宇多丸が聞く「音楽にお金を払う時代はもう終わり、なのか?~ヒップホップ最前線~」(3)

2012/03/01

タマフル ミックステープ 宇多丸

t f B! P L
今回は、ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル
2012年2月4日放送・サタデーナイトラボ
「最新USA HIPHOP特集」(後編)を起こします。

前回分は、
宇多丸が聞く「音楽にお金を払う時代はもう終わり、なのか?~ヒップホップ最前線~」(1)
宇多丸が聞く「音楽にお金を払う時代はもう終わり、なのか?~ヒップホップ最前線~」(2)
にて起こしています。


音声はこちらから


宇多丸
ということで、最後第3部行ってみましょう。

第3部 「なぜフリーで出さないと行けないのか?~アメリカのヒップホップ最新事情」

宇多丸
はい、ということでここから先は、
「HIP HOP HYPE」の中の人、お願いします。

中の人
よろしくお願いします。

宇多丸
呼びづらいわ!
えーということで色々質問していきたいと思うんですが、
まずミックステープのそもそも出だしとしてそうなんですけど、
まぁオフィシャルではないと・・、例えばねぇビートジャックにしたって
オフィシャルで出ているビートだって、それを勝手に使って歌ったりとか何でも良いんですけど。

イリーガルというか、グレーゾーンですよね?
まぁさっき言ったねぇ、プロモーションとは言えさぁ。
メジャーなレコード会社、
「こんなクオリティのものをホイホイ出されちゃ、おじさん困りますよ」って言ったけど、
本当に困るおじさんは、レコード会社の人たちじゃないですか?
あの・・どう思ってるのか?メジャーなレコード会社は、ミックステープという現象を。



中の人
まぁでも今はCDを出しても売れないってね、やっぱり不況というか・・そういう時代ですし。
結局そのメジャーなレコード会社がアルバムに向けてシングルをカットしていきますと
出してもそれが結局ヒットしないとアルバムも出しても売れないみたいな
そういう図式にもなっちゃってるので。

何て言うんですかね?アルバムへ向けての盛り上げで
もうシングルカットだけでは中々追いつかない状況に
本当これだけリリースが毎日のようにされていると・・。

そういう状況でもあるので、もう認めざるを得ない状況ではあるとは思うんですよね。
苦々しいとは思うんですけども。

宇多丸
まぁプロモーションとして一番効果的なのは間違いないだろうし。
本来なら曲をラジオでオンエアしてもらう、これは有り難いことじゃないですか?
でもミックステープでオンエア、かけて・・
要は聞いて貰うのが勝負なのに、あるところから
「何?聞かせたくないのかな?」みたいな風潮があるじゃないですか?
何でそこで制限かけるのかな?



中の人
そうなんですよね。何なんですかね、あれは?
「リージョンでyoutube見れません」みたいなね。

宇多丸
いや本当、本当!
まぁあるし、削除してあるもそうですしね。
オンエア解禁日とかね、ケチな事言うよな。
まぁうちもやってるかもしれませんけど。

ヤナタケ
そういうことが古いっていう事なんですよね。

宇多丸
はいはい、でもどっちにしろ身動き撮れないんだから、頼りしかなくなってる?

中の人
そうですね。元々ヒップホップはストリート発のミュージックでもありますし、
ストリートの動きっていうのはアーティストが一番詳しく知ってるわけで、
そのアーティスト主導でミックステープを出してもらって、
そこでミックステープのPVを作ってもらってみたいな、どんどん煽ってもらって、
オリジナルのアルバムにつなげるっていう。

そういうのが割と今、図式化されていて
ちょっと前なんですけど、「アルバムビ・フォー・ザ・アルバム」みたいな。
アルバムの前のアルバムみたいな冠を付けて出したりとかすることもあったりするし。

もう今や、シングルカットするノリで前哨戦的なミックステープを出すというのも
当たり前のようになっちゃってるみたいなね。

宇多丸
しかもシングルカットより遥かに手軽に出来るし、
あとプレイヤー側にとってみればダイレクトにさ、ダイレクトに出せるわけだから、
「そっちの方がよくね?」みたいな。
「意味不明なところに出てって変な話するより、よくね?」みたいな感じあるかもしれないよね。

中の人
そうなんですよ、アーティストにとってもその時代の早さって
本当に今、twitterとかってトレンドがどんどん移り変わっていて、
それもトラックの流行りだったりとか、リリックのトピックの流行りとかも、
どんどん変わっていきますので。

例えば今録った曲を1ヶ月後のアルバムで出しますってなると、
それはもう古くなっちゃったりとか。

宇多丸
1ヶ月で遅いですか!嫌になっちゃうなー(笑)

中の人
いやー本当にもう録り終わったらすぐ出したい!みたいな。

宇多丸
じゃあもうあれだな!
俺とかは最初からトピックを古くしとくんだな、もうな!

中の人
そうですね、もう早さで勝負じゃないですね。

宇多丸
昭和40年代の話しかしてないみたいな(笑)
そういう方向でいくしかねーな。

中の人
やっぱりトレンドがすごい移り変わりが早いから
常にそのトピックを提供しないと行けないっていう状況に割となって・・。

宇多丸
トピックっていうのは、そのなんかしらtwitterでつぶやかれるようなネタっていうか、
それこそディスが始まりました!でもいいのかな?

中の人
それこそ「ミックステープ今度出します!」みたいな。
じゃあそのミックステープのトレイラーというか予告編みたいな

宇多丸
ミックステープの予告編!

中の人
「ミックステープのPV録ります!、でその舞台裏の映像アップします!」みたいな
そういうのを段階的に小出しにしていって、
これミックステープなのに普通のオリジナルアルバムと同じくらいの
宣伝の仕方しちゃってるじゃん!みたいな(笑)

でもまぁ基本的にはそれはストリートプロモーションレベルなので、
そんなにお金がかかるものではないんで。
それはアーティスト主導でやっていくので、それでどんどん盛り上がった頂点のところで、
オリジナルアルバムをパーンッと出せばどーんと当たれば売れるみたいな状況にはなってますね。

宇多丸
そういう流れが出来ているということですか、はいはいはい。
あと何か動きありますか?

中の人
後はですね、その何て言うんですかね?
本当にトレンドの移り変わりが激しいですし、
トピックを提供していかないといけないというところもありまして、
まぁラッパーの方とかおつとめする方が・・(笑)

宇多丸
アメリカのラッパーだとね!
塀の中に行ってしまう・・。

中の人
ええ、そういう方は多々いらっしゃるんですけど。
そうすると6ヶ月とか1年とか空白の期間が出来ちゃう。
それもやっぱりアーティストにとっては痛手なんです。

宇多丸
特にそれこそ1ヶ月で遅いんだったら、死活問題だね、これは。

中の人
そうなると「○ヶ月ムショ入ります」って決まった途端に、
みんなもうスタジオに・・。

宇多丸
ああ、大慌てで!

中の人
もう入って!とりあえずいっぱい録り貯めるみたいな(笑)
PVもいっぱい撮っちゃうみたいな。
でそのおつとめしている間にそれを小出しに
「あれこの人、刑務所に入ってるんじゃ無かったっけなあ?」みたいな。

宇多丸
これはもうあれだよな、
2PAC商法みたいなさぁ(笑)
「生きてんじゃねえの?」みたいなさぁ、あの感じがちょっとそのハードルを下げたのかもね。


中の人
そうですね。
それぐらいエスカレートしているというか、
本当に「この人ムショ入ってるのか出ているのか、わかんないぐらい」みたいな
それぐらいの勢いでどんどん出していくっていう本当にもう過剰な感じになってますね。
逆にそれがもう今そのスピードが面白かったりするので。

宇多丸
じゃあメジャーなレコード会社とかアーティストもそういうのは利用をしていると。
当然まぁインディー系というか・・アーティストは色々使ってるんでしょうけど、
どんな感じになってるんでしょう?

中の人
さっきのAKLOくんの話じゃないですけど、
特にクルーとかどこにも属してないアーティストにとってみれば、
やっぱり絶好の場というか、自分をプレゼンする場でもありますし、
あのそういうのを出すことでやっぱり色んなブログに・・
良いミックステープを出せば、ヒップホップのブログだったりとか音楽サイトとかは、
本当に海外の方はいっぱいありますので、そこでどんどんコアなブロガー達から
良いリアクションを得られれば、それだけでプロップが高まって
それで契約をゲット出来たり、
featureing仕事をゲット出来たりっていうのに繋がっていきますし。

メジャーのレーベルからすれば、いちいちクラブに行ったりしなくてもですね、
ネットを見てれば新しい才能がガンガン発掘出来るので凄い便利なところではあるので、
結構インディーの方が活発ではありますよね。

宇多丸 
そりゃそうだよね。
使わない手は無いもんね。
良くさえあればブレイク出来るってね。
夢のようでもあり、ハードルは上がったぞよって事かもしんないけどね。

中の人
実際にそういうので、インディーからミックステープからヒットを生んで
メジャー契約をゲットしたアーティストって本当にいっぱいいて、
J・コールっていうアーティストとかはJay-Zのロックネーションっていうレーベルと
契約をゲットしちゃったりとか。


宇多丸
ああ、ドスンとした契約金をもらったんでしょうね。
これは金につながったパターンだよね。
最初は金を生んでなくても、とりあえず。

中の人
イェラウルフっていうアラバマのラッパーなんかは、
エミネムのシェイディーっていうレーベルと契約をしてそっからアルバム出せたりとか・・。


宇多丸
もう住んでる場所とか関係無くなってきてるんだよね。

中の人
はい、そういう場所とかは関係無いので本当にドリームというか、
1発当てられる状況になってますし、
それが本当に究極でいたのが、ウィズ・カリファという
ピッツバーグのラッパーなんですけれども。



彼なんかは一度メジャーと契約をして、
でも結局アルバムを出せずに契約を切られちゃったんですけれども、
2010年にミックステープ「Kush & Orange Juice」を出したんですけども、
それが出した途端にtwitterとかgoogleのトレンドのトップに立つぐらいの・・、
なんていうんですか?バズというか、話題になっちゃって。

それで火が付いちゃってメジャーと再契約して、
メジャーのデビューシングルの「BLACK AND YELLOW」という曲があるんですけども、
それはもう全米で1位を取っちゃったっていう、それくらいすごい現象も起きたりしてて。

宇多丸
旧来のやり方はダメだったんだけど・・、みたいな形だ。

中の人
さっきのドレイクやウィズ・カリファみたいなヒットの例が出来てるので、
もう割とそれが定番化というか・・、

宇多丸
成功のルートははっきり出来ていると。

中の人
去年とか、マック・ミラーという同じピッツバーグの白人のラッパーなんですけど、
彼もそのミックステープからブレイクして、
彼はメジャーと契約しないでインディーで出したんですけれども、
そのインディーのデビューアルバムが初登場でビルボードの1位取ったりとかね。
すごい時代になっちゃってますね。

宇多丸
それはもうとっくになっていると。
ということは、ちょっと結論に向けて急ぎ目になっちゃうけど。
つまり、ネットで勝手に音源っていうはその時点ではお金にはならないけど。
ある程度アーティストのキャリアを
保証するっていうルートが出来つつあるって事ですかね?

中の人
そうですね。
そこで成功すれば、次に繋がるというか次のステップに容易に繋がってくるので、
もちろんそこで失敗すればダメですけれども、
そこで良いアルバムを出して良いリアクションを得られれば、
次に繋がってくると言う感じですよね。

宇多丸
ヘッズたちのジャッジを経てということですね。
じゃあちょっと象徴的な1曲を中の人にチョイスして頂きたいんですが、何?

中の人
そんな中で今一番ホットなラッパー、名前覚えといて欲しいんですけど。
エイサップ・ロッキーというハーレムのラッパーがいるんですけども。
エイサップ・ロッキーの曲で「Peso」

宇多丸
これ聴きどころというか、ヒップホップどビギナーもいっぱいいるので。

中の人
これはリリックというよりもサウンドがすごいフレッシュでですね。
彼はニューヨークのハーレムの若いラッパーなんですけれども、
サウンドに南部のテキサスのチョップド・アンド・スクリュードという
スローピッチのミックスを取り入れて、
あれを取り入れているのが逆にフレッシュというか。

宇多丸
超遅くて、音が多分薄いっつうのかな?
引っ掛かりがないようにすら聞こえるような感じだよね?

中の人
ええ、でもそれが独特のグルーヴというかクセになるグルーヴを生んで、
一度ハマってしまうと抜けられないというか。

宇多丸
今、最先端ではこの感じでどっかん盛り上がってんだぞ!ということを
想像しながら聞いて下さい、じゃあ紹介して下さい。

中の人
エイサップ・ロッキーで「Peso」



宇多丸
遅いよ!!これは。
BPMどれくらい?

ヤナタケ
70くらいです。
これでニューヨークのクラブでモッシュしてるんだよね。

渡辺
もうじゃんじゃん、神輿並みの!

中の人
もうパンクのライブみたいな感じ。

宇多丸
でもその遅いBPMがまた流行り始めたのか何故か?仮説とかもね
また今度ね・・、
はーい、もうだいぶ時間も来てしまいましたので、
最後にこの一連のミックステープに興味持った人は、
さっき言った「Dat Piff」とか、日本ものだったら「JPRAP.COM」とか、
色んなところがあるのでそこにいってダウンロード数の多い奴とかを
とりあえずやってみるとか、評判がいいって事ですよね?
そういうので聞いてみればいいんじゃないでしょうか。
そして「INSIDE OUT」皆さんのやっている・・。

ヤナタケ
BLOCK.FMでやっている・・インターネットで見てください。
ここでですね、第1・3月曜日の深夜24時から
INSIDE OUT」っていうヒップホップの情報番組をね、
このメンバーでやってるんで是非聞いてみてください。

宇多丸
要は、まったくのビギナーの人も今日聞いてもらったようなことを踏まえつつ、
興味があったらネットでタダなんですから!
ぼちぼち拾い聞きしてもらって、聞けばちゃんとこの説明があって
曲かける番組ですもんね、もう分かりますよ!

プラス僕が前、おすすめした本とか一連読めば、
もうね!その辺の太いズボン穿いてる奴より確実に詳しくなってるわけですから。


ということで、結論めいたことじゃないですけど。
「音楽にお金を払う時代は終わりなのか?」という命題を立てましたけど、
そういう意味でプロモーションツールとして
その後ちゃんとビジネスにつなげてる人も出つつあるというか、
ちゃんとそのルートが出来つつあるということですもんね。

今すぐ終わりってわけじゃない、少なくともね。
そっから先どうなるか?10年後はまだ分かりませんけど。

ヤナタケ
むしろね、アーティストがタダで出してるので
むしろそこはもう楽しみましょう!!

宇多丸
聞く側にとってはこんないい環境は無いわけだからね。
後のことは俺たちが考えますということでもあるし(笑)

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