかありましたけど。

やっぱ一番すごかったのが名古屋に大須演芸場っていうのがあって、
ここやらなくてもいいのに毎日毎日昼夜やってて、客入んないんですよね・・。


で、ここはねちゃんと決まってて1人20分、1時間に3人。
それが2時間で1セット、それを2セット回すんですよ。

2年前かな?夏頃にいって入り口でお金払って入る時に、
開演直前に入ったからお金払って入る時におばちゃんが
「お客少ないですけどすぐ始まりますよ」って
パッと入ったら、ゼロだったことがあるんですよ(笑)

豊田
ゼロ!!

堀井
少ないじゃないだろ!!ゼロって言うんだよ!それは!!
俺一人で始まってしまって、その時はまぁどんどん入っていって
10人くらいで終わったんですけど。

その2ヶ月後にものすごい大雨が降った時に行ったら、
入り口でおばさんが「今は他にお客さんがいません」って
言われたことがあって、その時ははっきり言われたの!大雨降ってたから!

ということは2ヶ月前のと比べたら、「それかなりヤバいんじゃない?」
「来ないんじゃない?」っていう意味に聞こえて。
「少ないよ」って言ってゼロでもそれは来るという予定だけど、「居ませんよ」って・・

本当に来なくて、最終的に延べで5・6人は来たんだけど、
最高で3人くらいにしかならなくて。
で、1セット終わった後にお茶子さんが出てきて、
「もう1回やります?」

要するに2時間終わって、「次の2時間やります?」って言われて
3人だったんだけど、前にいた夫婦かわかんないのが「うんうん」って言ってるから、
出てきたら、もう1回同じのが出てきたら、
「同じか!」って言って帰ったんだよ!その夫婦が!!

豊田
えーー!!ということは?

堀井
俺一人きりになった!!
あのね、寄席で一人きりになるとね本当にかなり怖いんですよ。

豊田
どんな感じなんですか?

堀井
色物さんっていう、手品やるとかジャグリングやるとかという人たちが出るのが辛いです。
あの人たちは客に向かって喋るんで、俺しか喋らないし。
手品でなんかあったり、曲芸があったりなんかすると、
一応拍手しなきゃ進まないんで、いちいち拍手してたら、
「もうそんなお気を遣わずに・・」とかみたいなことになって・・

落語のマクラも大変なんですけどね、客に向かって喋ってますから。
そこは大変だけど、入っちゃうと演技なのでお互い気にせず聞けるんですね。
ただその時ね、大須演芸場って椅子が高いところなんですね。
結構300人くらい入るところなんですけど、
そこに座って真ん中へんに座ってたんですけど。

自分の椅子の横にところに荷物を置いといて、
その荷物がバタッと落ちちゃったんで、「落ちた!」と思って取ったんですね。
ということは、椅子から私の姿一瞬消えるんですよ。

消えてかがんで、その瞬間どうなるかというと、
落語止まりました、やってる人が(笑)

「うわっ!客がいなくなった!!」と思って。
多分ここから俺の想像なんですけど、そういう状況になった客って
いっぱいいるんですけど帰れないの!帰りたくても!!

どうするか?っていうと多分、
かがんでそのまましゃがんだまま逃げた奴がいっぱいいるんじゃないか(笑)
真田の抜け穴のような・・。

「しゃがんだ!いない!これは続けて良いのか?」っていうようなことになるような・・。
1対1はやってる方も大変だけど、聞いてる方が大変ですよ。
聞いてる方は、出てる芸人全部相手しなきゃなんない!
向こうは20分だけど、こっちは2時間いなきゃいけないから。
そういうこともあるけれども。

そういうのもあるけども、私は空いた落語が結構好きですよ、寄席でいうとね。
皆さんも寄席・・あの夜席は普通の寄席空いてるのでフラッと行ってみても
多分入れると思いますよ。


(了)

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