2012/01/18

映画監督・三宅隆太が語る「スクリプト・ドクターというお仕事」(2)

今回は、TBSラジオ・ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル
2009年9月19日放送分サタデーナイトラボ
「シリーズ"エンドロールに出ない仕事人"第1弾
〜スクリプト・ドクターというお仕事〜」

を起こしたいと思います。
3本のpodcastにて配信されているうち、今回は中編を起こしたいと思います。
(1)はこちらから

前編は「スクリプト・ドクター」というお仕事とは何なのか?
邦画業界でもあまり知られていない存在であり、名乗っている人も少ない
その職業について映画監督でもあり、スクリプト・ドクターの三宅隆太監督が
語られています。


音声はこちらから


宇多丸
ということで、先生!
今日はもうちょっと先生と呼ばせて下さい!
先生、具合の悪い患者さんこと脚本が
これは大体プロデューサーさんから持ち込まれるんですか?

三宅
そうですね、大体オファーはプロデューサーの方、映画会社の方、
テレビ局の方まぁ色々いらっしゃいますけど、
あの脚本家とか監督から持ち込まれることはまずないですね。

宇多丸
脚本家の方がっていうのは、ある意味それはちょっとなんかその・・。
それが出来るんだったら、この仕事もっと多分広まっているというか、
プライドの問題のみたいなね・・。本当はそういうことじゃないのに・・。

三宅
なんとなくね的だと思ってる方が多いみたいですね。

宇多丸
「医者なんかかかるか!」っていうね、
「俺は自分で直せるんだ!」っていうね。
ゴーリゴーリっていうね(笑)

ということで、では実際にスクリプト・ドクター三宅隆太さんが
持ち込まれた脚本をどのようにチェックしてるのか?という具体的な作業手順、
方法を教えていただきたいと思います。

三宅
よろしくお願いします。
えーとですね、まぁドクターというからにはですね、
なんと言いますか結構切迫した状態になって依頼がくることが多いんですね。

そのもうどう直していいかわかんない!お手上げ!っていうような
混乱した状態でくるものが・・。

宇多丸
ひょっとして元の最初に脚本家さんが書いた大元より悪い状態になって来てることも・・。

三宅
あります!かなりあります。
なので同じ精神状態に絶対落ちないために、
かなり客観性が必要なんですね、分析する時に。

それはプロデューサーも脚本家もかなり主観的になってる場合が多いので、その段階では。
手順としてはですね、一番新しい脚本家、最新稿を受け取って一度しっかり読み込みます。

この時にですね気をつけているのは、絶対に読み返さないっていうことです。

宇多丸
一回しか読まない?
ほうほうほう、それはどうしてですか?

三宅
読み返さないでわかるように書いてない、まず問題があるっていうのもありますけど、
まぁ客観性を保つためです。
で、最初に読み返さないようにしてその時の印象でですね、
誰のどういう話だったのか?っていうことをめくって確認せずに、
75文字以内で書き起こすようにします。
これは大体桝目でいうと75文字ですけども、
2行くらいの長さにそのシナリオの印象をですね、
物語の概要をまず書き出すというのが最初にやる作業です。

宇多丸
なるほど、なるほど。
これはあまり細部にまで入れ込まなくて、
ざっくりこういう話だよなっていうことを大掴みする作業。



三宅
そうですね、そうなんです。
というのは、やっぱ依頼がくる時にはですね、
「このシーンとこのシーンがこのシーンがおかしいと思うんですけど・・」
っていうような言い方を必ずされるんですけどもプロデューサーの方が。

シナリオっていうのは全体的に必ずつながってるものなので、
どこか1個だけ直して解決することっていうのはまず無いんですね。
どこかをいじると、必ずどこかに影響するっていうのがありますので、
その木を見て森を見ずじゃないですけど、
まずこのお話は、このシナリオはどこに向かって行くべきものなのかっていうのを、
色んな事情を聞かずに一番新しいシナリオから探るっていうのを最初にやります。

宇多丸
なるほど、それで2行の大雑把なお話の要約というか、
そういうものを作ると。

三宅
作ります。
なぜ2行かと言うとですね、これはあの外部からプロデューサーさんに
シナリオが持ち込まれたり、企画書を通したりする時によくあることなんですけど。

「じゃあこういう映画を考えました。こういうシナリオを書きました。
映画にしたいんですけど、プロデューサーさん読んで下さい。」って時に
180ページもあるシナリオをいきなり渡されると、
いくら知り合いの脚本でも「こんなん読めっか!」っていう話になるんですよね。
よく言われるのは、「簡単に言うとどういう話?」
「2行で言うとどういう話?」っていうような聞き返しをされる。
これアメリカだと20ワードで言えっていうような言い方をするみたいですけど。

ということは、その問題になってるシナリオをこっちが読んだ時に、
2行でその興味を惹くような物語として落とし込めなければ、
まずそこから問題があると。

宇多丸
これは劇映画として?娯楽映画として?

三宅
娯楽の劇映画としてですね。
アート映画の場合はまたちょっと状況が違いますけれども。

宇多丸
まぁ実際、我々が映画をいろんな要素がその後加わったとしても、
観た時に受けるエモーションというか、
こういうふうになって、こうなってグワーってなるっていうところは、
僕らが混乱しちゃうようだったら、
観客がね混乱しちゃうような入り組んだ話だったら入れないですもんね、やっぱりね。
根本はそういうある種シンプルな構造をもっているべきであると。

三宅
そうなんです。物語自体はシンプルであるべきだと思うんですよね。
それで実際、その過去20年間くらいのアメリカ映画で日本で公開された映画の
平均上映時間を出すとですね、98分くらいって言われてるんですけど。

この98分にうまく落とし込んでいる良作っていうのは、
大体2行で言えるんですね、どんな映画も。
っていうのはあるんです。

ですからプロデューサーさんがどういう依頼をするのかにもよるんですけども、
娯楽映画にしたいのになんか複雑になっちゃったみたいな話の場合は
必ずこの2行のこういうのを「ログライン」って言うんですが、このログラインを探る。

宇多丸
でもこれあれじゃないですか?
結構さぁ厄介な状況になっている患者さんこと脚本なわけですよね?
これ2行にまとまんねーじゃん、その時点でってという時ないですか?
そういう時はどうするんですか?

三宅
そういう場合はですね、2行にした時にこれこれこういう立場のこういう人物が、
これこれこういう物と出会うとか、
こういう目に遭ってこれこれこういう展開になるっていうことを
大体2行で言うんですが、
それが収まらない場合あるいは1行で終わってしまうシンプルすぎる場合は、
そのキャラクターとかですね、世界観とかそういった固有性を取り外して、
登場人物とその出来ことだけとかのパワーバランスだけをみて、
物語の原型というものを探るようにします。

宇多丸
もう本当に骨格の部分だけにしてまうと。

三宅
骨格の部分ですね。
これはですね、何でか?っていうと、
世の中に出回っている色んなタイプのストーリーの映画っていうのが、
全然一見違う話に見えても同じ説話がベースになってることがたくさんあるんですね。

例をあげるとですね、
オードリー・ヘップバーンの「マイフェアレディ」っていう名作がありますけれども、
あれとリュック・ベッソンの「ニキータ」は実は同じ話がベースになってるんです。





宇多丸
あれですかね、ただの女の子をこう仕立て上げてく話ということですかね?

三宅
そうですね、簡単にいうとそうですね。
ギリシャ神話のいわゆる「ピグマリオン」という話がベースで
キプロス島の王様のピグマリオンが生きた女性に対して不信感を持ってて、
それでまぁ彫刻で理想の女性像を作った。
で、その女性像に惚れ込む余りにこう食事を与えようとしたり、
話しかけたりしているうちに、だんだん疲弊していって、
アフロディーテっていう女神が命を変わりに与えてあげて、
彼は幸せに結婚しましたというような話があって、


これ別バージョンだと、その後彼女がいなくなっちゃって孤独なりました
っていうのもあるんですけど、
これがですね、「マイフェアレディ」と「ニキータ」っていうのは
根本的に同じ話がベースっていう。
ただそれは一見すると全然違う映画なんですよね。

宇多丸
ジャンルとしてね、映画はなんか割りとジャンルでわけちゃうから、
「マイフェアレディ」のトーンとね、アクション映画である「ニキータ」とは
全然違うものに見えちゃうけど・・。

三宅
でも例えばそれを男と男っていう関係にして、ホラーにしてですね、
科学医療みたいなものを加えていくと、
「フランケンシュタイン」になったりとかですね。



宇多丸
あーー、そうか!
何か人工的に自分の思い通りに仕立て上げていったものが・・という。
同性にするとそうなるとか。

三宅
これを固有性を残していくと、見つけらんなくなるんですね。

宇多丸
人造人間が、とか。

三宅
暗殺者が、とか花屋の娘と言語学者がと言ってると見つけられなくなるので、
色んな枝葉の問題にとらわれてってしまうので、話の骨格をまずそこで探る。

宇多丸
それこそじゃあその力を持った側の男が、みたいなことにしていくという事ですかね?

三宅
そうですね。
あるいは、男すら剥ぎ取ってもいいのかもしれません。

宇多丸
力を持った側の人物がみたいな、その力を利用しながらみたいな。
そこまでやっていくと。

三宅
そうすると、大体が今たまたまピグマリオンの話しましたけど、
色んなタイプの話にこう落とし込めていけるんですね。

世の中のストーリーっていうのは実は36種類しかないっていう説があってですね、
そういったものに大抵は落とし込める。
そうすると、ログラインの問題っていうのは、
その段階で本質的にはどこへ向かえばいいのか?っていうのが
見つけることが出来るんですね。
そこがおかしかったら、まずそこから直していかなければいけませんし、
もしそこはクリアだ!ってなった場合は、次は具体的な構成を見ていくていうのが、
プロセスとしてあります。

宇多丸
一番最初のログラインを作ってみることで、
お話が最初にもうこの話が目指そうとしているとこが
正しいのか、間違ってるのか?をチェックするということですか。

あとちょっと戻りますけど、2行でログラインっておっしゃったじゃないですか?
1行だったりして短すぎる、シンプルすぎる場合、これはやっぱり良くないんですか?

三宅
これは傾向としてよくあることなんですけど、
アメリカの娯楽映画は大体2行で言えるんです。

で、ヨーロッパの映画の中に10行かかってしまうか、1行で終わっちゃうか、
っていう傾向があってですね、どういうことかと言うと、
アメリカの映画の2行でログラインの場合はまず1行目に
まず主人公の日常の状態っていうのがあって、
2行目でそれが変化成長した状態に大体なるんです。

宇多丸
「これこれこういう主人公が」が1行目で
「◯◯してこうなった」が2行目っていう。

三宅
以前、「ボルト」の評の時に宇多丸さんがおっしゃっていた
「物語は行って帰る」っていうその行ってで終わっちゃうのが1行ですね。



宇多丸
「犬がいて、行った」

三宅
行った!終わり!!映画か?っていう。

宇多丸
ある種そういう違和感を売りにする映画であればいいけど、
先ほどおっしゃったように一般の普通の娯楽映画を目指すのであれば、
そんなイレギュラーなことはやめなさい!と。

三宅
あと、ヨーロッパの映画が何故そういう傾向が多いかというと、
人物の外側で起きていることというよりも人物の内側で起きていることを
ドラマとしてとらえる傾向があるので、
やはりどうしてもそこにはストーリー性がちょっと希薄になるというのがありますね。

宇多丸
具体的に何かお話として起こらないけど、
この人物の中身ではこういう葛藤が起きてると思われるというようなこと。

三宅
そうですね、物語で映画を見せていくというのとはまた別の習慣があったりしますんで・・。

宇多丸
なるほど、なるほど。
まぁでもここで言えば娯楽映画の王道であるところのアメリカ映画型と言いますか、
的なところをということですね。

ではですね、まぁログラインはクリアしたとしましょう。
骨格は良かった、ただどこが具合が悪いんだ?と。

三宅
そうするとだんだん大から小に入って行きます。
大きい外側から中に入っていくんですけども、
次確認するのは、今度は一番新しいシナリオを時間軸に沿うかたちで、
展開をフローチャートに起こしていきます。

で、こうすると何が可能になるか?というと、
いわゆるその「3幕構成」という形になってるかどうかの確認が取れるんですが、
まぁ「3幕構成」の説明は今からしますけども、
ただこれはギリシャの時代から続いてる物語の
まぁ言ってしまえば一番美しいとされてる形なんですが、
アメリカ映画のシナリオ作りっていうのが
まぁこの長いことずっと「3幕構成」をベースに考えられているんですね。

まぁその形に落とし込むのが良しかどうかということを依頼したプロデューサーさんに
確認がしないといけないんですが、それを確認して欲しいということになったら、
実際にシナリオを3幕に落とし込んでいきます。

宇多丸
要はアメリカ型のエンターテイメントに、
娯楽映画にしていいですか?という確認ですか?

三宅
そうですね、あるいは一番流通しているということですね。

宇多丸
「分かり易い話にしていいですか?」ってことですよね?

三宅
まぁ構成ですよね。
それでこの「3幕構成」っていうのをザーッと説明するとですね、
上映時間を3つの大きな部品に分けて考えるという考え方なんですね。

1幕・2幕・3幕というような分け方をします。
たとえば上映時間が95分の映画だとした場合は、
1幕目を例えば25分前後、次2幕目があって、3幕目に移る頃に大体75分
で最後95分になると。

宇多丸
大体3等分を目指す感じですか?

三宅
そうですね、その比率は、
1幕・2幕・3幕の比率が1:2:1の時間配分になるのが
「3幕構成」では美しいとされています。

宇多丸
1:2:1。あ、そうか真ん中が一番長い。
じゃあそうか真ん中のパートが大体倍くらいある。
映画の本当に中心になる。

三宅
で、これは細かい話をすると朝までかかっちゃうので(笑)
ざっくり言うとですね、2幕目は長いですね、
3幕目っていうのはですねクライマックスっていう要素が必ず入ってきますので、
1幕目と同じ配分でありながら、1幕目よりちょっと短くなることが多いですね。
テンポが早くなるんですね。

宇多丸
あ、クライマックスはむしろ店舗早く、短くなってた方がいい?

三宅
そうですね、それはアクション映画とかサスペンスじゃなくて、
いわゆる恋愛ものとかヒューマンドラマであったとしても、
やっぱ、それまで培ってきた物語とか登場人物の思いっていうのが結実していくのが
後半部なので自ずと短くなっていくし、多少短くなった方が美しいとされています。

宇多丸
これはでもね、理屈聞けば、「それはそれで当然そうだよな!」って思いつつも
実際にはクライマックスだから引き伸ばしたい!
みたいな発想の作り手及び観客の固定観念というか
「クライマックスだから長いんでしょ」って思っちゃってる人多いかもしれませんね。

三宅
でも実は真ん中が長いんですね。
真ん中が一番難しかったりするんですが、
あとその3幕でいうと、最後にクライマックスがあって
一番もりあがりましたという映画があって、
そこでいきなり終わっちゃうという手もあるんですが、
そのあと5分くらいですね、短いお口直しの時間を作るのが美しいと・・。

宇多丸
エピローグ的なもの?

三宅
そうですね、要するにその架空の旅にお客さんを連れていくようなものなので、
そこから現実の世界に戻ってもらうためにお見送りをする時間とでも言いますか・・。
お見送りの時間が大体5分とか前後ですね。

ただここがあまりに長いと引き際の悪いシナリオになってる場合が多くてですね。
大体その最後のところに脚本の思いが非常にこもってたりするので、
長くなりがちなんですが・・。

例えば「レオン」のですね、レオンが死んじゃった後ですね。
レオンが死んじゃって、マチルダがまた一人になって生きていかなければいけないけれど、
でもレオンとの思い出があるしもう一人じゃないっていうふうに生きていく。
でまぁ花を植えるっていうのがありますが、それが言えれば言いわけですね。あそこは。
それを言うために15分かけるのは、ちょっと長いっていう・・。



宇多丸
なるほどね!やっぱ僕が感じるグダグダやってるってのはそこの印象なわけですね。
リュック・ベッソンが嫌いな理由と・・、メモしておこう!

三宅
ちょっとスイート過ぎて、白けちゃう場合もあるんじゃないかな?
という例えばの話・・。

宇多丸
でもその終わりの方にクライマックスもあるし、作り手の思い。
描きこんで来たキャラクターへの思い入れもあるから、鈍重にどんどんなってくっていうのは
やっぱり洋邦限らず結構あるんですよね?

三宅
あります!ものすごくあります。
だからそこで作者が言いたい事っていうのを
なんとかそこに至る前の物語の中でね、別の言い方は出来ないのか?とか
そういうのも探る必要がおいおい出てくる都いうことですね。

宇多丸
でもこれが一番美しい形であるということを踏まえながら組み直すと。

三宅
そうするとページ数から全体の映画の長さっていうのは割り出せるものなので、
というのは小説と違ってシナリオというのは時間表現のものなので、
小説はよく時間が止まっている展開がありますね、「今こう思った」とかですね、
実際には主人公が椅子に座ってもの思いにふけっているんだけど色んな事を考えていて、
蓄積されて一応物語は展開している、でもそれは時間にすると止まっていると。

で、映画化する時に大抵そこはカットされるんですね、映画に映りにくい部分なので。
というのがあるんですけども、シナリオの場合は1ページにつき何行何文字っていうのが、
日本もアメリカも決まってますので、書き方によって個人差はあるんですけども、
まぁおおむね誤差5ページ前後で完成尺
つまり上映時間っていうのが割り出せるようになってますね。

宇多丸
大体1ページが何分なんですか?

三宅
アメリカの場合は完全に1分になるように作られてますよね。
完全に1分になるようにそのフォーマットを崩して書いたら、
それだけで読んでもらえない。

宇多丸
もう脚本の体をなしてないという事になっちゃう、はーなるほど!

三宅
日本はその辺ちょっと緩くて個人差あるんですけど(笑)
まぁでもこれで90分とか120分っていうのはわかるようになってる。
なので3幕に分けた時に、1幕から2幕へ移行する時、
あるいは2幕から3幕へ移行する時に「3幕構成」の決まりごととしては、
ターニングポイントと言われている新たな展開を呼ぶエピソードというのが
必要だとされているんですね。

まぁこれは「3幕構成」にするつもりで書いてなくても、
不思議なもので脚本家は大体書いてしまうんですよ、そういう展開を。

宇多丸
まぁそうでないと、すなわち話が進まないというのもありますよね。

三宅
そうなんですよね!
ごく自然に大体それくらいの時間になると、
そういうエピソードを書いてしまうんですね。
あとはその位置が適切と言いますか、見てて気持ちのいい場所にあるのかどうか?
それこそ色んな事言い過ぎて
ターニングポイントの入れ所が遅れちゃったんじゃないか?とか
前すぎるんじゃないか?とか。

例えばその第1ターニングポイント、
第2ターニングポイントっていう2種類のポイントが必要なんですが、
あんまり第1のポイントが早すぎると、今度2幕目が以上に長くなったりですね、
次の3幕に移る時のターニングポイントが今度遅すぎるとクライマックスが
やたらせせこましくなったりっていうふうにバランスを
欠いたものになってってしまうっていうのがあるんです。

宇多丸
つまりその、第1ターニングポイントっていうのは
1幕目から2幕目へ映るポイントっていうことですか?

三宅
えーとなんか例があった方が分かりやすいと思うんですけど。
例えば、「ファインディング・ニモ」という映画でいうと、
あの映画は大体95分前後なんですが、ぴったり25分でニモちゃんがさらわれます。



宇多丸
さっきでいう、1:2:1の比率でいうと、
1の比率でニモちゃんがさらわれる。

三宅
ここからお父さんがニモを探して追いかけるっていう話になりますんで、
まさにターニングポイントですね。

宇多丸
要するにその手前の1幕のところはニモとお父さんの日常が描かれる。

三宅
描かれてるということですね。
それと後半に必要な伏線とかが入ってくる。
ちなみにその「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という映画でいうと、
あれは百十何分かあるんですが、大体30分くらいですね。
割合でいうと、1:2:1の1に当たる部分で、
タイムスリップをして昔の納屋に車が突っ込んじゃって
「わー30年前に来ちゃったよ!」っていうあたりが大体30分くらいです。



宇多丸
これ面白いですね。人間の生理として見てて必ず決まった時間に
何かが起こって欲しいんじゃなくて、映画全体の尺に対して、
何かが起こって欲しい時間が決まるっていう。

つまり我々は見てて映画の全体の尺を事前に知ってるわけじゃないですか?
にも関わらず気持ちいいポイントは映画全体の尺で決定される。

三宅
そうなんですよね、いや本当に不思議なんですよこれは。
あの実際にはいわゆるジャンル映画、SFとかホラーとかアクションとか、
コメディとかTSUTAYAにあるようなものでヒットした作品を試しにレンタルして、
「あっ!何か今新しい展開が起きた!」って時に
DVDのカウンターとか見ていただくと、大体25分から30分の間で・・。

宇多丸
それくらいが全体の尺に対しての1:2:1の比率になると・・。

三宅
起きてるはずですね。
これは本当に不思議なことなんですけどね。

宇多丸
なるほど、これはすごいですね。
でまぁ1個1個ポイントがあって、3幕で展開していく。

三宅
そうですね、実際にカウンセリングというか見て欲しいと言われたシナリオに
ターニングポイントが無いなら無いで、またそれはそれで進言するなり、
直し方を考えないといけないんですけど、
あるのに場所が適正じゃないと非常に気持ちが悪いというか勿体ないので、
その辺をまた探っていくという。

で、構成が根本的に今の状態で問題があるかどうか?というのが、
そういう意味でそのステップで探るという事ですね。

宇多丸
ちなみにその「バック・トゥ・ザ・フューチャー」」でいうと、
2幕から3幕へ移るポイントって何なんですか?

三宅
2幕から3幕へ移るポイントっていうのは、
お父さんとお母さんがキスをするところですね。

宇多丸
そっから先がクライマックス?

三宅
そうです。あのキスをすることで大きく展開しますので。

宇多丸
まあまあ、解決ですもんね。
2幕で問題になってた件は解決。
あとは主人公が戻るか戻らないか?の件・・。

三宅
そうですね、に集中してお客さんをこう時計台のしたまで誘う事が出来る。

宇多丸
ちょっと時間押してる中ですみません・・。
「ファインディング・ニモ」の2幕から3幕はどんな?(笑)

三宅
いや、それがあの映画の難しいところでもあるんですよね。
僕もちょっと時間押してる中で「ファインディング・ニモ」のネタを・・。
ちょっと根本的に「ファインディング・ニモ」は問題があるな!と思っていて、

あれはそれこそ昔からあるストーリーで、「96時間」ともあらすじは一緒ですし、
さらわれてお父さんが助けに行くっていう話で、
まぁ「ジャグラー ニューヨーク25時」なんて映画も昔ありましたけれども・・。



宇多丸
また、その話しますか(笑)

三宅
ありましたけども(笑)
「ファインディング・ニモ」で第1ターニングポイントでニモちゃんがさらわれましたと、
で、お客さんはそのお父さんに感情移入しますよね。
お父さんと一緒にその物語を旅していくじゃないですか?
ということは、あの映画で一番盛り上がらなきゃいけないところはどこかというと?
ニモちゃんと再会した瞬間のはずなんですよね、本当は!

ところがですね、あの映画は行ったニモちゃんの先と追ってるお父さんとの
カットバックが途中から始まってしまうので、
そのそれなりにジャイ子みたいなのと一緒に楽しくやってるよ!という状況をみて、
お客さんはまずは殺されなかったことに安堵するんですよね。

ところが今度、もう一回お父さんのところにシーンが戻ると、
お父さんはそれを知らない。

宇多丸
ちょっとその観客がこう・・なんちゅうのかな?
危機感を感じる部分にズレが出ますね。

三宅
最初のうちは
「お父さん!そんな不安がってるけどね、
それなりに楽しくやってるから大丈夫だよ!」っていう
気持ちで観てるわけですが、あんまりカットバックが続いてると、
「お前、まだ知らないのか!!」っていうですね・・(笑)

宇多丸
だんだん観客よりあまりにも映画の語ってることが
後から着いてくるとイライラしてくると。
数十分まえにチャラっといったようなことが・・。

三宅
そうなんですよね、
だからこうお父さんというある種の乗り物に乗って
物語のコースターを進んでいたのに、
観客が座席がだんだんズレてくると言いますか・・。
そういう問題がある・・。

宇多丸
お父さんに感情移入出来なくなってきますよね。
知らない状態が続いていると、観客の知ってることとあまりに差があるから。

三宅
なんか、ひとり相撲みたいになってっちゃう。
ところがね、さすがピクサーなところはですね、
あの映画は最終的にはお父さんの子離れに落とすんですよね。
再会したシーンは意外と盛り上がらなかったけれども、
最後に「いってらっしゃい!」って送り出すところでワァーっと感動するという。
感情にシフトするんですね、構成じゃなくて。
そこが上手くて、そういう方法もあるということです。

宇多丸
これは「96時間」がすごく病的な終わり方をするのと、対照的な(笑)

三宅
ものすごい対照的!!
あの子離れどころか、さらに甘やかされて・・。
なんか怖い上に、甘い!!っていうね、最悪だっていうそういう終わり方だった。


宇多丸
これでもね、今の話はどうしても、聞いてる方も、
「じゃあそっちは?」「じゃあそっちは?」っていうのはね出ちゃうからね。
聞けて良かった!すごい勉強になりました!!

三宅
もうずっとリーアム・ニーソンのお面が見えてたので、気になってたんで・・。

宇多丸
ということで、そんな感じでチェックすると、
じゃあそんな感じですか?他は?

三宅
えー、実はもう一つあるんですけど、
これはですね、構成の問題がクリアだってなった場合はですけれども、
今度「なんか間延びしてる」とかですね、「なんか乗れない」とページをめくってく中で、
それは何だ?っていうと、
大体その物語の推進力が低下している可能性が高いんですね。

例えば、自転車はペダルで前に進みますし、
飛行機はプロペラとかジェットのエンジンでまえに進みますけど、
物語にも推進力っていうのがあってですね、
これが落ちていると。あるいは止まっている。

で、それは何だ?っていうと、
じゃあ推進力はどうやって得たらいいか?というと、
「主人公を追い込む」という方法しかないんですね。

「追い込む」というのは、反復するのではなくて増幅してかないといけないと。
主人公が何かをクリアしなきゃいけなくて物語が始まってるんだとするならば、
最後のゴールに向かって主人公が旅をしているわけですけれども、
まぁ旅というのは便宜上ですが、旅をしてるわけですけど。

そのゴールに簡単に到達出来ちゃならないわけですね。
でしかも、途中で一休みしてる場合じゃない、
ずっと進んでいかないといけない。目的があるんで。

そのハードルをあげていくってことなんですけど。
このハードルが第1ターニングポイントよりも途中で下がってしまったりですね・・。

宇多丸
最初に超えたハードルより低いじゃないか!と、
そうするとアレ?ってなっちゃう。
「敵がさっきより弱いじゃないか!」とか。

三宅
そうですね。
わかりやすく言うと、どうしてもアクション・サスペンスのジャンルになるんですが、
具体的な障害・ハードル・条件というものをまぁ上げていかなければならない。

宇多丸
「スター・ウォーズ」で最初の方でデススター爆発しちゃってるじゃないか!と
その後でスターデストロイヤーと戦っても全然盛り上がらないやん!みたいな。

三宅
そうなっちゃうとまずいと(笑)

宇多丸
「こんな馬鹿げたスター・ウォーズっは聞いたことがない!」と(笑)
推進力を強めてく、例えばタイムリミットみたいなのも推進力なわけですね?



三宅
ですです。
そうなんです、高橋ヒロシさんの「リング」が非常に良く出来ているのは、
7日以内に死んじゃうビデオっていうのがあると、
7日以内に呪いを解かなければいけないというのが、
最初のハードルなわけですが、
それを主人公が「私もう死んじゃっていいや」って諦めちゃうわけですね。
ところがその後に息子が今度はビデオ観たって事になって、
彼女のハードルがガンと上がるんですけど、
ちゃんと最初の障害の通りなんです、7日以内に。



これが違う問題がブチ上がってくると、話が二股三股になって行くんですけど、
同じ目的を更にやんなきゃならなくなるっていうとことろがよく出来ているところ。

宇多丸
なるほど!確かに、確かに!
あーそうかそうか、そうやってそのキャラクターというかお話が、
進んで行く推進力がキープ・・。

三宅
出来ているかどうか?っていうことも確認が必要ですね。

宇多丸
というあたりが、お医者さんの診察方法でございますと。
スクリプト・ドクターの。
一旦、ここでじゃあCM行きましょうか。

(3)へ続く

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